表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊媒師募集  作者: たまこ
1162/1194

第二十八章 霊媒師 三年後ー50

……

…………

………………


ひみちゃんの最後の言葉を聞き終えて、僕は、……僕は、…………魂が抜けたみたいになったんだ。

変えられない過去の世界で彼の背中を視送って、その後、ノロノロと霊視解除の印を結んで、閉じた瞼を再び開ければ住み慣れたワンルーム。

僕はそこのベッドの上で仰向けになっていた。


『……うなぁ、』


視界に広がる天井の、それに割り込み覗き込むのは大福だ。

猫又は心配そうに僕を視て、頬をザリザリ優しく舐めてくれたんだ。


「…………ひめ、ありがとね。……あのね、僕、聞いてきたよ。ひみちゃんの最後の言葉」


僕は寝たまま手を伸ばし、小さな頭を包むように撫でつけた。

湾曲させた手の中で、姫は黙って僕の話を聞いている。


「……ひみちゃん、僕にいっぱい言葉を残してくれてたよ。それにいっぱい笑ってた。泣き虫のクセして頑張ってた。きっと最後だから、笑顔でサヨナラしたかったのかもしれないね、」


ああだけど、最後の最後で姫の猫語に号泣してたな。

でも……うん、あれはノーカウントで良いだろう。

嬉し泣きだし、……本当に嬉しそうだったし。



それから僕は、何も言わないお姫に向かって一方的に話をしてた。

ひみちゃんがあんな事を言っていた、こんな事を言っていたと、しつこいくらいに延々と。

本当は分かってた、こんな話は必要ない。

だって、ひみちゃんが話してた時、お姫は一緒にいたんだもん。

最初から最後まで、僕が聞いた話のすべてを知っている。

だから、……話すまでもないんだよ。


それでも止められなかった。

黙ってしまえば僕はどうにかなりそうで、それをやめれば息が出来なくなりそうで、……すごく、怖かったんだ。


姫はなんにも答えない。

代わり、寝っ転がった僕の胸に乗っかって香箱座りをしてるんだ。

知ってる話を一方的にされてるのにさ、辛抱強く聞いてるの。



「それでね、ひみちゃんは僕に言ったんだ。”やっぱり無理しなくていいよ。キミはキミの幸せを最優先で考えな。生きたいように生きるんだ” って。良いのかなぁ。僕は基本ナマケモノだし、生きたいように生きていいなら、なんにもしないで姫と一緒にダラダラしたいよ。それに……”希少の子” なんて言うけどさ、別に僕はなりたくてなったんじゃないもん。……そうだよ、なにが ”希少の子” だ、なにが ”希少の霊力ちから” だ。そんなモノがあったって、友達ヒトリ救えなかった、…………救えなかったんだ」


…………僕は何を言ってるんだ?


こんな事、グチグチ言ってみたってさ、お姫が困るだけじゃない。

なのにどうして止められないんだ。


姫はそれでも黙ってた。

僕のネガティブを否定もせずに肯定もせずに。

ただただジッと胸に座って僕を視て、……ああ、違うな、それだけじゃないや。

無言の中で、猫の四尾が僕を優しく撫ぜている。


大福……ありがとね。

フワフワ尻尾が僕のおなかを撫ぜている。

右に左に行ったり来たり、まるで天使の羽ホウキだ。

お姫はなんにも言わないけれど、僕の事を心配してる、慰めようとしてくれている、気持ちがすごくありがたい。


だからしっかりしなくっちゃ、元気を出して今すぐ起きてゴハンも食べて、大福に ”もう大丈夫” って言わなくちゃ……と、頭の中では分かっているのに身体がどうにも動いてくれない。


情けない……僕は弱い人間だ。

駄目だな、こんなじゃ駄目だ、頑張らなくちゃ。

ひみちゃんだって、こういうのは望んでないよ。

なんのためにメッセージを残してくれたか、それをよくよく考えるんだ。

ひみちゃんに比べたら僕なんて…………


…………ああ、でも。

大福ごめん、ひみちゃんもごめん、

僕、思い出しちゃったよ。

メッセージでひみちゃんは、こんな事を言っていたんだ。


____3日間だけ悲しんで、

____そのあとは元気になって、


と。


…………ねぇ、大福。

ひとつ、お願いをしても良いかな。

ヘタレな僕に3日間だけ時間をちょうだい。

4日を過ぎたら元気になるから、約束するから。


ひみちゃんは仕事柄……で、良いのかな?

彼は ”希少の子” のサポートとして、今までのほとんどを僕の中で過ごしてきた。

途中のたったの4年間だけ僕と一緒にいたけどさ、その前もその後も、ずっとずっと独りでいたんだ。

それがようやく外に出て、念願叶って僕やみんなと会えたというのに、あっという間に消えてしまった。

それがすごく悲しくて、淋しくて、悔しくて、……僕の中に、どうしようもないくらい悔いが残ってしまってるんだ。

もっと僕に出来る事があったんじゃないのかってさ。


ごめんね。

今さらなのは重々に分かってる。

でも……だからせめて3日間だけ、ひみちゃんの為だけに時間を使えたら。

もしかしたら、どこかで彼は喜んでくれるかもしれない。

それと同時。

彼を想って思いきり悲しむ事が出来たなら……たぶん僕が救われる。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