07…喧嘩好きな男子
目の前に映るのは殴り合う男二人。力強い怒声と共に出る拳に男は避けることも出来ずに腹に食らい、血が混じった唾液を吐き出した。一方殴った男はまだ殴り足りないのか指の関節からポキポキと音を出させ、口角が上がっていたのだった。
「オラ、立てよ」
威厳のある低い声に男はひるんでしまい、半ば逃げ腰になっていた。
って違うそうじゃない。
私は寮に帰ろうとしてた所じゃなかったか?そしたら目の前に死闘している人達に遭って…長時間此処に居たわけか。なるほど。
この学校は寮制で男女別れており、ある程度の器具が揃っていて住むには丁度良かった。二週間過ぎるとベットメイキングがされていて、食事は給食に似たようなものが出される。なんて快適な部屋なんだ!と最初は感動してはしゃぎ回ったぐらいだ。
そんな憩いの場に早く帰ろうと足を勧めたら、今に至るわけだが…帰りたい。こんなフラグ入りませんから!私はまだ生きていたいんです。え?社会人になったんだから大人の対応しろよ?あははっ…誰がするか!!
目線を彼たちに移せば、一人の男は楽しそうに笑いながら殴りかかっていく。赤く情熱的な髪に黒いシャツからでも見える、逞しい筋肉。目つきは鋭く、口元にできた傷は男の勲章とでも言うのだろうか、思わず恋に落ちてしまいそうだ。
そういう男子の鼻に絆創膏を貼りたい。きっとやんちゃ子みたいに笑ってる姿とか可愛いんだろうなぁ…。
妄想に意識を飛ばしていると、決着が着いたのか男は地面に唾を吐き出し、汗を拭うように腕を擦り付け、目が合う。
あ、フラグだ…と思っていれば男は近づいてきた。
「なんか用か?用がねェならさっさっと帰れ」
「え、ぁ。すいません、つい見とれちゃって…」
「ふーん。見とれてねぇ…」
何この返答!会話が続かないんですけど!いや続きたいとは思ってないですけどね。
とりあえず逃げたい、早く帰って暖かいお風呂に浸かりたい。もうこんな日にはキンキンに冷えた日本酒を飲みながらお風呂に入りたいっ!って駄目駄目。今は高校生なんだから我慢しないと。
「名前は?」
「鈴攫 渚です」
男は頭に手をあて髪を掻くと私を見た。
「俺は錬城 昶、昶でイイ」
「あ…はい」
「宜しくな、鈴攫 」
え。宜しくってなにが?明日なんか素晴らしい事でも来るの?あぁ、私の命日をつくってくれ…お願いですから私を殺さないで下さい。
そんな、私をよそに錬城はブレザーを片手に背を向けたのだった。
ニヤリと笑った口元を隠す彼
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