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91 SSS

 バーリャが話してくれた凄惨な夢の話に一同は絶句していた。

 実の親に虐げられた少女が取った最後の手段がきっかけで、フルヴィアという女性の死体が怪物の元になって、怪屍ガーデナーが生み出されたというのもにわかには信じがたい。

 だが夢に出てきた少女の力はフォルミーカの特徴にも合致している。

 フォルミーカの前に現れた、ゾンビ化の影響を受けなかった大きなロバのような怪物のことも気になる。


「……普通の人間なら生でキノコを食べたら死ぬ」


「腹が減ってたからって食おうとは思わないよな。自殺するつもりだったってことか?」


「いいえ、きっとフォルミーカは死ぬつもりはなかったんだと思います。なんて言えばいいのか分かりませんが、死が身近なものになったというか、自分を傷つけることが生きている実感に繋がるっていうか」


「……分かるの?」


 怪訝そうにパラスがバーリャに尋ねる。


「ごめんね、上手く言えないけどそう思ったの。もしかしたらフォルミーカはフルヴィアが自分のためにしてくれたことで死んでしまったのに気付いて、自分への罰として毒キノコを食べたのかもしれない」


「自罰感情が自傷行為の理由か」


 バーリャの感性も理解できないところは多いが、悪夢を見た本人にしか分からないこともあるのだと思っておこう。

 基底世界でリストカットをしている人達も同じような動機なのだろうか。


「セレマイアでは偶発的に起きているのでしょうね。業魔力の素質があるセレマイア人は極限状態に追い込まれることで新種の怪物を覚醒させることができるのでしょう」


 ヨルノンさんの考察は核心に迫っている気がした。


「でもそれってかなり運頼みじゃないですか?」


「おそらく新種の数はそれほど必要ないのかもしれません。おそらく初めに生み出された1体の始祖には仲間を増やす力があるのでしょうね」


 言われてみれば、シーレーンが率いていた怪魚の群れだって最初からあんなにたくさんいたとは考えにくい。

 アーサーが連れてきていたメルクという名の鳥も怪鳥の眷属なのだろう。

 イシュー様の石礫をくらったとはいえ、怪鳥の始祖ならあんなにあっさり倒されないはずだ。


「自傷行為の動機はともかく、業魔力の活性化との関連性には注目すべきでしょうね」


「フォルミーカの場合は毒キノコを食べることでした。自傷行為によって過去を思い出す。その辛い記憶が業魔力の活性化に繋がっているとしたら」


 サバイバー症候群(シンドローム)という言葉を聞いたことがある。

 大勢の人間が亡くなるような災害や事件を生き延びた人間は、自分が生き残ったことそのものに罪悪感を覚えるそうだ。


「奴らをよく観察すれば強力な攻撃が来る予測を立てられる」


「敵の自傷行為を確認したり、バーリャさんのように悪夢として受けとったりすることが、これからのセレマイアとの戦闘では重要になってきますね」


 バーリャのように他人の悪夢を受信する能力がある魔物……電波系魔物といったところか。


「自傷行為の確認は鳥のように飛べる怪物を飼いならすのはどうでしょうか? 以前捕まえたメルクを研究して怪鳥を大量に増やし、人魚が怪魚を操るように誰でも使えるようにできれば安定します」


「いい案ですね♪ 悪夢を受け取る感受性の高い魔物を探し出すにはまず、バーリャさんの魔力のことをもっとよく知る必要がありそうです」


「私ですか? なんだか恥ずかしいですが、私でお役に立てることがあれば協力します!」


 内向的でなかなか心の内を明かしたがらないバーリャだが嬉しそうにしている。

 竜の魔力を身に纏う鱗化粧の魔法は、彼女の内面にも良い影響を与えたのかもしれない。


「仮にサバイバー(Survivor)症候群(Syndrome)スキル(Skill)と呼ぶのはどうですか。自傷行為や悪夢の細かな違いで技の種類が見極められたら勝手に技の名前も付けます。そうすれば被害を最小限に抑えられるはずです。危険度によってB級とかA級とかランク付けもしましょう」


「……じゃあその技の名前は私が考える」


「考えてもいいけど、できればみんなが分かりやすい名前にしような」


 名付けと聞いてパラスがやけに張り切っているが、馴染みのない言葉ばかりでは本末転倒だ。

 混乱が生じやすい状況でもはっきりとした方がいいだろう。


「カマラカウラのように同盟を結んで知恵の塔の支局を増やせれば、同盟を結んだ魔物間でSSSの情報も共有できますね。これからはソロモンさんの旅の土産話をたくさん聞けると思うと楽しみで仕方ないですね♪」


「ハハ、遠征するのは全然いいですけど、しばらくの間は休ませてください」


 セレマイアの脅威に晒されているのはディルエットだけではない。

 周辺にある他の魔物の都市や集落にも協力を仰いでいく必要があるだろう。

 気の遠くなる話になってきたせいか、少しだけディルエットが恋しくなった。

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