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貧乏男爵家の次女に転生した私は魔法の天才と一族から期待を寄せられていますが、その才能は、いつになったら開花するのでしょうか? ~略称(貧そい)~  作者: アカホシマルオ
アリソン九歳編

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222/222

開花その119 火事ですか救急ですか?

 相変わらずいい加減なタイトルですか、それとは別に、今回はSAMURAI BLUE2026北中米ワールドカップのメンバー発表があったので、応援回という位置付けに無理やりなっています。

 深く考えないで読んでください。

 


 過酷な現実から目を背け、たらふく飲み食いをした翌朝。澱んだ心の中とは反対に、澄んだ青空が広がっている。


 幸いにして、新たな龍震は起きていない。しかし凶星は今もそのまま空にあり、遠隔で調べた感じでは、謎のバリアは消えている。



 今だから言えるのだけれど、やはり南の大陸にあった特大の湖は、何かが少しおかしかった。


 あの薄赤い色の湖水には特に目立って怪しいところがなかったと記憶していたのだが、それでも一点だけ腑に落ちない部分がある。

 あの湖水は、私の広域清浄魔法を使った後でも、白濁した赤い色が消えなかった。


(そんなこともありましたね)

 生命も地脈も魔力も精霊も、何も存在しなかったあの大陸では、ルアンナは非常におとなしかったよね。



 湖のあの赤い色は、私の清浄魔法がゴミ認定せずスルーしたか、それとも私の魔法に耐性を持つ何らかの成分だった。恐らくはその両方、ゴミ認定すらできない予想外の何かで、魔法耐性も持っていたんじゃないかなぁ。


 そしてその後、妖の撤退とともにその色は消え失せ、普通の透明な湖水になっていた。

 あの湖は妖の求める何かを作り出すシステムの一部で、養殖池のような役割を果たしていたのではなかろうか。


 だとすると妖は、今は嵐が吹き荒れ大混乱の最中にある南の大陸を捨て、穏やかな気候のこの大陸で同じ工程を繰り返すべくやって来た、そう考えるのが妥当なのかもしれない。



 あの象徴的な赤い色が、妖の持つ力の源泉となる何かだとすれば、私の渾身の反撃により撤収した妖は、最後に残る力の素を全て残さず吸い上げてから、撤収したのだろうか。


 そんな余裕のある撤退であったとすれば、思ったよりも妖にはまだ力が残っているのだ。

 考えれば考えるほど、憂鬱になる。



 でも、あの妖の力は、一度見た。カタツムリの島のように初見で魔法まで封じられていたら、おそらく南の大陸でも勝ち目は薄かっただろう。

 しかし私は事前にそのカタツムリに対抗する技を知り、しかもその力をも取り込んでいた。


(運が良かっただけですね)

(いやぁ、おっしゃる通りで)


 でもおかげで今、あの妖が操る空間を歪め、行き来し、封じる力にもある程度抗うことができた。だからきっと、次はもっと上手くやれるんじゃないかな。

 そうだ。際どい力加減さえ気にせず全力で相手をするのなら、まだまだ私にもできる事があるぞ。


(そんなに胸を張って言える話ではありませんね)

 うるさい。


(せいぜい大陸ごと吹き飛ばさないように、手加減してくださいよ)

