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沖縄・台湾侵攻2025 Hard Mode --Continue  作者: しののめ八雲
ACE/血に浸るニライカナイ
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特戦 3

命が助かったというのに、頭の整理が追い付かない。教村が思ったのはそのような思いだった。


ついさっきまで、李の部下に殺されようとしていた。

彼等は遊び半分という態度だった。

逃げなければ確実な死が待っているのに、教村は立ち尽くし、その場を動くことができなかった。

まさに蛇に睨まれた蛙。

圧倒的な暴力と恐怖に曝された犯罪被害者は、立ちすくみ、逃げることも抵抗することも出来なくなってしまう。

そういうことを教村は知識として知ってはいた。

だが、自分の人生の最後に身を持って知ることになるとは。せっかく弾道弾の嵐を生き延びたのに。

だというのに、「ああ、殺されるんだ」というような感覚しかもてないまま、彼女は運命を受け入れようとしていたのだ。


4人の内、3人が近付いてくる。1人は周辺を見張っているのか、教村には背中を見せている。

リーダー格らしい男がニヤニヤしながら、ライフルを降ろし、代わりに拳銃を引き抜く。教村にとってはどうでもいいことだが、彼はそういう気分らしかった。


状況が急変したのは、背中を見せていた1人が、ほんの一瞬だけ、こちらを振りむいた時だ。


突然、彼等のから30メートルほど離れた、家の壁と草むらが、まるで生命を持っているかのように盛り上がった。


教村はそう感じたが、無論、それは錯覚だ。


実際には、そこに潜んで居た、二人の日本人特殊部隊員が、監視担当の工作員が目を離した一瞬をついて襲い掛かったのだ。

訓練された工作員ですら、二人が潜んでいることに気付かなかったくらいだから、教村が異様な錯覚を起こしたのも無理はない。


勝負は一瞬でつく。


突如現れた二人組が、音も無く教村と工作員に近づくと、拳銃の音がなりひびいた。

教村を殺そうとしていた3人のうち2人と、監視役は瞬時に射殺されて、崩れ落ちる。

拳銃を引き抜いたリーダー格は、瞬時に事態の急変に反応した。

振りむいて、新たな敵に拳銃を向けようとする。だが間に合わない。


リーダー格に拳銃を発射しつつ近づいた男が、彼の持った拳銃を手で押さえ、狙いをつけられないようにする。同時にリーダー格の頭部に彼の拳銃を突きつける。

2人は一瞬その姿勢で固まった。


リーダー格と教村は瞬時に立場が逆転した。

いまや拳銃を突きつけられ、殺されようとしているのは、教村ではなく彼の方だ。

教村は、彼の表情を見た。驚愕、絶望、後悔、悔恨、当惑、恐怖。そういったものが合わさった表情だ。

そんな彼に、拳銃を突きつけた男は「調子に乗り過ぎだ。」とだけ言葉を掛けると、その頭部に二発の拳銃弾を叩き込んだ。


あまりの状況の急転回に、教村は感情の整理が追い付かない。

助かったという安堵もない。胸の動悸が収まらない。


突然現れ、教村の命を救った二人は、しばらく周囲の様子を伺っていた。他に敵がいないことを確認すると1人が相棒に「ゴッド。彼女を」とだけ言った。


「ゴッド」と呼ばれた男は、拳銃を収めると、混乱したまま跪いている教村に寄り添う。

「もう大丈夫です。どこか痛いところは無いですか?」

その声音はたった今、4人を容赦無く撃ち殺した人間とは思えないほど優しい。

よく見ると、二人ともサーファーが普段着でブラブラと観光をしている、といった見かけだ。拳銃を持ち歩いていることを除けば。


「ああ。あっりがとうございます。その、なんと言うか。その・・」

言葉が上手く出ないし、体は激しく震えていた。

彼女の様子を見た陸上自衛隊特殊作戦群に所属する白神1等陸曹は無理も無いなと思う。

仲間を殺され、自分自身も殺されかけたのだ。おまけに白神は知らなかったが、直前にはクラスターの空襲を浴びて、若者達が引き割かれる有様を目撃している。

いかに報道関係の人間とはいえ、ついこないだまで並みの日本人が絶対に味わうことの無かった衝撃と、死の恐怖とを流し込まれたのだ。

衝撃から抜け出し、平静を取り戻すのには時間がかかる。


白神は潜んでいた草むらに隠していたバッグパックを回収して、再び教村に寄り添う。

「かすり傷はありますが、大きな怪我はされていないようですね?」

「ええ、多分・・。はい・・。」

白神はパックからペットボトルを取り出す。

「これ飲んで下さい。落ち着きますよ」

促された教村は、渡されたペットボトルを受け取る。激しく震える教村には、蓋を開けることは難しかったから、白神は自分で蓋を開けてから渡す。

それから教村の手当てを始める。


ペットボトルのミネラルウォーターを口に含むと、随分と喉が渇いていたことに気付いた。水の旨さが、生の実感となって生き延びた事実を、しっかりと教村に認識させる。


勢い良く水を飲んだ教村が、少しむせるのをニコニコと見つめながら、白神はテキパキと手当をしていく。水を飲んだことで落ち着きを取り戻した教村は当然の疑問を口にした。

「あの・・。あなた達は?」

「我々は怪しい者ではありません。れっきとした自衛官です。多少立場が特殊ですが。もっと早くあなた達を助けたかったのですが、中国のドローンが見張ってものですから、なかなか動けなかったのです」


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