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58 怪儡アバンダン

 怪物は人間が生み出して使役するということは知っているが、人間の捨てた物から発生するなんて話は聞いたことがない。

 多少の例外はあるということだろうか。

 それとも、ある程度怪物化の条件を満たしている物を一箇所に集めてしまったのが悪かったのか。

 いまさら後悔しても遅い。

 正確な原因を突き止めるのは後だ。

 今最もすべきことはこいつらが地下室から城内へ、城の外へと出て行ってしまわないようにすることだ。

 こんな魔法が効かない魔物の天敵に好き勝手させるわけにはいかない。


「使イ捨テニ……使イ、使い捨てに、するなあぁぁぁ!!」


 ガラクタが寄り集まって、小さいものだとハトほどの鳥から中型犬程度の大きさの動物をかたどった怪物が次々に生まれていく。

 あたりをキョロキョロと見回すものもいれば、小鹿のようにヨロヨロとバランスを取ろうとしているものもいる。

 その可愛らしい動作に不釣合いな外見をしていて酷く不気味だ。

 そして、そのいずれもが自分たちを放棄した人間たちへの怨嗟の悲鳴を撒き散らしている。

 何度も発音しているためか、だんだんと聞き取りやすくなってきた。


「大猟大漁、一網打尽! 魚の網の寓意術(ぐういじゅつ)!」


 両手で漁網を掴んで、前方へ大きく踏み込みながら振りかぶるようにしてアレゴリーだけを引き出す。

 アレゴリーエネルギーで編まれた網が怪物たちに覆い被さり、その動きを大きく制限する。

 しかし、寓意術を発動した際に違和感を感じた。

 いつもよりアレゴリーの密度が薄い気がしたのだ。

 怪物たちも網をかけられた当初は混乱していたものの、次第に絡まった網に抵抗するようになった。

 そしてついには網を力づくで引きちぎり始めた。


「グオォォォ!」


「また捨てる気だな! ワシらは、ゴミじゃない!!!」


 ブチブチィッとアレゴリーの網が破られていく。

 半ばとはいえ役目を終え、ゴミとして捨てられているものに含まれるアレゴリー魔力がこんなにも脆くなっているとは思わなかった。


「……お願い、私とソロモンを守って」

 

 パラスの命令を受けてセーレとキマリスが応戦する。

 戦闘用に造られたものではないとはいえ、2体のゴーレムでも10体ほどの怪物を抑え込めている。今のうちは。

 ゴーレムたちの動力源である魔力を怪物たちに吸い取られてしまうと、そう長くはもたないだろう。


 ゴーレムたちが抑え込んでいる怪物たちが、お互いを喰らい始めた。

 鋭い牙で同族の体を噛み砕き、適度な大きさにして分離させると、それを自分の体に融合させていく。

 大きいもので俺の腰ほどまでの大きさしかなかった怪物たちの中から、動きは緩慢だが1.5メートルほどで重量がある個体が現れ始めた。

 魔力を吸い尽くして無力化するのではなく、力づくでゴーレムたちを押し返してきた。


「キィィヤァァァ!!」


「捨テナイデ……捨テナイデ……」


 他に分けたゴミの中からも怪物たちが発生し始めている。

 それらは今ゴーレムともみ合っているグループとは異なり、小型から中型の動物をかたどった姿をしている。

 グループごとに発達の過程が分けられているのは不幸中の幸いだ。

 合流させないようにしないと厄介なことになりそうだ。


「パラス、今からこの敵を怪儡(かいらい)アバンダンと呼ぶことにする。何とかして生き残るための方法を考えよう」


「……言われなくても」


 狂ったゴミ屋敷と化す前に早く対抗策を考えないと。

 この地下室で使える物は限られているが、それすらも怪物に占有されていく。

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