 先に言っておくけど、私にそんな余裕はない。今の私は、最初から全力疾走でマラソンに挑むような方法しか知らないのだ。



「で、今日はこれから、どうするんですか?」

 軽い朝食の後、一人中庭で呆けていると、不機嫌そうな顔で近寄って来たプリスカに問い詰められた。

 いや、もう少しだけ現実逃避を続けさせてくれよ~


 中空に漂う私の視線は、秋の空に浮かぶ雲を追う。横になって羊雲を数えながら、もうひと眠りしたいところだ。


 しかし嫌々ながら視線を少し西へ向けると、そこには例の赤い点が見える。

「今は龍も落ち着いているみたいだから、もう一度偵察に行くかぁ」

 振り向くと、そこには誰もいない。


 あれ、さっきまで隣にプリスカがいたし、セルカも屋敷精霊のムラノと共に、朝食の後片付けをしていたはずだ。

 逃げやがったな。



 一度私の影に潜んでからすぐに、別の場所へ実体化する。距離は短いが、ほぼ瞬間移動に近い。

 今まで、こんな小賢しい真似をする使い魔はいなかった。何も考えずに放置していたので、そもそも使い魔というのが何なのかも、よく知らない私です。


 くそ、それなら私にも考えがある。私はゆっくり歩いてテラスのテーブル席に戻り、朝食を食べていた木の椅子に腰を下ろした。

「召喚!」

 軽く呟くと、私の前に二つの黒い影が現れる。


「私だってさ、色々考えていたんだよ。遊んでいるように見えるだろうけどね」

「はぁ」

「では、何か画期的な計画があるのですね!」

 まぁ、画期的というほどじゃないけど。



「ほら、私の使い魔ってさ、みんな小型化できるじゃない?」

「……ああ、そうですね」

「……それがあの凶星とどんな関連が?」

 何を言っているのだ、こいつは。


 ドゥンクは私を背に乗せられるようなクロヒョウの姿と、普段の黒猫姿がある。パンダも普段のぬいぐるみサイズと巨大魔獣サイズ、シロちゃんも白蛇姿と巨大キマイラの姿とを使い分けている。というか、小型化以外の姿には滅多にならない。

 あとここにいるウマシカは皆、人間に化けていて、デンデンムシはそのままかな。


「でさ、あんたたち二人にもできるかなって思ったのよ」

「今のこれは、強制召喚ですか?」

「姫様、ひどいです」

「私もあんまり使いたくなかったのだけどさ、こう露骨に逃げられたらねぇ」



「ひょっとして、姫様が考えていたのはあの凶星への対策ではなく、これですかっ!」

「うん、そうだよ」

「ひえええええ」

 だから、ずっと何度も現実逃避だと言っているだろうに。


「でも私は、カラスは嫌だと前に言いましたよねぇ」

 召喚したプリスカは、以前予告しておいたカラスの姿になっている。


「でもほら、小さな人間に変えても、何の役にも立ちそうにないし」

 痛っっ。こいつ、いきなり私の手を嘴でつつきやがった。


「でもほら、手が無いと不便かと思って、足をもう一本増やしておいたから。きっとサッカーが上手になるぞ」

 こら、真ん中の足で私の顔に爪を立てるな。



「で、私はどうして……」

「おっ、セルカはヒキガエルの方が良かったか?」

「違います!」


 セルカは黒いコウモリになっている。こいつもついでに、足が一本多い。特に理由は無いが、やはり手の代わりに使えれば便利だよね。

 足が三本のヤタガエルというのは、ちょっとバランスが悪そうだったので止めた。


「これで二人とも、空が飛べるだろ。ほら、飛んでみろ!」

 二人は空に舞い上がり、無心で飛行を楽しんでいるように見える。ほら、現実逃避も悪くないだろ。



 昨日はメタルゲート号が墜落しそうになって、コマが肝を冷やしていた。その話を聞いていた二人が今日は逃げ出したの。でもほら、これでもう心配無用だ。

 空を舞っていた二人が、テーブルに戻って来た。


「姫様、これはどうやって元に戻ればいいのですかっ?」

 カラスがうるさいな。


「いや、もうそれがあんたの言う元になったのだから、気にせずそのままずっと飛んでいて下さいよ」

「気にしますよ!」


「ううう、私はずっとコウモリなのですか?」

「ほら、一度消えてから戻ってごらん」

「えっ?」

 二人の姿が一瞬消えて、すぐに人間の姿で地上に戻った。



「あとは、好きなだけ二人でトライ・アンド・エラーだ」

「私がコウモリ怪人になってしまったのは、エラーじゃないのですかぁ?」

 セルカの動揺が激しい。


「カラス人間よりは多少マシだろ?」

 憮然としたプリスカが言うのだが、どちらがマシなのかね?


