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プロローグ 変わった日常

朝一。

 今日も朝がやってくる。さて、今日は誰かな、なんて思考になってしまうのは俺も三姉妹に毒されている証拠だろう。

 ウチの三姉妹は全員ブラコンなのか、誰かしら一人必ず俺のベッドに潜り込んでくる。思春期真っ盛りの俺にとっては非常に辛いことなのに慣れてしまった。こんなんで彼女できるんだろうか。

 まず起こしてくれなかった携帯電話のアラームを切る。正確にはそれが鳴る前にいつも目覚めるからなんだけど。


 必ず空いている右腕を動かそうとして、違和感。いつもウチの三姉妹は俺が野球で投手をやっているために、ベッドに潜り込んでも左側で寝ている。それが今日は右腕に誰かがいた。左腕も必要だけど、大事なのはどっちかって話で。

 見てみると長女の喜沙姉が。今日は普通にパジャマって呼べるような紫色の寝間着だな。良かった良かった。急いで帰ってきて寝ぼけてたか?昨日も寝る前まで帰ってこなかったし。


 喜沙姉から右腕を回収して携帯電話のアラームを解除。ついでに左側を見ると三女の美沙が。昨日は美沙の日で、喜沙姉が忍び込んだんだろう。

 こんな状況を野球部の奴らにバレたら背中を刺されそうだ。いくら家族とはいえ仲が良すぎだろ。大学生になったばかりのアイドルと、中学三年の美少女と添い寝してただなんて、彼女に飢えてる連中に知られたらどうなるか。


 俺が起きてやることは隣に寝ている誰かを起こすこと。今日の場合は美沙だ。喜沙姉はいいだろ。流石に自分でアラーム準備してるだろうから。

 というわけで美沙の肩を軽く揺らして起こす。美沙はこういうピンクの可愛らしいパジャマがよく似合うなあ。ウチの可愛い担当は伊達じゃない。


「お兄ちゃん……?」


「おう、おはよう。朝だぞ」


「うん……?喜沙お姉ちゃん?……なるほど」


 美沙が起きてすぐ喜沙姉の存在を把握して、なにやら頷いていた。帰ってきたところを見ていたんだろうか。


「ふぁ〜あ。お兄ちゃん、一緒に下いこ?」


「いいけど、先にトイレで着替えてくる。これじゃあ着替えられないし」


 いくら寝ているとはいえ、喜沙姉がいる場所で着替えたくない。学校にもユニフォームで行っていいんだから、ちゃっちゃと着替えよう。制服を持っていけば登校の時に制服着ていかなくていいっていうのは楽だ。

 というわけでトイレで着替えてくると、俺の部屋の前に美沙が待っていた。そのまま俺の左腕に引っ付いて一緒に下に降りる。

 こんなにお兄ちゃん子でいいんだろうか。しかもこういうところを外では隠してるし。お兄ちゃん将来が心配。

 下に行くと珍しく母さんがリビングで何か飲んでいた。家に帰ってくるのも珍しいけど、こんな時間に起きているのは更に珍しい。五時過ぎだぞ。


「おはよう、母さん」


「おはよう、ママ」


「おはよう。あんたら本当に仲が良いわね。トモは朝のランニングかしら?」


「そう。入部したらもっと走らされるかと思ってたんだけど、実践的な練習ばっかであんまり走る時間ないんだよね」


 入部した直後は控えていた朝のランニングを復活させていた。投手は足腰が大事だから走るのは大事だ。シニアを引退しても成長痛が辛い時期を除いてずっと走っていたが、入部した後は相当走らされるだろうと思って控えていた。

 実際は二軍に早々上がることになって、走り込みより色々優先されることになっただけ。二軍に上がれなければそれこそ毎日走らされていた。投手としてロードワークにも行くけど、毎日走るわけじゃない。


「母さんもしかして帰ってきたばっか?」


「そう。仕事終わって今日は休み。これ飲み終わったらシャワー浴びてさっさと寝るわ」


「朝ごはんは?何かすぐ作る?」


「いやー、結構限界だから良いわ。その代わりお昼ご飯で何か作っておいてくれない?起きたら食べるから」


「わかった」


 アイドル事務所の女社長は大変そうだなあ。本人も元アイドルとして仕事があるって言ってたし。

 美沙も毎日俺と千紗姉のために早起きして家事をしてくれるんだから。本当に頭が上がらない。


「じゃあ俺も行ってくるよ」


「トモ〜。おはようのチューしてあげよっか?」


「……今までしてくれたことあったっけ?」


「失礼ね。アンタが三歳になるまでは毎日してあげてたわよ。もちろん美沙にも」


「母さん眠くて頭働いてないんだろ。早く寝ろよ」


 それだけ言ってランニングに向かう。大体三十分ほど。それくらいで切り上げないと朝ごはん食べて学校行く支度する時間がなくなる。

 朝にランニングしている人は結構多い。運動着やジャージの人が多いから白い一般的な練習用ユニフォームとはいえ、俺は目立つ。だからか結構声をかけられる。

 こういう挨拶って大事だから、ちゃんと返事をするけど。イヤホンを耳につけてる人も会釈くらいは返してくれる。

 こうして宮下智紀の一日は始まる。


────


「ママ、何でお兄ちゃんにキスしなくなったの?」


「アンタらが鬼の形相で睨むからでしょうが。あたしだってトモに構いたいのに、独占欲高くて困るわ」


「ママとはいえ、お兄ちゃん取られるのは嫌」


「そういうところよ。誰に似たんだか……」


「でもママと喜沙お姉ちゃんってそっくりだよね」


「そう?よく外見は千紗が一番似てるって言われるけど」


「寝ぼけて行動に移そうとするところとか、そのスタイルとか。たまに天然なところとか」


「美沙だって身長はともかく、スタイルはこれからよ〜」


「……ママがお兄ちゃんにキスしてくれれば、どさくさに紛れてわたしもキスできたのに……」


「……いや、ホント。美沙ちゃんって誰に似たのかしら?パパは野球一筋のトモそっくりだったのに」


こちら不定期更新です。

基本はエレスティシティの方を投稿します。


感想などお待ちしております。あと評価とブックマークも。

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