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ウチの三姉妹が俺の青春へ介入してくるんだが  作者: 桜 寧音
15章 神宮大会とオフシーズン
492/495

1−2−4 神宮大会決勝・新富学館戦

 三回の表、帝王の攻撃は八番セカンド野呂から。この野呂に対しても、一年生だからと不満が溜まる。門戸が戦力になったのは二年の春から。つまり一年から活躍している選手は総じて敵になっている。

 野呂は目には目を、歯には歯をということで、同じように待球作戦で挑む。打席の一番後ろに立って、ギリギリまでボールを見極めてスイングするという方法で粘った。スピードはそれほどではないので、変化に目が追いつけばちゃんとカットができた。


 そして、門戸の変化球は曲がりが大きいのと結構ランダムなためにボールになることも多い。それを見極めて四球を勝ち取っていた。

 ノーアウトのランナーなので、打者が平ということもあって送りバントのサインが出る。野呂の足は部内でも標準なために盗塁のサインはなし。平のバッティングも並なのでサインはすぐに決まった。

 門戸は一度牽制を挟みつつ、バッターの平へまた嫉妬の感情を沸々と湧き上がらせる。


(絶対的エースが入部するってわかってても帝王に進学することを辞めなかったんだもんなぁ。お前もよっぽど自信があったんだろ?だから優勝チームで背番号十なんて貰えてるんだよなぁ。むっかつく!)


 怒りながらのボールはポップフライにするための普通のストレートだったが、それは平からすれば問題ないボールだったので普通にサードへ転がした。ファウルにはならない、勢いを殺したゴロをサードの阿井が処理してアウト。

 理想的な進塁をして、バントの上手さにまた門戸のネガティブゲージが溜まる。ピンチになったことで名門エリートの実力に更に倍率がドンと上乗せ。自分で出したランナーだろうが関係なくネガティブになれるのは他責の極みだ。


 これで実力が発揮されるならと、チームメイトも放置しているので門戸の思考はこのままだろう。この性格を治していたらこの神宮に出れていないだろうと考えて、彼はこのままだ。

 帝王の打順は一巡して千駄ヶ谷が左打席に入る。データ上はピンチでも強いというのがわかっているので、千駄ヶ谷はサインを見ながら打席に入る。

 初球は見逃してボール。ストライクを安易に取りに行って打たれるということはしなかった。千駄ヶ谷の打率は高いので、甘く入れば普通に打たれる。それに俊足なためにセフティーバントを警戒している。


 そして二球目。ランナーの野呂が走り、千駄ヶ谷がバントの構えをした。すぐにファーストとサードがチャージをかけて、他の内野陣はベースのカバーに走る。

 投げられたのはスライスカーブ。千駄ヶ谷に向かってくるように曲がったボールだ。それをよく見て、守備の動きも見て千駄ヶ谷はバットの位置を調整した。


(そこ!)


 ダッシュしてくるサードと、前に出てくるピッチャーの門戸の間。誰もいない空白地帯へ強く転がすようにバットを押した。チャージが優秀すぎたためにサードの阿井はその強い打球に届かず、ピッチャーの門戸の右横を抜けていった。

 ショートの西嶋はサードベースへのカバーに入る動きをしていたが、打球を見て方向転換。だが定位置ではなかったために定位置の前へ転がる打球には少し戸惑った。打球を捕球する頃には爆速で駆け抜けていた千駄ヶ谷を刺すことはできず、三塁ランナーもいたので無理に投げれば一点が入りかねない。


 オールセーフの内野安打。これを警戒していたのにまんまとやられたために、新富学館の監督はこの冬に守備を徹底的にやることを決める。俊足のバッターがセフティーバントでプッシュ気味にやって誰も捕れないような間にするなんてありふれている。

 みすみすとやられた守備陣に喝を入れる目的で、守備のタイムを取って伝令を送る。スクイズ警戒とオフシーズンは覚悟しておけという脅しだ。

 マウンドで集まった選手たちはその伝令を聞いて顔を青ざめさせた。自分たちのミスだというのがわかっている上に、監督の言う徹底的な守備練習の厳しさを知っている。打撃のチームだからこそ、守備は粗が目立つ。その粗でせっかく手に入れた点を台無しにするつもりかと毎回ミーティングで言われているのだ。