「ああ、愛する人と駆け落ちまでした可憐な少女が最愛の人を失い、ついには残忍な人斬りに身をやつす始末。それが今や落ちぶれ、カラス人間に……」

「誰のせいですかっ!」


「コウモリ怪人もカラス人間も、どっちも変わりませんよぅ……」

 泣くな、セルカ。人生のオプションが一つ増えて、ラッキーじゃないか。それにプリスカと違い、次はバンパイアにクラスアップできるかもしれない。

 あ、別になりたくないですか、そうですか。



「世界が滅びるかどうかの瀬戸際に、いったい私たちは何をしているのでしょうか?」

 セルカ、それを言うな。これも重要な、現実逃避行動の一環なのだ。


「ほら二人とも。あんたたちは空を飛べるんだから、ちょっとあの赤い星まで行って、様子を見て来てよ」

 あ、さすがにこれは怒られるかな?


「はいはい。よし行くぞ、セルカ」

「えっ、本当に行くんですかぁ?」

 二人の姿が消えると、頭の上で羽ばたきの音が。


「おお、本当に行くとは。言ってみるものだ」

 青空に並んだ黒い点が二つ、小さくなって消えた。プリスカは単にこの場に居たくなかっただけだろうなぁ。なんかごめん。セルカを頼んだぞ。



 さて。では私は一人で、羊雲でも数えようかな。

 私は椅子の背を倒して空を見上げる。


 落ち着いて考えをまとめようと思っていても、なかなか難しい。緊張のせいか、自分の心臓の音が聞こえそうなほどに大きく感じる。ああ、現実逃避も楽じゃないし、思ったよりも難しいなぁ。

 私も鳥になって、大空を飛びたい。


 自分の鼓動が大きくなって空まで伝わり、小さな波が雲を生み連なり重なり、羊雲の群れとなって青空に広がっているような、不思議な気分だ。

 リズミカルな心臓の鼓動が、新たな記憶を揺さぶった。


 そう言えば、前世でも山岳会のおっちゃんたちと救命講習を受講して、心臓マッサージの訓練とかをやったなぁ。

 これはいつか、蘇生魔法とかに組み入れたらきっといいだろう。いつか、があれば。



「ひ、姫様。大変です!」

「はい。火事ですか、救急ですか?」

 プリちゃんの緊急発信に、つい余計なことを言ってしまう。あ、いつもの事か。


「だから、大変なんです」

「それはもう聞いた」

「凶星が、大きくなっています」

 ああ、そうか。少しも待ってはくれないのだね。

「判った。ではそれ以上は近付くな。戻って来い」



 目の前に、いきなり二人の姿が現れた。

「いや、自力で飛んで戻って来いと言ったつもりだが、召喚されてしまったのか?」

「いや、それが……」

 要するに、すぐ近くにいたらしい。


 その気になれば二人の位置とか分かるけどさ、面倒だから基本は放置だ。

「だから、現実逃避していないで、見てくださいよ!」


 仕方なく、凶星に目を向けた。

「うわ、でかいっ」

 来たか。



 来ちゃったよ。でも、ここへ来るのでは無さそうだ。

「あっちは、原野の方かな?」

「そうかもしれませんね」

「早く行かないと、困ったことになりそうですよ」

「はいはい、行けばいいんでしょ。どうせ誰も一緒に来てくれないんでしょ。いいですよ。一人で行きますよ!」

 もうやけくそだ。


「姫様。我ら同行はできませんが、常に心は姫様と共にあります」

「ご武運を」

 くそ、無理やり召喚してやろうか?



 あああ、もう後へは引けない。このままノープランで行くしかないよぅ。

 出たとこ勝負になる。いつもと同じだけどね。


(私は姫様と一緒ですよ)

 おお、ルアンナが優しい。でもさ。

(あんた、肝心な時にいつも居なくなるじゃない!)



 終






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