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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十六章 霊媒師 誠と真-1

……

…………

………………

……………………ん……う……ぅぁあ…………パチッ!



もう朝か……はえぇなぁ、……ふわぁぁぁあああ…………ああぁぁ……あーあ、よく寝た。



早朝5時。


真冬の朝は夜中みてぇに真っ暗だ。

これから俺はいつものルーチン、親父と筋トレ。

腹筋背筋、ベンチプレスに走り込み。

仕上げは親父と試合組手でフィニッシュだ。

こんなコトを長年続けりゃ、体内時計も筋トレ仕様。

アラームなんて必要ねぇ、毎日必ず同じ時間に目が覚める、……って、この寝起きの良さが、結婚してから役に立つとは思わなかった。

良かったよ、アラーム無しで起きれてよ。

でないとユリを起こしちまう。


とは言っても……


ギリリ……ギリギリギリ……すやぁ……ギリリリ……すやすやぁ……


……んぷっ!


歯軋りしながら爆睡で、ちょっとやそっとじゃ起きそうにもねぇんだけどよ。


俺はそっと身体を起こし、ベッドを出る前、ユリの顔をのぞき込む。

外は暗いが部屋には青い常夜灯、……これは、部屋が暗いと眠れねぇ、ユリの為につけてるものだ。

薄明かりの我が妻は、


…………(ジーーーー)


クゥッ!

スッゲェ可愛い……!

エイミーじゃねぇけどよ、世界で一番可愛いわ!


ダァッシャッ!!

気合い入ったぁッ!!

今日も鍛えて鍛えて鍛えまくってやるぜ!!


そうだ。

よく寝てよく食べて、よく鍛えるんだ。

俺はユリより16も年が上で、順番的には俺が先に死ぬんだろう。

でもな、その順番を守る訳にはいかねぇんだ。

ユリと約束したからよ。


____ユリより先に絶対死なない、

____必ずお前より後に死ぬ、

____俺の命はユリのものだ、


ユリは今まで2回も独りになったんだ。

淋しかっただろう、怖かっただろう。

だから、もう2度と独りにさせねぇ。

これから先、2人で仲良く何十年と長生きしてよ、俺がユリを看取るんだ。

その為に俺は鍛える。

今日も明日も明後日も、10年先もその先も、ユリと一緒に黄泉の国に逝くまでだ。



それと、…………それともうひとつ。

いつかは分からねぇが、先の未来、ユリの父親が刑期を終えて出所する。

その時、父親ヤツは娘を頼って会いにくるかもしれねぇんだ。

今、俺と結婚して一緒に住んでる事は知らねぇだろうが、おそらく金もねぇ、生活もままならねぇ、そういうヤツは娘の居所を執念で探し出すだろう。

聞いた話じゃ父親ヤツは下衆で、会いに来るのも謝罪じゃなくて金の無心に決まってる、……いや、無心だけで済めば良いが、きっとそれじゃあ済まねぇよ。


ユリは父親ヤツを嫌ってる、もう二度と会いたくないとも言っている。

ユリを守れるのは俺しかいねぇんだ。

だから鍛える、徹底的に鍛える。

父親ヤツにも誰にも負けねぇように、ユリを守り切る為に。




1月中旬、第二土曜日。


時刻は11時を回ったところで俺は今、ユリと親父と都内のウェディングサロンに来ている。

俺とユリは去年の6月に入籍済みだが、結婚式はまだしてねぇ。

なんてったって、付き合うと決めたその日にプロポーズをしたもんだから、準備の時間がなくってよ。

ユリは最初、


____マコちゃんのお嫁さんになれただけで嬉しいの、

____結婚式は……ちょっとはしたいけど、でも、そんなの贅沢です、

____式はしなくて良いから、どこか小さな写真屋さんで、

____その……ドレス着て……写真だけ撮りたいです、

____い、いいの! それで充分幸せだもん!

____それにほら、夏は繁忙期だって言ってたでしょう?

____結婚式の準備、してる暇はないですよ、



こう言って、結婚式はしなくていいとモジモジしてた。


俺はすぐに分かったよ。

本当は結婚式をスッゲェしたいんだって。

それなのに、何を遠慮してるんだ? 

ユリは俺の大事な嫁で、ユリの望みは何でも叶えるつもりでいるのに。

大体よ、結婚式が贅沢な訳ねぇだろ。

野郎はともかく女はよ、そういうのって夢なんじゃねぇのか?

ドレスとか指輪とか、あとなんだ……ベール? 

高いレースのカーテンみてぇな綺麗な布を頭にかぶって、そうそう、頭といやあ、ベールと一緒に王冠みてぇなキラキラしたのも着けるよな。

あとよ、首とか耳とか宝石つけて、化粧もしてよ、手袋してよ…………とにかくだ、結婚式は女にとって特別大事なものだろう?

