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66 強さの秘密

 アーサーが不敵な笑みを浮かべる。


「先に質問したのは俺のほうだぜ? 答える前に質問し返すなんて礼儀がなってないな」


「それは目下に向かって吐くセリフだ。あいにくセレマイアの人間なんて尊敬してないんでな! 回答者権限グレード4、フラガラックとデッドエンド起動」


 魔石板から(フラガラック)を抜き、(デッドエンド)を構える。

 通報電を放てば楽に戦えるだろうが、今の状況で知恵の塔に負担を掛けさせたくない。

 ここは俺の力でどうにかしてみよう。


「さあかかってこい! 君の実力を見せてもらおうか!」


 アーサーが剣を構える。

 もう姿を隠しても意味がないが、この剣士とまともにやりあっても骨が折れるだろう。

 まずは視界を遮って正確な攻撃ができないようにしないといけない。


回答者権限寓意術(クアドラプルA)禍免(アイディー)()韜晦(マスカレード)


「うわ! なによこれ、煙幕?」


 再び煙があたりに立ち込める。

 だが今回の煙はすぐには晴れず、その場にとどまって視界を遮る。

 案山子の幻影は見破られてしまうので意味はないが煙ならどうだろう。

 俺は知恵の塔と通信することでアーサーの位置を把握できる。

 これで時間稼ぎをしている間にアーサーの手の内を把握しておくんだ。


回答者権限寓意術(クアドラプルA)創発達(そうはったつ)識者共(しきしゃきょう)


 住民から寄せられた被害報告を知恵の塔に整理させ、住民を襲ったアーサーが使った剣技の映像を頭の中に直接流し込む。

 素人目に見て熟練しているようには見えないが、なんというか独創的で実戦的な剣の振るい方に見える。

 少なくとも対人を想定した技ではないとは分かった。

 普段は人型の魔物を相手にしているわけではないのか?

 それにこいつは……ディルエットの住民には傷を負わせるだけで、殺すまでには至っていないのか。

 あのアレリオンとかいう案内役の男が安全に街を通れるように向かってきた魔物をいなしている。

 そうだとしても許すことはできないが。


 魔石板からアーサーの位置を示す光が消えているのに気付いた。

 見失ったと気づいた直後、殺気を感じて後ろに飛びのいた。

 あのアバンダンと戦った時に感じた業魔力によく似た感覚を殺気として捉えた。

 勘は当たっていた。

 俺がいた場所に煙の中から剣が振り下ろされ、勢い余って地面に突き刺さった。


「おっと、よけられたか。見間違えたかな?」


 なぜ位置が分かった?

 奴は煙でこちらの位置が分からないはずだ。

 理由は分からないがゆっくりしてはいられないようだ。

 今頭の中に叩き込んだ技からアーサーの動きを予測するんだ。

 大振りで素早いので、間合いを取っていればまず攻撃は当たらないはずだ。


「これはチャームを出し惜しみしていられないな。サラマンダーのチャームを使えるのもこれで最後みたいだな」


 アーサーが左腕のブレスレットに付けられた赤い鱗のチャームを取り出す。

 そして呪文を唱えると、赤い鱗のチャームと剣の柄にはめられた宝石が発光する。


 一瞬で間合いを詰めてきたアーサーは剣を振り下ろす。

 それに応じてデッドエンドの自動防御が働き俺の身を守る。

 素早い動きから繰り出される攻撃も知恵の塔のアシストがあれば十分に防げる。

 そう思った時だった。

 デッドエンドの縁からすさまじい勢いの炎が漏れ、その熱で体が炙られた。

 熱風が眼球にも届き本能的に視界を狭めてしまう。

 やっとの思いでフラガラックをアーサーにむけて突き刺し後ずさりさせ、ようやく炎から解放された。


「渾身の一撃だったんだけど、よく受け止められたね。その盾俺にくれない? ぜひともこの旅のお土産にしたい」


 離れたアーサーに目をみやると、その手に持っている霊剣から炎が出ていた。


「その炎は……その赤い鱗から引き出した魔力か」


「とっておきだったんだけどね。農園を燃やすのに結構力を使っちゃってさ。もうこれっきりだったんだよ」


 赤い鱗が色を失い、朽ち果ててブレスレットから抜け落ちた。

 炎を操る魔力を秘めた魔物の体の一部は、寓意術でアレゴリー魔力を使い果たされた道具と同じ末路を辿っていた。

 目の前にいる敵は俺よりも圧倒的に強い。

 あまつさえずっと俺の専売特許だと思っていた寓意術とタルパの力を無自覚に振るっていた。

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