プロローグ
厨二、ハーレム、チートetc……何であろうが、後で自分で読み返して楽しむ為に、書きたいものを書いていきます。自給自足です。オ◯ニーとも言う。
気付いたら『なろう系』なんて皮肉ワードが定着してるけど、だから何ですか?
こちとら、暇を潰せるなら何でもいいのですよ。
という、筆者と同じ想いを抱いている、そこの貴方様。
もし良ければ、ここで時間を潰していきませんか?
この世界は、神々の遊戯盤である――と、どこかの偉い人が言った。
曰く、『太陽と光、誕生を司る神』デアナトースは人類――人間、妖精、土小人――を創造し、愛でている。
曰く、『月と闇、死を司る神』アレコニルは魔物と獣を創造し、愛でている。
曰く、『時と混沌、輪廻を司る神』リグナシアはそれぞれ掠め奪った"人間"と"獣"を捏ね混ぜて、獣人と人狼種を創造したものの、それらに何の感慨も抱かず、放り捨てるように獣人をデアナトースに、人狼種をアレコニルに譲渡したらしい。
ただし、その対価として、デアナトースとアレコニルの創造物の中から、己が気に入ったものを愛でる権利を得たという。
三柱の神々は自らの愛する創造物を『盤上の駒』に見立てて観賞し、ごく稀に干渉する。
遊戯盤の上にて、駒の人生をダイスを転がして決め、弄ぶ。
そして、互いの駒を競わせ、その駒の活躍を観劇し、己の愉悦とするのだ。
神々は互いの愛する駒の為に、幾つかのシステムを作った。
デアナトースは我が子たる人類の為に、『レベル』『天職(及び、それに連なる特性)』『ジョブアビリティ』『ウェポンスキル及びツールスキル』『ミスティックワード』を用意した。
『レベル』とは、その者の生命力の強さを示す概念である。0から始まり、10で終わる。一説によれば、最終到達点は11であるとの噂もあるが、真相は定かではない。そもそも、レベル9に至った者すら未だに確認されていないのだから。
このレベルが高ければ高い程、生物として"高み"にあるといえよう。レベル差が1でも違えば、幼児と大人程の力の差が生じる。
『天職』とは、その人間が最も活躍できる職業を提示し、効率的な成長を促す。具体的には、『レベル』の成長速度にボーナスが与えられ、その職業に就いた者が得る『ジョブアビリティ』と『スキル』の数と質が優遇される。
職に就いた者には『ジョブ特性』という職業の特徴を表す、特有の技能が与えられる。
『ジョブアビリティ』とは、その職に適した特殊能力を付与し、個人の力を底上げする重要な要素である。様々な種類があり、同じ職業に就いた者達でも、得られるアビリティは異なることが多い。これは、デアナトースがダイスを振って決めている(例外はあるらしい)とされ、その者にどんなアビリティが与えられるかは、神ですら知り得ないと言われている。
『スキル』とは、専用の道具を用いた場合に限り発揮される、特別な技術である。武器ならばウェポンスキル、それ以外はツールスキルと呼称される。ウェポンスキルを例えるなら、必殺技のようなものだ。勿論、確実に"必殺"というわけではないが。言うなれば、敵に痛烈な一撃を与える、とっておきの技だと理解すればいい。
『ミスティックワード』とは、デアナトースが人類に与えた異能の術である。一般的には『魔術』と呼称される。任意の自然現象を発生させ、周囲に多大な破壊を齎すものや、対象の体調や精神に影響を及ぼすもの、その他にも空間そのものに影響を及ぼすもの等、様々な種類が確認されている。
他にも、極めて特殊な条件を満たすと入手できる『トランスファーアビリティ』『トランスファースキル』といったものもあるが、これらはジョブアビリティやウェポンスキルとは概念そのものが異なり、実際にお目に掛かる機会は滅多にない。
以上が、人類が保有する力の全てである。
対するアレコニルは、我が子に『位階』という概念を与えた。
他の生物を殺し、その魂を吸収することで、己の存在価値を向上させるという。位階の上昇は己の肉体に"進化"を齎し、自らの存在を新しいステージへと導く。
現在において人類が確認している位階は第六位階までであり、これを事実上の最高位と見做しているが、実のところ、『魔王に至る素質がある魔物』のみ、第七位階に到達する可能性が示唆されている。