本当はしたいのに、憧れてるのに、なんだって、しなくていいとか言うんだよ。

それをユリに聞いてみると、


____だ、だって、いっぱいお金かかっちゃうし、

____だったらそのお金で、

____マコちゃんの新しい筋トレ道具を買った方が良いかなって、

____それに……わ、私の家族は今は黄泉の国だから、

____そ、それでも呼ぶけど、呼びたいけど、

____でも、他の人には視えないから、

____マコちゃんも、お義父さんも、

____まわりの人に……色々言われちゃうかなぁって、


言いにくそうな困った顔で、ぎこちなく笑ったんだ。

ああ……そうか、そう言う事か……ユリの家族は死者だから、霊力ちからがなければ姿が視えねぇ。

俺側の親戚筋とか友人達には、新婦側の親族席はガラガラに視えるんだ。

そんな中、俺とユリが家族と話せば、空いてる席に一方的に喋ってるとしか視えねぇだろうし、その姿は奇妙に映るに違いねぇ。

かと言って、おかしな目で見られないよう、人前では視えないフリをするなんざ絶対嫌だ。

つーかよ、ユリの綺麗な晴れ姿、一番に視せたいのは藤田の家族だ。

爺さんも婆さんも貴子さんも、ユリを視たら泣いて喜ぶに決まってる。

ユリの気持ち、家族の気持ち、特殊な状況、……なにか良い方法はないものか。


悩んだ俺は、それを親父に相談したんだ。

そしたらよ、伊達に年は食ってねぇ。

親父はこう言ったんだ。


____だったら、家族だけで結婚式をすれば良いよ、

____なに、親戚達にはあとでゆっくり挨拶に行ったらいいさ、

____一番大事なのはユリちゃんの気持ちと、

____藤田家のみなさんにユリちゃんのドレス姿を視せてあげる事だよ、

____誠とユリちゃん、両家の家族、みんなが笑ってお祝い出来る、

____そういう結婚式をすれば良い、

____形にこだわる事はない、好きにやりなさい、



おぉ!

ナイスアイデア!

親父、良い事言うじゃねぇか!

俺はさっそく親父の案をユリに話して2人で散々考えて、それで決めたんだ。


結婚式はする。

呼ぶのは両家の家族だけ。

死者も生者も気を遣わない、みんなでずっと笑っていられる、そんな式にしよう。

そう決めた、あの時のユリの顔……スッゲェ嬉しそうだった。

そんなユリを見た俺もスッゲェ嬉しくなったんだ。


でよ、さらに色々話合って、どうせなら、新婚旅行も兼ねて海外行こうぜ!

そう言ったらユリがよ、”私、南の島が良い! マコちゃんの水着姿が見たい!” って、……なぬ……? そーゆーの、普通は野郎が言わねぇか?

ははっ! まぁ良いけどよ。


そんなこんなで行き先決めたリゾート婚、チャペルも決めたし、今日はユリのドレスを決める日。

本当は2人で見に行く予定が、親父がどーーーーーーしてもってついてきちまった。

娘のドレスを一緒に見たい! って……デカイナリして駄々こねたんだ。

それで、ユリは嫌がるコトなく喜んじまって今に至る訳だ。



……

…………



「ユリちゃん! こっち、こっちに来てごらん! ほら、このドレスも綺麗だよ! 純白でレースがとっても細かい造りだ。華やかだけど派手じゃない、上品で可愛らしいデザインだから、ユリちゃんにぴったりだと思うんだ! ああ、それにしても、こんなにたくさんドレスがあると迷っちゃうねぇ。ウチの娘は何を着ても似合うから、余計に決められないんだよ。でもだいじょうぶ、時間はたっぷりあるからね。色んなドレスを試着して、ユリちゃんが一番気に入った物を選びなさい。____あ、すみません! このドレスも試着して良いですか?」


サッと手を上げ満面の笑み、親父はユリと寄り添いながらドレスを手にしてスタッフさんを呼んでいる。

ユリはニコニコ、でもちょこっと困った顔をして、


「お義父さん、どうしよう……どれも素敵で決められないよ」


そんな弱音を幸せそうにはいていた。


っだよ、親父もユリもテンションたけぇな。

嬉しそうにしちゃってよ、試着もそれで何着目だ?

まったく、困ったもんだ。

ああ困った、確かに決められねぇや。

ユリは美人で可愛いからよ、何を着ても似合うんだ。


こんな良い子が俺の嫁、……ああ、幸せだな。

俺、今すっげぇ幸せだわ。






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