 あとは、ここでプレッシャーをかけることで門戸のネガティブゲージを更に貯めて良いピッチングをしてもらうための発破でもある。冬の特訓は確定であることに変わりはない。

 タイムが明けて、一アウト一・三塁という絶好の得点チャンス。ここで打者は二番の仲島で、小技もできれば長打力もある打者だ。

 一塁ランナーが千駄ヶ谷ということもあって、初球からスチール。仲島は援護のためのスイングもせずにボールをじっくりと見て見逃し。ストライクを取られるが、盗塁が成功して二・三塁に変わる。一打二点のチャンスで、帝王は小細工なしに仲島の打力に任せた。


(4シームはほぼなし。大体変化するボールでなんとかするタイプだ。ストレートだって悪くないんだが、バッテリーの方針なのか変化球ばかり。そういうピッチャーが最近多くないか?智紀対策でどこのチームはストレートに対策をしてるから、差を付けるために変化球を磨いてる?ただ単にそういう特色の投手が勝ち上がってるだけ?……米川さんっていう例があるから間違ってはないと思うけどな)


 仲島はそう思いながら狙い球を絞る。ナックルもどきに決めて、引きつけて打とうと思ったところにドンピシャでそのボールが来た。

 ナックルにしては速いが、変化球としては並の速度。そして不規則に曲がるとはいえ、スライスカーブのように大きく曲がるわけでもない。後ろに重心を残して身体が開きすぎないように貯める。そしてインパクトと同時に全体重を乗せてバットを振り切った。


 変化の仕方も良かったのだろう。運良く芯からそこまで外れなかった。そのおかげもあって打球はグングンと左中間に飛ぶ。全員がその飛んだ方向を見て、ボールの飛び方を見て。ダメだなと感じた。神宮球場はプロも使う球場だが、そこまで広くなく、フェンスも高くないのだ。

 フェンスを悠々と超えてスタンドに入っていく。その打撃力を見て目を光らせるスカウトが多かった。


「やっぱり打てるショートは良いねえ。彼が二番というのが帝王は凄いよ。普通のチームだったら四番で良い」


「ですなぁ。とはいえその後ろに智紀君と三間君がいる。一番には千駄ヶ谷君がいるから彼は二番というのも的確でしょう。五番はちょっと勿体無い」


「打率、出塁率も良いから多めに打順を回したいというのもわかります。二番とか一番に置いて出塁しても返しても良い打者というのがベストでしょう」


 神宮決勝ということもあって、プロのスカウトも詰めかけて仲島のことを評価していく。仲島は智紀や三間に埋もれることなく評価されている、帝王の中でもかなりの注目株だ。

 本塁打はこれで三十八本。打率は四割越えで守備走塁もトップクラス。一年秋からレギュラーで試合経験も豊富であり、キャプテンを任されるリーダーシップもある。


 他の球団なら何位で指名するだろうか。ウチのフロントはどう評価するか。そんなことを考えつつ、彼らは彼をどうアピールしようかと画策していた。

 一方、ホームランを打たれた門戸はネガティブモードがMAXに。続く打者が智紀ということもあってここ一番の変化を見せつけて智紀を空振り三振に。三間もファーストゴロに切って取って、これ以上の出血は防いでいた。


「おい三間!打つんじゃなかったのか!」


「すまーん!平、次こそは打つ!」


「お前割とそんな言葉多いぞ!仲島の方が打ってないか?」


「いえいえ、打率と長打率ではまだ三間君の方が上ですよ。三間君は四番として他のチームに警戒されていますから、序盤は仕方がないのでは?」


「加奈子さん、コイツを甘やかさなくていい。大きいこと言って実現できてないコイツが悪い」


「智紀も凡退してるやろうが!」


「二連続凡退はしてないぞ?言葉じゃなくて結果で示せ。小物っぽいぞ」


「ほらお前ら、守備に頭切り替えろ。三間、変なミスするんじゃないぞ」


「わかってるわ、仲島ぁ!次はオレがホームランを打つ!」


「だからそういうのをやめろって……」


 三間のミスショットを咎める声で帝王のベンチ前は騒がしくなるが、それを切り替える仲島。雰囲気は良いまま守備へ移行していった。

 一方新富側は、打たれた門戸を責め立てた。ここで智紀と三間を抑えたことで誉めてしまうと、一気にルンルン気分になって門戸のボールはへぼくなる。それがわかっている同級生がベンチ外に聞こえないように言葉責めをした。

 とはいえ守備についてはミスがあったためにそのことは全員が叱られた。

 まずは平を攻略すること。そのために各々で狙い球を絞っていく方針になった。


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