他にも、人類の『魔術』に酷似した『魔法』も与えた。魔法とは、全ての魔物が使えるわけではなく、さらには魔物の種族によって行使できる"種類"が最初から決められているものの、その威力は人類に与えられた魔術とは比較にならない。
それだけに留まらず、一説によれば、アレコニルは位階という概念に加えて、デアナトースの『アビリティ』を模倣し、種として優秀な魔物にこっそり与えているらしい。
唯一、システムの構築に関与しなかったリグナシアは、自らが寵愛を向ける『駒』が織り成す『物語』を楽しむだけだという。その際、物語をより深く楽しむ為、様々な形でお気に入りの駒に試練を課すとのことだが……。
一応、神々から才ある者へ贈られる『ギフト』なるものも存在するが、これは例外中の例外なので、詳しい説明は必要ないだろう。
かくして、神々より生み出されし駒達は、これらシステムに縛られつつ、今日も今日とて暇を持て余す神々の遊具となり、その人生を全うするのだ――
「――聞いているのかね?」
そよ風に揺られ、静謐な音を奏でる霊鳥の如く。聴く者を魅了するたおやかな声が、鼓膜を甘美に刺激する。少女のように高く、それでいて静かに落ち着いた声音だ。
「……ん? あぁ、聞いてる聞いてる。ばっちり」
微睡む意識を奮い起こし、霞む視界のピントを合わせれば、互いの息吹を感じ取れる程の近くに、思わず呼吸の仕方を忘却するような美貌が現れた。
この地域ではかなり珍しい衣服である、白や紫の花模様をあしらった黒い着物と白色ビロードのケープを優雅に着こなしている少女だ。ただし、何故かその頭には赤白黒三色チェック柄のキャスケットを被っている。実にミスマッチ。なのに、妙に様になっている。
「本当に……? なら、今わたしが言ったことを復唱してみなさい」
ジーッと訝しげに、鮮血を凝縮したような真紅の瞳が俺の顔を正面から覗き込むように見据えてきた。
「あー……今日から大嫌いなピーマンも残さず食べます、だったっけ?」
「ピーマンは悪ッ!! ――じゃなくて、やっぱり聞いていないじゃないか、この戯けめ。わたしはこれから狩りに行く獲物の習性の話をしていたのだよ」
白く細い人差し指で、ぶにゅぶにゅっと俺の頬を突いてくる。
「人の話はちゃんと聞きなさい」
「うあー」
精錬された貴金属と見紛う白金の髪は、最上級の絹を思わせる滑らかさで中空を浅く揺蕩い、彼女の腰まで伸びた長髪を指で梳いてみれば、ほんの些細な抵抗すらなく、最後まで気持ちよく流れていく。
「む? いきなり何をするのかな」
「いや、別に。何となく」
俺の脈絡のない行動に首を傾げるものの、抵抗することはない。
――歳の頃は、13~14歳くらいといったところか。まだまだ幼さが抜けない少女の風貌といえる。
しかし、それはあくまで外見上のみの話だということを、俺は誰よりも知っていた。
何故なら、彼女は。
「ふむ。こうして考えると、"吸血鬼"の髪を気軽に梳ける人類の男なぞ、世界でも君だけなのだろうね」
ふと微笑を零す彼女はそう、紛うことなき『吸血鬼の邪王』なのだ。
不死系統の魔物のみならず、あらゆるアレコニルの眷属の中でも特に強大な力を保有する種族とされる吸血鬼は、最も位が低い者でさえ、第四位階という『高位モンスター』に分類される。
その吸血鬼がさらに位階を上げ、最高位とされる第六位階の『ヴァンパイアロード』――ならぬ、その"特殊型"である『イモータルロード』に到達した少女こそ、目の前の彼女なのであった。
同じ位階でも、種族によってその強さには大きな隔たりがあるものの、人類が定めた脅威度の高い魔物の中には、第四位階に到達した時点で、発展した街ひとつ容易に滅ぼす力があるとされているのに、それを遥かに上回る怪物――第六位階という最高位に認定されている魔物が、俺の隣に腰掛けている。
荷馬車に揺られて、のんびりと日差しを浴びる彼女は、大きな欠伸をひとつ漏らした。
「良い陽気だ。絶好の日向ぼっこ日和だとは思わないかい?」
吸血鬼らしからぬ独白を漏らすと同時に、ぽすんと気軽な様子で俺の肩に頭を預けてくる。
「わたしは少し眠るとしよう。何かあったら起こして……すぅ」
もう寝たようだ。あまりに早過ぎる。とはいえ、相手は吸血鬼だ。人類とは身体の構造が根本的に違うのだろう。深く考えても仕方がない。
無防備な寝顔を晒す彼女に肩を貸したまま、俺も再びうたた寝と洒落込む――彼女との"出会い"を回想しながら。
自分の中での原点回帰です。
不定期更新なのは変わらずですが……。