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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十章 霊媒師 瀬山 彰司ー99

かける君は僕から少し霊体からだを離し、目と目を合わせた。

そして、


『岡村ぁ……もういいよ、ごめんな、辛かったよな……無理しなくていい、お前は滅さなくていい、俺達は大丈夫だ、ここでしばらく待っていたら【闇の道】がやってくる、だから大丈夫だ、…………本当にごめんな。俺達、お前に甘えすぎたんだ、希少の子ってさ、死者と生者と視分けがつかないんだろ? それなのに滅するの、すごく辛いよな。ああ……俺達はバカだ。生者を襲う辛さとか一番分かってるはずなのに……おんなじ事させようとした……ごめん、本当にごめん……』


僕に抱き着きしゃくりあげ、かける君は何度も何度も謝っている。

えっ、あっ、待って、落ち着いて、この子が泣くとすこぶる焦る。

まるでらんさんが泣いてるみたいで心配になる。


かける君、大丈夫、大丈夫だから泣き止んでぇ……あぅ……ダメだ、泣き止まないよ……だ、大福ぅ!」


僕が呼べば猫又は(虎の子サイズに戻った)、泣き虫(かける)をお得な三尾でふさふさふっさーと撫ぜまくる……と、くすぐったいのか『んへへ』なんてほんのちょっぴり笑ってくれた。


よし、いいぞ、この調子で笑わせてーと思っていたら、みんながササッとやってきて、あっという間に囲まれた。

瀬山の手練れはおさにはめっぽう強気だったにも関わらず……


『悪かったよ、そんなに辛かったんだな、』

『お前……話の途中だったのに、目ぇ閉じて動きもしないで黙り込んで……』

『そうだよな、俺達は仲間だもんな。仲間を滅するのはキツイよな』

『えぇっとー、岡村君だけに辛い役目を押し付けてゴメンナサイです、はい……』

『なに心配するな。ちょうど【闇の道】に乗ってみたいと思ってたんだ』

『我々の事は我々でケリをつける、気にするな』


しどろもどろで動揺していた。

てか誰だ? さっき聞き捨てならないコトを言ってたひとがいたけもども。


「ちょ、みんな落ち着いて! 僕ダイジョブだから! さっき目を閉じて黙っていたのは自分の世界に入っちゃっただけ! そりゃ辛いけど、滅したくないけど、とりあえず今はダイジョブ! そんな事より誰? さっき”【闇の道】に乗ってみたい”なんて言ってたのは! あんなのに乗りたいひとがいる訳ないでしょうよ! たとえ乗りたいって言っても僕が許しませんよー!」


フンガー!


先代ライクに鼻息荒く、僕は声を大にした。

そんな僕に、半べそながらも笑ってくれる顔を視て、僕の気持ちは固まったんだ。


みんなを滅さない、【闇の道】にも渡さない。


だからと言って他に手立てはないけれど、探せばきっと第三の選択肢が見つかるはずだ。

それまでの間、みんなには悪いけどペンダントの中にいてもらう。

中に閉じ込め外部と遮断。

【闇の道】から隠し通してみせるから。



みんなを滅さない。

僕の気持ち、僕の決心、そういうの、ぜーんぶ話した。

予想では、戸惑いはするかもだけど喜んでくれると思ってたんだ。

だけどそうはいかなかった。


『岡村、』


神妙な面持ちの中村さんが、静かに話し始めた。


『我々を滅さない、か……ありがとう。岡村はずっとそう思ってくれるんだな。我々は幸せ者だよ。お前にはもう充分救ってもらったというのに、まだ救おうとしてくれる。……ああ、その気持ちだけで十二分だ。なあ、お前達もそう思うだろう?』


ポニテのいぶし銀がみんなの顔を順に視る。

彼らは何度も何度も頷いていた、流れる涙を拭いもせずに。


『岡村は我々を”人”として扱うだけでなく、”仲間”だと思ってくれる。ありがたいな、図々しいが我々もそう思っているよ。お前は仲間だ。だがな、だからと言って滅さないというのは駄目だ。お前にさせるつもりはもうないが、我々は消えるべき罪人だ』


「なんで!? なんで消えるべきなの? そりゃあさ、みんなは元悪霊かもしれない。でもそれは脅されたからだし、おさを倒したよ。おさがいなくなったという事は、未来で起こるはずの惨事を防いだって事でしょう? みんなはこれからの被害者を(・・・・・・・・・)救ったんだ! それでも駄目なの? みんなは救われたらいけないの?」


心の中の【僕】の分まで僕は必死に食い下がった。


『多少なりとも未来の被害者を救えたとしたら、それは霊媒師冥利に尽きるというもの。これでますます心残りはない、』


「中村さん……! そんな事言わないでよ、

お願いだからうんと言って。しばらくは僕のペンダントにみんなを閉じ込める事になるけど、必ずいい方法を視付けるから、【闇の道】から隠し通すから、だから、」


『岡村っ! ……あぁ、すまない、大声を上げた。ありがとう……本当にありがとう、私はお前に出会えて良かった。私はお前が大好きだ。お前が息子だったら良かったと思うくらいに。だが駄目なものは駄目だ。……お前は知らないから、』


「…………何を?」


言葉を止めた中村さんは、血が出そうなほど唇を噛んでいた。

眉間に皺を寄せ、辛そうな顔をして、浅く息を何度か吸って、それでやっと、押し出すように続く言葉を吐き出したんだ。


『岡村は我々がおさと戦ってる姿しか知らないだろう? だからそんな事が言えるんだ。これまで我々は……何人も何十人も数えきれない生者を襲ってきた。中には霊の姿が視える者もいて「やめてくれ、助けてくれ」と命乞いをされた事もある。だのに我が身かわいさで手を緩めなかった。罪なき者に怪我をさせ、絶望のどん底に突き落としたのだ……あんな所業、許されない。我々は滅されるべき罪人なのだよ。罪は償わなければならん』


ガックリと肩を落とし、苦い顔で僕を視た。


____我々がおさと戦ってる姿しか知らないだろう? 


確かにそうだ、それに僕は被害者達を直接知らない。

もしもそれを知ってたら、同じ事が言えるのだろうか……?

たとえば僕の両親が、たとえば大福が、たとえば弥生さんが被害に遭ったら、同じ事が言えるだろうか……?

すぐに答えは出なかった。

僕はとんだ偽善者なのかもしれない。

だけど……だけど……やっぱり僕はみんなが好きで、仲間だと思う気持ちに変わりはない。








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