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冷酷と噂の名家当主に嫁ぐことになりましたが、私はただの雑用係です  作者: 月森 かれん


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24話 金蘭亭へ

 さらに一週間後。夜会当日。


 午前五時十五分。


 普段より早く起床した澪はソワソワしていた。

緊張して何度も手を擦り合わせる。


 「大丈夫大丈夫……。あれだけたくさん練習したし、

桜井さんも藤村さんも、律様にも褒めて頂いたし」


 自分を励ますように何度も呟きながら身支度を整える。


 「そうだ。焦りそうになったら深呼吸」

 

 これも訓練の中で桜井から教えてもらったものだった。

最初は誰でも焦りやすくなるので、訓練をした者には全員教えている、とのことだった。


 「少し落ち着いたかも。とりあえず頑張ろう」


 澪は両手を軽く握ると部屋を後にした。



 とは意気込んだものの、

午前中はあまり身が入らず味噌汁作りでは、人参をいちょう切りか半月切りかで迷って何度も手が止まり、榎田から心配された。




 午後一時、


 昼食を取り終わった澪は自室で桜井から説明を受けていた。

 

 「午後からは夜会に向けての準備になります。

北西にある湯殿で身を清めて夜会用の給仕服に着替え、またここに戻ってきてください」

 

 「わかりました」

 

 「ではさっそく向かいましょう」


 桜井に案内されて庭の湯殿へ向かう。

 一人用の小さい湯殿だったが脱衣所もあり、澪にとっては十分な広さだった。


 「籠には着替えが入っていますので、上がられたらこちらを着用してください。石鹸等、中の物は自由に使っていただいて構いませんので」


 「はい」


 「では私は柏木さんの向かいの部屋に居ますので、終わったら声をかけてくださいね」


 「わかりました。ありがとうございます!」


 澪がお礼を言うと、桜井も小さくお辞儀をして去っていった。


 扉が閉まり、桜井の姿が完全に見えなくなると澪は大きく息を吐く。


 「変に緊張しちゃった……。

馬車か。やっぱり揺れるのかな?」


 澪は物語に出てくる馬車しか知らず、実物を見たことがなかった。

そのため姿形は想像できているものの、それ以外のことは全くわからない。


 「って、いけない。

桜井さんを待たせちゃうわ」


 澪は素早く服を脱ぐと湯殿に入った。


 十分後。

 軽く髪を洗い、身を清めた澪は、籠に入っていたところどころ金糸の装飾が施された黒い給仕服に袖を通した。


 ――生地がツルツルする。絹かしら。

何にせよ高級品であることは間違いないわ。汚さないように気をつけなきゃ



 それから家に戻り襖越しに桜井に声をかけて、自室で待機した。

桜井も十分ほどで戻ってきて、廊下で最終確認を行う。 


 「後ほど律様から呼ばれますので、それまでは待機です」


 「わかりました。

あの、一つ聞いてもいいですか?」


 「はい。何なりと」


 「移動はどのように? 徒歩ですか?」


 澪は初めて桂木家に来た日のことを思い出していた。

あの時は実家から徒歩だったので、今回も同じだと思ったからだ。

 桜井は少し微笑むと優しい声で話し出す。


 「馬車ですよ。

夜会の度に借用しているのです」


 「ば、馬車!?」


 「ええ。初めてですか?」


 「は、はい……。家では雑用ばかりだったので。

買い出しぐらいにしか外に出たことがなくて」


 少し声を落として言う澪を見て、桜井の顔が曇る。

澪の実家での扱いを思い出してしまったからだった。

 しかしすぐに表情を戻すと笑顔で話を続けた。


 「そうだったのですね。

馬車は少し揺れますので、もし気分が悪くなったら遠慮なく言ってください」


 「は、はい。わかりました……」


 ――もしそうなったら途中で馬車を停めるのかしら?

それこそ迷惑では? せめて金蘭亭に着くまで我慢しよう


 澪はそう返事はしたものの、内心そう思ってしまった。




 空が薄暗くなり星が薄く輝き出した頃、桜井と澪は書斎で桂木律から出発の告知を受けた。

 桂木律は紺の西洋服――スーツを着こなしており、着物姿を見慣れていた澪は思わず動きを止めてしまった。

と、同時に本当に格式の高い場所へ向かうのだと改めて認識させられる。


 「では行くぞ。よろしく頼む」


 「承知致しました」


 澪と桜井の声が重なる。

 桂木律は大きく頷くと門前に停めてある馬車に向かった。

次回は3/28更新予定です。

よろしくお願いします

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