霊媒師おまけ……バッドアップル-8
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虹で過ごした1日は、あっという間に終わっちまった。
大いに盛り上がったランナーと雷神号の駆けっこ対決。
あの後も、”ごっこシリーズ” に木登りにかくれんぼ、湖で泳いだりと、ヒトもケモノも関係なしで全力で遊び倒したんだ。
アタシもそうだがアイツらも、あんな遊びは久々だった。
大人になると、ああいう遊びはしなくなる。
虹だからこそ、大人でも泥んこになって遊べたんだ。
帰りはすっかり夜も更けて。
満天の星空の元、みんなとバイバイしたんだけどよ。
ケモノ達の中でも、まだまだコドモの小せぇ仔達は半べそになっちまったんだ。
『へ、へにゃ……へにゃ……も、もうかえっちゃうの? ずっと虹にいたらいいのに』
特におはぎは大泣きで、涙に濡れたほっぺたはグズグズのカピカピになっていた。
そこに三毛の大人猫、サンがドスドスやってきて、
『おはぎ、お姉さん達を困らせたらダメよ。大丈夫、また遊びに来てくれるわ。ほら、だから泣かないの』
そう言って、優しくほっぺをザリザリ舐めて、前足でぎゅうっと引き寄せ抱きしめたんだ。
その時、なんだかんだと話していたら……なんと!
サンとおはぎとシマシマ三つ子、それから、パンダ柄のシャチ、白黒双子のしらたまくろたま、この8匹は揃いも揃ってエイミーんちの猫だというコトが発覚!
岡村家の猫達は虹で仲良く暮らしながら、いつか家族が迎えに来るのを楽しみに待ってるんだって。
うっはー!
黄泉も虹も現世も含めて世間は狭いわ!
それを聞いて、アタシはつい先日、現世でエイミーに会ったコトを話してやった。
その途端、猫達は目の色を変えた。
モフモフ毛玉に取り囲まれて、
『へにゃー! ひでみは元気なの!? おはぎのコトなんか言ってた!?』
『はにゃ! 泣き虫ひでみはベソかいてないかにょ!?』←茶々丸
『ひにゃ! お寝坊ひでみは朝起きれるのかにゃ!?』←キジ丸
『ふにゃ! 今からおこしにいくにゃ!』←サバ丸
『英海は私の子供みたいなものよ』←サン
『相変わらずほそっちいのかにゃ?』←シャチ
『『ひでみはいつも遊んでくれたの、ダイスキ』』←しらたま&くろたま
8匹が寄ってたかってサンまで離してくれなくて……ははっ!
まったくホントに参ったよ。
そんなんしてたら時刻はド深夜。
ソコでようやく解散となった。
とにかくスッゲェバタバタしちゃって、それで……そう、雷神号と話せなかった。
本当は駆けっこのすぐ後に、ヤツを隊にスカウトしてぇと思ってた。
でもよ、すぐには言えなかったんだ。
もちろん、今だって喉から手が出る程ほしい犬材だ。
是非にとも隊に入ってほしい。
なのに言えなかったのには理由がある。
雷神号を視てるとよ、ヤツと主の絆が深くて、……いや、深すぎて、アタシが入る余地がねぇと感じたんだ。
黄泉の国の特殊部隊。
もしもヤツが入隊すれば、雷神号はアタシの部下になる。
アタシがヤツの新しいボスになるんだ。
果たして……それを雷神号は受け入れるだろうか?
それにリーから聞いたんだ。
雷神号の主はさ、少し前に命が終わり、1度虹に来てるって。
その時、雷神号はてっきり自分を迎えに来たと思ったそうだ。
だがしかし主は、
____私はもう1度生まれ変わろうと思う、
____生まれ変わって雷神号、
____おまえのような優秀な警察犬を育てたいんだ、
____だから虹で待っていてくれ、
____生まれ変わっても決しておまえを忘れない、
____必ずおまえを迎えにくるから、
そう、雷神号に言い聞かせた。
それに対して雷神号は文句の1つも言うでなく。
主は決して嘘をつかない。
彼が言うなら遅かれ早かれ必ず迎えに来てくれる。
主に ”待て” と言われたら信じて待つのが警察犬だ。
だから私はいつまでだって待つつもりだよ。
ヤツがリーにこう言った時、その瞳はどこまでも澄んでいて一片の曇りも無かったそうだ。
雷神号にとって。
生きてる時もその後も、主は主ただ1人。
そこに、アタシの入る隙間は……ねぇんだよなぁ。
◆
虹で過ごした楽しい1日。
ケモノ達はビックリするほど可愛くて、”遊ぼ遊ぼ” としつこくて、帰り際は ”もっと一緒に遊びたい” とベソかくほどの純粋さ。
たったの1日だったけど、あの1日は野郎共に少なからず変化をもたらせたんだ。
……
…………
休暇2日目。
アタシは早くに起き出して、庭でコーヒーを飲んでいた。
前の日の晩、家っつーか寮っつーか、虹からホームに帰って来た時、この休暇中の一切の自主トレを禁止した。
『いーかー、おまえらこの休暇中に自主トレしたらペナルティなー。休む時は全力で休む。これから先、現場に出たら休みたくても休めなくなる。メリハリつけなきゃ長続きしねぇからよ。休むのも仕事のうちだ。それとなにより、おまえらが自主トレしてるとアタシがゆっくり休めねんだわ』
コレを聞いて野郎共はザワザワしたけど、”ペナルティー” の脅し文句が効いたのか、今朝の自主トレ勢は0人だ。
ヨシヨシ、念の為しばらく庭でボケッとしてよ、アイツらが自主トレしねぇか視張ってよう。
ま、来ねぇとは思うんだけど、つか来んな。
しっかし……雷神号は今頃なにしてんのかなぁ。
雷神号、隊に来てくんねぇかなぁ。
でもなぁ……やっぱ無理かなぁ。
コーヒーを飲み干して芝生の上に寝転べば、空にはイルカがいっぱい飛んでた。
プカプカのんびり、ありゃあ ”カモシー星” のイルカ族だ。
アイツらは水陸両用、空でも海でも自由に泳ぐ。
地球のイルカと違ってさ、霊体の色は薄緑。
ツヤツヤキレイなエメラルドだ。
あぁ……平和だなぁ。
黄泉も虹も悪いヤツはいねぇから、どこに行っても安心安全。
本当に、……良い所だよ。
現世じゃ考えられねぇよな。
どこの星でも現世であればおんなじだ。
生きてるヤツでも死んだヤツでも、悪いヤツは必ずいてよ。
真面目にやってる善人達を平気で痛めつけるんだ。
そこには情けも容赦もなくて、暴力と搾取、時には命や魂までも奪っちまう。
特殊部隊はそういうヤツらを滅しに出向く。
誰に感謝されなくたって、地道にコツコツ狩るんだよ。
去年までは一般兵のアタシがさ、今は隊長、スッゲェ仲間に恵まれた。
野郎共は霊力もスキルもスバ抜けてるから、アイツらだけでも十分イケる。
自惚れじゃねぇ、現場に出ればバッドアップルが必ずエースになる、…………なんだけどよ。
どうしても雷神号が気になるんだ。
誰に何を言われたでなく、地道にコツコツ訓練積んで、有事の時は自分が仲間を守ると決めたあの姿勢。
ホントに……真面目だよな。
なんつーか、ウチの野郎共に似てるんだよ。
だから気になっちゃうのかな、…………こんな気持ち、大和に恋したあの日以来だ。




