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【第29話】祝福の泉へ(3) 祝福

認識阻害のある岩に突っ込んでみると、奥へと続く通路が続いていた。


洞窟内部がほのかに光を放っており、問題なく歩くことが出来た。

1分ほど進むと、開けた場所に人が立っているのが見えた。


その隣にはオモチとおなじ、真っ白いケットシーが!



「あ、フィルナンド!」



「え、エマなの?」



フィルナンドという名前に反応したのはオモチだった。


声色からして敵対関係ではなさそうなので、エマちゃんというケットシーの横に立つ、

ちょい悪オヤジに会釈をしてから近づく。


「エマも里を出ていたの?」


「もうボクはエマニエルじゃないにゃ、今の名前はハムにゃ」


ハムって。


ちょい悪オヤジを見るとちょっとだけ苦い顔をした。


「ボクも今はオモチにゃ」


ちょい悪オヤジが「おい。」という非難の半目を向けてきた。


「オモチか・・・そうか、いい名前つけてもらえたにゃあ」


「そっちこそ、ハム? いい名前を貰ったみたいでよかったのにゃ」


二匹はにゃあにゃあと肩をたたき合って再会を喜んだ。仲がよさそうでよかった。

見ていてモフモフ度がかなり高い。


「初めまして、ケイタといいます」


「ああ、俺はアキラだ。よろしくな」


黒目黒髪で名前がアキラなので、日本人だろう。


「転移者ですか?」


「そうだ。お前もだろ? 日本のサラリーマンって見た目でわかるぞ」


視線がお腹に来ていた。


「これでも少しづつ(へこ)んできてはいるんですけど」


「こんな世界だもんなあ」


アキラさんは腕を組んでしみじみそう言った。

ケットシー達の会話がもう少し続きそうなので、こちらも話を続ける。


「ここには解除で?」


「ああ、今やったところだ、しかしこんな場所でカチ合うなんてかなりのタイミングだよな」


「ですね、1時間もずれていれば会えないわけですし。

 ・・・・調整されていたりするんでしょうかね」


「やめてくれよ、それは行動を操られているって話だろ? 怖いぞ・・・」


そのまま職業や年齢の話になった。

アキラさんは3つ上の40歳

細マッチョで、剣士の恰好をしている。

土属性で、アースウォールのみ覚えてて、他はアテがないのでそれだけを鍛えているなどと、色々教えてくれた。


俺も隠す必要はないと思って教えてもらった内容と同じものを伝えた。



「アキラのアキラは諦めないのアキラにゃ!」


ふとケットシー2匹の方からそう誇らしそうにいう声が聞こえた。


「人前でいうのはやめてくれ・・・」


アキラさんは片手で頭を抱えてしまった。


「・・・なんですかそれ」


「ん~」


アキラさんは気恥ずかしそうな、苦い顔をする。


「ハムが地竜にしつこく追いかけられていた時、アキラが助けてくれたにゃ

 何回も逃げて、またしつこく現れて・・その時にアキラが言ったのにゃ!

 血まみれになりながらもハムを助けてくれたにゃ~・・・」


ハムちゃんはうっとりしながらオモチにそう説明した。


「ガキの頃から、気合を入れる時に言ってた言葉だ」


「へえ」


「まあ実際に言ったのは数十年ぶりだったけど、

 あの時は勝手に口からでちまったんだよなぁ」


はあとため息を吐きながらアキラさんはそう言った。


「そういうの、なんかいいですね」


「ははっ」


アキラさんは恥ずかしくなったようでそれ以上は言わなかった。


「そういえば、名前ってどうなってるの?」


俺はオモチとハムちゃんに聞いてみた。


「もうここは話してしまってもいいかにゃ」


「いいと思うにゃ。じゃあ説明するのにゃ」


うんうんとうなずきあう二匹。

アキラさんも知らないようで、腕を組んで興味深そうに二匹を見た。


二匹で協力し合って、たどたどしく説明してくれた。


まとめると、「パートナー契約」は「従魔契約」を改造して作られたもので、

名付けという部分はどうしても外せず残ってしまった。


生まれた時に付けてもらった名前はステータス上からは消えてしまうが、

ケットシーの里での名前は「オモチ・フィルナンド」となる。

ついで情報としては、魔法を改造をしたのは転生者で、自分が名前を付けたコになら

いじわるしたり、捨てたり、そう無下にすることはないだろうという目論見があるらしい。



「魔法って、そんなレベルでいじれるんだな」


「考えたこともなかったですね」


「そういえばケイタは魔法使いなんだろ?」


「はい、水だけですけど」


「ちょっとの間パーティ組んでみないか?

