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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
石油だ!蛮族だ!メリケンだ!
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125 繁栄の影①

「フニャアアアアアア」


 私はバルコニーから宙を舞う。城壁を超えた辺りで、スケボーは空の彼方へと消えていった。さようなら名も無きスケボー。君は二度と作らない。って落ちてる落ちてる!


「ニャ、ニャア(飛翔)……フニャアアア」


 私は咄嗟に【飛翔】を使おうとしたが、魔法が発動しない。その間にも地面は近づく。しかし今の私は猫。キュピーンっと来て、落下先の木を蹴って落ちるスピードを調整する。しかし最後の枝が折れて背中から落ちた。

 背中から落ちる猫は駄猫である……腰が痛い。


「ニャア(取りあえず無傷…奇跡だね)」


 素晴らしき猫の体。何時もより遥かに軽し、体力もある。直ぐに復活して城門に走る。まずは城門を閉鎖しないと追手が直ぐに出て来るだろう。

 近くの城門に行くと、騎士が2人門番をしていた。しかし彼等が私を警戒する事は無い。私は猫なのだ。


「お、子猫だ」


「平和だな」


 城門の横で丸くなると騎士達は直ぐに前を向いた。警戒されていない。私は運が良い事に、城門の横に付けられたパネル。そこの下に置かれた木箱を登る。どうやら騎士達の荷物らしい。何が入ってるは分からないが、背伸びすればパネルに届く。

 私は周囲を見回して見られていない事を確認すると、肉球から爪を出して番号のスイッチを連打する。

 ポチポチポチ。

 緊急閉鎖のコードは46桁だ。基本的に外から閉鎖する事が出来ないが、緊急閉鎖だけは非常時用に残ってる。しかも引き渡してから番号を変えていないようだ。46桁のパスワードは試験用のままで、本来はもっと短くする予定だった筈だ。手抜きである。


「おい城門が空くぞ」


「馬鹿な、まだ開門の時間じゃない。どうしたんだ~! 」


 どうやら追手が城門を開けようとしたのだろう。しかし丁度、城門の閉鎖が認証され城門は直ぐに閉まる。


「馬鹿者! 何故城門を閉鎖した。直ぐに開けろ。姫様が脱走した」


「我々は何も……黒猫がパネルを操作してます! 」


「その御方が姫様だ。直ぐに御止めするのだ」


 あばよ~。私は猫の俊敏さを使って、捕まえようとする手を避けて王都に走り出す。


「姫様、勝手に抜け出されては困ります」


 自由だ~って走ってたら音もなく城壁から飛び降りて来る黒ずくめと騎士。多分騎士は私の近衛隊だ。同じ動きをしていたので暗部と思われる黒ずくめと同業だったのだろう。と言うか暗部を引き抜いたのか。


「フシャー(誰も私は止められない)」


「誰か理解出来るか? 」


「すみません。俺獣人ですが動物と話せる訳じゃ無いんで……ただ、大人しくして頂ける雰囲気ではありません」


 誰が戻るか。私は私の考えで動いてる。危険は無いだろう。私は黒猫。つまり王女じゃないから大丈夫な筈だ。それに私の行動を妨害し過ぎなんだよ。

 まあ、それだけ『私』に価値が出来たとも言えるが、束縛は嫌いだ。私は縛る側で、自由なのだ。

 追手は油断無く周囲を囲む。どうやら私相手でも容赦はしないようだ。網とか拘束用の魔道具を取り出している。ここで捕まったら面倒だな。


「ナ~ゴ」


「ウニャア! 」


「うああああ」


 じりじりと後退しては背後の追ってを意識して、別方向に下がるを繰り返してると、猫が降ってきた。猫も空から降ってくる時代なのだ。

 巨猫とか体がゴムみたいに伸びる猫達が追手を拘束する。巨猫はのしかかって相手の顔を舐めている。


「な~ご(主の命令です。今のうちに行ってくだせえ)」


 私は子猫になったので彼等の声は理解出来た。と言うか渋い声だった。


「ニャ(じゃあ追手も適当にあしらっといて怪我だけは駄目だよ)」


「な~(りょうか~い)」 


 私は全力で走る。暗部は諜報・暗殺等に特化した組織だ。戦闘能力も高いが騎士程では無い。騎士の遊び相手(訓練相手)を務めるペット相手では勝てないだろう。並の騎士では私のペット達の末端すら苦戦するのだ。逃げて逃げて逃げまくった。

 30分程逃げると王都の商業通りにたどり着いた。朝早くからやってる屋台から良い匂いがする……宝物庫から物は出せるな。良し。


「ニャー(串焼き一つ! )」


 丁度お腹も減ったから屋台で買い食いなる物を嗜もう。


「こりゃ珍しい。猫のお客は初めてだぜ。ほらこれで良いかい? 」


 銅貨を一枚銜えて屋台に飛び乗るとおじさんが串焼きを一つくれた。良い人だ。

 私は銅貨をおじさんに渡す。宝物庫は使えるけど、本当に小物しか取り出せないのが不便だ。基本的に自分が持てる物しか直ぐに出せない。大物は門を開けなければならないが、門は目立つのだ。

