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霊媒師募集  作者: たまこ
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第四章 霊媒師OJT42

ひとしきり母娘で泣いたあと、どちらからともなく、お互いの手のひらを宙で合わせた。

ユリちゃんも田所さんも、そのぬくもりを感じる事はできないけど、それでも2人の喜びは計り知れないものがある。

田所さんは目を細め、愛おしくてたまらないといった表情でユリちゃんを見詰めながら、


『ユリ……ユリ……まさかユリにもう一度逢えるなんて……ユリ、こんなに大きくなって、こんなにキレイになって……髪も自分でできるようになったのね、そうよね、あの頃の7才の女の子じゃないんだものね、』


「ママ、私ね、18才になったんだよ」


『18才……そう。だからこんなに背も伸びて……立派になって……そうだユリ、学校は?高校はもう卒業したの?』


「うん、少し前に卒業式が終わった。私ね、ママと同じ高校に行ったんだよ。ママが着てた制服と同じブレザーに赤いリボンつけて……そうだ!写真!待ってて、スマホに写真一杯入ってるから!見せてあげる!」


ユリちゃんはそう言いながら、田所さんの横に並び忙しそうに画面をタップする。

それを覗き込む田所さんは、驚いたり、笑ったり泣いたりと、表情をクルクル変えて楽しそうに眺めている。


『本当だ、ユリ、ママと同じ制服着てる。お友達と撮った写真もたくさんある。ねぇ、ユリ、ユリはお友達たくさんいるの?』


「そんなにたくさんじゃないよ。クラスの子達とはみんな仲良かったけど、親友だーって言えるのは、この子とこの子だけ。あ!でも心配しないでね。2人だけなんて少ないって思うかもだけど、そのかわり何でも言い合えるし、私が間違った事をしたら、ちゃんと怒ってくれる子達だから」


『うん、うん、充分だよ。親友は特別だわ。あぁ……ママ嬉しいなぁ。ママの大事な娘に親友がいるんだもの、それも2人も!できれば会いたかったな、ママちゃんとご挨拶したかったな……でも、ママ幽霊だから、娘がお世話になってますって会いに行ったら、びっくりさせちゃうね』


そう言って少し淋しそうにする田所さんを、ユリちゃんは右に左に何度も見ながら、ぷっと小さく吹き出した。


『な、なぁに?』


「だって、ふふふ。ママも全然幽霊っぽくないんだもん。優しくてのんびりしてて、ちっとも昔と変わらない」


『……ママ、も?』


「うん!ママも、婆ちゃんも、それから爺ちゃんも生きてた頃とちっとも変らない、、ってゆーか爺ちゃんなんか、さっき清水さんと取っ組み合いの喧嘩したんだよ?幽霊になってまで喧嘩する事ないのに。ねっ!爺ちゃん!」


クルリと振り返った弾けるような笑顔のユリちゃんに、お父さんは『おぅあぁ?』と意味不明な声を漏らし、ササっと横に動いた。

え、ちょ、お父さん、なんでお母さんの後ろに隠れるんですか?

てか、お母さんが小柄すぎてちっとも隠れていませんよ?


「爺ちゃん……?なにやってんの?まさかそれ隠れてるつもり?てか、そもそもなんで隠れんの?」


ユリちゃんが呆れた声で、僕と同じ疑問を口にした。


『なっ!馬鹿!ユリ、なんで爺ちゃんが隠れなくちゃなんねぇんだ!』


うわぁ、言ってる事とやってる事の乖離がスゴイ。

隠れ家にされているお母さんも(ぜんぜん隠れちゃいないけど)ヤレヤレといった微妙な笑顔で、肩越しに声を掛けた。


『ほら……お爺さん、こんな所に隠れてないで、あんなに貴子に逢いたがってたじゃありませんか』


『いや、そうなんだけどよ、なんつーか……心の準備がよ、』


未練がましくお母さんのエプロンを握りしめ、腰をかがめて隠れ続けるお父さんに、もはや欠片の威厳も残ってない。

どうしたもんか……なんて思っていたその時、


ブン、と低い起動音がした。

その直後、


「ったく!だらしねぇぞジジィ!コラ!」


女性の前だというのに、すこぶる下品でドスの効いた声が響いた。

続いて、お母さんの後ろで縮こまっていたお父さんが、弧を描くように吹っ飛び、田所さんの足元に転がった、が、しかし、70才とは思えない背筋力とゴツ太い首の力で跳ね起きたお父さんは、懸命に自身の尻をさすりながら怒声を上げた。


『イッテェだろうがぁ!!なにすんだクソ誠!!』


さっきのブンといった起動音。

右脚だけにソウルアーマーを装備した社長が、お父さんの尻を蹴り上げたのだ。


「ジジィがガラにもなくビビッてるからよ、俺が手伝ってやったんだ!感謝されても文句言われる筋合いはねぇ!」


『だーーーー!!俺はビビッてなんかいねぇ!!ただ、ちょっと心の、』


「ハイハイ!心の準備OK!!ジジィが逢いたくてたまらねぇって言ってた大事な娘さんなんだろーが!!それともナニか?本当はたいして大事でもねぇのか?ああ?」


『なんだと!?冗談でも言っていい事と悪い事があんだろ!俺がどんなに貴子が大事で貴子を愛してるか、テメェなんざにわかる訳ねぇわっ!!バーカ!バーカ!』


「けっ!ソレ、俺にじゃなくて貴子さんに言えや、ボケっ!!」


社長の言葉使いは乱暴だが、そこまで言うとニヤリと笑いながらスッと後ろに下がった。

190cm越えの巨体の裏から現れたのは、口元に手をやり涙を流す、大事な大事な一人娘、貴子さんの姿だった。

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