 相性悪けりゃパーティ解消すればいいんだしよ」


「あ、いいですね、同じ転移者なら気兼ねなく組めそうです」


「んだな」


二人は握手した。


隣ではケットシーが2匹でまたにゃあにゃあ話をしている。


「ハムが里を出てきたとき、みんな元気だったにゃ?」


「うん、元気、変わったことと言えばアゼリア姉ちゃんが

 子供を連れて出戻ってきてうるさかったくらいかな~」


「うわ、また出戻って来たのか。3回目でしょ」


「アゼリア姉ちゃんは一時の感情で生きているからにゃあ」


「ん? お前ら兄弟なのか?」


アキラさんがケットシー2匹に質問した。


「そうにゃよ。どっちが先かはわからにゃくて、兄とか弟とかは不明だけどにゃあ」


「兄弟の中では一番なかのいい二人だったにゃ」


「二人でいつも遊んでいたよね」


「そうそう、思い出いっぱいあるよね」


こんなにいっぱいと二人して両手を広げる。


俺とアキラさんは二人して目じりがさがる。



「ケットシーって、いちいち仕草かわいいよね。

 もしかしてそれも学校でならったりするの?」


「ならうにゃ」


オモチは、とうぜん!といった顔でそう言った。


「「え!?」」


俺とアキラさんが驚愕する。

なんだか情報をうまく咀嚼できない。


「”マナーと作法”、の授業でならうにゃ」


ハムちゃんがうなずいて、更に付け足す。


「そうにゃ。最初はとっても恥ずかしかったけど・・・もうなれたにゃん」


そういってオモチとハムちゃんは遠い目をした。


「え~、じゃあめっちゃあざとい種族じゃん。ケットシーって」


「・・・うう。そんな言い方しないでほしいにゃ」


「でもケットシーのかわいさを120%生かした仕草だとはおもうよ」


もう・・というような顔でオモチがこちらを見上げた。


「あ、そういえば、語尾も学校で習うらしいぞ。仕草は今初めて聞いたんだけどな」


ふと思い出したようにアキラさんがそう言った。


「マジかい!」


思わず声が大きくなってしまった。

アキラさんは思わず笑う。


「種族特性で語尾がにゃってつくわけじゃないのか」


「違うにゃ、そんな特性あるわけないにゃ」


「語尾を”にゃ”ってつける人って、人間だったらそうとうやべえけど

 ケットシーだと許せるよな」とアキラさん。


「そうですね、むしろ続けてほしい」


「でも誰が最初に始めたの?授業で習うってことは色々考えて、体系化してあるって事でしょ」


「ある転生者の女の子が考えたと習ったにゃ」


「昔の転生者は自重してないよな~。自由過ぎる」


腕を組んでアキラさんが呆れたようにそう言った。



「ていうかハムよ、その女の子って、前聞いたときにも思ったんだけど、

 最後はばあちゃんで死んだんだろ? 女の子って呼ぶ決まりなのか?

 もしかしてさ。おいハムよ。ははは・・・」


そう発言した直後に、アキラさんは顔を恐怖でゆがませた。


「あ・・・う・・・」


余波で彼が殺気を受けたのだと感じる。


敵か!?


いや、彼は余計なことを言ったのだ。正直、言ったなこいつと俺も思った。



「まだ、生きて、・・いやご存命の方だったのかな?」


オモチにそう聞いてみる。


「数百年も前に亡くなっているにゃ」


オモチは俺を見上げながらそう言った。


「・・・オモチ、お前はこの殺気、大丈夫なのか?」


「え?さっきって?」


なるほど。


「アキラさん、この話題一旦終わらせましょうか」


原因は明らかなので、そう彼に提案してみる。


「ああ、そうだな。・・・ふう、今解放されたぞ」


そういうとアキラさんは座り込んだ。


「・・・きっと相当な達人だったんだろう。

 俺たちもその高みに至れたらいいですね。」


「ん。そうだな、そしたら悪口言い放題だもんな。なんてな。はははは」

彼は冗談っぽく、そんなことを言った。


俺は嫌な予感というか、お約束が起こりそうで・・・ちょっと期待をした。

そしてアキラさんはキョロキョロした後、また余計なことを言い始めた。


「さっきのマジでやばかったぞ、なんていうのか、

 山かと思うぐらいのデカいババアの殺気の、かたまり的なもの・・・」


そう小声で言った後に彼は気絶した。

まったく、学習しない男だな。

小声で言っても意味なかっただろうに。



とりあえず俺は彼が起きる前に、彼に対して洗浄を発動しておいた。


ハムちゃんからはお礼を言われた。

二人になった時にしっかり言っておくとの事だ。


ケットシーの二匹は殺気を受けていなかったけど、

俺らのやり取りで何となく起きたことが分かったようだ。


しかし女の子は死んでしまってなお、ケットシー達を見守っているのだろうか。

とてつもない力を伴いながら。


キラキラと光る小さな滝を見ながらそう思った。



◇◆◇◆◇◆


さて、ではそろそろ泉の水を頂こうかな。

しばらく起きそうにないアキラさんを横目に泉のもとになっている小さな滝を見る。


「滝から落ちる水をすくって飲むのにゃ」


すぐ横に来ていたオモチがそういって木のコップを渡してきた。


「ありがと、オモチ気が利くなあ」

コップを受け取りオモチの頭をなでる。


「えへへにゃ」


「・・・では」


俺は滝から落ちてくる水をコップですくう。


見た目は水だ。ゆっくり飲む。


「・・・・」


水自体は冷たくておいしいのだろう。


でも、魔力的ななにかがそこに重なるように一緒に口の中に入って来ているのが分かる。

水はさらっとしているが、魔力的なところでどろっとした感覚を覚える。


コップ一杯分をのみ切ると、目の前にメッセージウィンドウが出現した。


「お」


「出たにゃ?」



オモチを抱っこしようとして、ふと手が止まる。

そこにはこう書かれていた。


----------------------------

固有スキルの制限が解除されました(1/8)


使用可能な属性が1つ解放されました。

----------------------------



(1/8)?

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