 串焼きはまあまあな味だった。なんかこう……ジャンクな味?偶に食べたくなりそう。初めての買い食い……私も悪くなったものだ。

 串焼きを両手で挟んで器用に食べる。5分程で食べ終わり、手が肉汁まみれになったのでネコらしくペロペロと舐めてたら辺りが騒がしくなってきた。

 屋台のおじさんも「なんだ朝っぱらから」と驚いてるようだ。因みに喧嘩では無さそう。

 キョロキョロと周りを見ると、悪魔崇拝者の様な格好をした人たちが走り回ってた。何それ?

 彼等は全身が黒いローブで顔全体を隠す黒頭巾を被ってる。しかも頭のとんがってる奴。怪しい人達だ。


「お~いどうしたんだ? 」


「ああおっちゃんか。大変だ! 姫様が脱走したそうだ。何でもスラムに興味を持ち出したらしい。結社メンバーは全員招集だぜ」


「それはいかん。俺も行こう」


 結社とは何ぞ? と屋台のおじさんを見ると悪魔崇拝者の様な格好になっていた。伝染するんだ…ってオカシイでしょう。


「スマンが店は一時閉店だ……………なあ」


 屋台のおじさんが何かに気が付いたように私を見る。


「あん? 急いでるんだぞ」


「いや…よく考えたら何で猫が金持ってるんだ? それに目が……」


 やばい見つかった。逃げてる最中に、普通に食事してる私は馬鹿だろう。

 私はダッシュで逃げだす。


「見つけたぞ! 直ぐに御止めするんだ! 」


「「「「何だって! 」」」


 増えすぎだって! これじゃ城内と変わらない。兎に角逃げる。

 道を曲がったり家の隙間を通ったり、物陰に隠れたりする。時折先回りされるので、移動ルートを変えたりなどして1時間程逃げた。


「くそ、見失った。姫様なら直ぐに捕まると思ってたのに」


「不味いぞここはスラムに近い。直ぐに御止めしないと取り返しがつかない」


「俺達でもあそこには入れない。危な過ぎだ」


 どう見ても堅気の人じゃない。悪魔崇拝者の様な人達でもスラムは危ないらしい。更にここはスラムに近いようだ。

 あの人達が何で私を探してるのかは分からない。私を知ってるようだったし、私の知り合いの声も混じってるので容疑者は何人かリストアップする程度だ。後でアリシアさんに聞いてみよう。

 兎に角、この場を離れなければ。見失った場所なのでどんどん人が集まってきた。暇なのだろうか……単に朝早いだけでまだ仕事に行ってないだけなのだろう。

 私は木箱の間や、塀の上を通りながらスラムを目指す。


「ニャフ(処でスラムって何処にあるんだろう? )」


 私はスラムに入った事が無い。王都の地図は軍事機密で、詳細な奴は見た事が無いし、見たのは私の行動出来るエリアだけだ。そして目線が何時もと違うので今居る場所も分からない。ここ何処だ~!

 そう言えば猫と会話出来るんだっけ。試してみるか。


「ニャ~(スラムって何処にあるの? )」


「ニャ~(フヘヘ良い女じゃねえか。俺と食い物でも食べないか? )」


 駄目だ。猫が意外と下種い。行き成り口説かれたかと思うとお尻の方に回り込んできた。私は慌てて逃げる。猫怖い。

 どの猫も口説いてくるだけだし、酷いと押さえつけて来る。猫の社会にはモラルと言う物が存在しない事を知った。

 ちょっと王都の猫は話にならない。野良犬は何を言ってるか分からないし、他の動物も同様だ。取りあえず歩こう。

 再び1時間程歩いた。同じ場所に戻って来たり、何故かお城の前に出て見つかりそうになったり……この王都はおかしい。私は方向感覚にも優れていると思ってる。つまり道に迷う等あり得ない筈だ。


「ニャフ(幻影?魔法の気配は無いし一定レベルの幻影とかは無条件で看破出来る筈。つまり王都が悪い)」


 何時もはアリシアさんが道案内してくれてたから気にならなかった事がどんどん気になる。ここはどうなってるのだ? そして今私は何処に居るのだろう。

 もはや目的はスラムの視察からスラム捜索に変わった。

 そして私はたどり着いた。

 辺りに漂う悪臭。道はゴミだらけで、ボロボロの格好の住民がふらふらと歩いてたり、目の前にお椀等を置いて物乞いをしている。

 そこは私の想像を超える場所だった。

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