第10楽章 未来へのメロディライン
1週間耐久が続いている。
6日目。あと1日だ。
勉強以外には、腕を休めるカナデ。
マイクくんには、大声禁止だ。
ピアノ部員にピアノを独占されても気にならない。
いや、気には、なるけど。気にしないようにしてる。
無料スタジオ。
「レッツ ゴー レッツ ゴー」
6日目の、『楽園のうた』。
「パラ ダイ ス」
指が、緊張で震える。
「誰も 信じて いない」
マイクくんが歌ってる。
「神様 は いる」
カナデが電子ピアノを弾く。
「レッツ ゴー レッツ ゴー」
二人の視線が交差する。
「パラ ダイ ス」
マイクくんが、瞳を外さない。
おかげで、少し失敗してしまう。
電子ピアノの余韻。
終わりの気分は、静かな感動を呼ぶ。
第10楽章 未来へのメロディライン
1週間耐久挑戦企画。
再生回数は、やっぱり伸びないらしい。
でも、電子ピアノを、自由に使わせてもらえる。
他の歌にも挑戦したいとか思ってる。
もちろん、小学生レベルのものである。
「カナデちゃん。すごく、楽しんでるね」
「え、そう?わかる?」
「ピアノが、そうさせてくれるんだね。良かった」
マイクくんは、笑顔だ。
7日目。無料スタジオ。
「パラ ダイ ス」
歌が終わる。
挑戦企画も終了だ。
「これで、高校生カップルの挑戦は、完了ピア」
天使の着ぐるみのピアピアは、言う。
「これからは、新しい歌に挑戦していくのを見守るピア」
チャンネル登録の宣伝をして、録画も終了する。
音タノ市立オンプ高等学校。
早朝。ピアノ部。
「1週間やり遂げたね。カナデちゃん」
「そうね。やってやったわ」
マイクくんとカナデは、1週間耐久挑戦を成功させた。
「高校生カップルってところがうれしかったかな」
「え。そうだったの」
「また、キスしようね」
下心がある、マイクくん。
「え、ええ」
歌が好き。ピアノが好き。
二人は、小学生の頃。
『楽園のうた』とふれあった。
そして、音楽を奏でる喜びと同時に、大きな壁に邪魔されてきた。
どうせ、上手くなんてなれない。才能ゼロ。
夢なんて見るだけ無駄。バカみたい。
ネガティブモードになるカナデに、放送部から声がかかった。
“電子の妖精ピアピア”の挑戦企画を、見た。
放送部で、全校生徒に聴かせたい。
その日の昼。
カナデとマイクくんの高校生カップルの音楽。
高校の中で、全員が聴いた。
1日目の挑戦です。
『楽園のうた』。小学生の頃の音楽。
「レッツ ゴー レッツ ゴー」
流れたのは、歌うマイクくん。
「パラ ダイ ス」
つたない電子ピアノのカナデ。
「誰も 見たことの ない」
皆んな。おぼえてる。音楽を知った、あの時。
「神様 も 友達さ」
皆んな。下手だった。
「レッツ ゴー レッツ ゴー」
上手な子もいたっけ?
「パラ ダイ ス」
思い出した?
パチパチパチパチパチパチ…。
歌の終わりと同時に、皆んなが拍手をした。
ピアノ部の部員たちは、ボーッとするだけで何もしない。
他の全校生徒。教師たちは拍手を続けた。
「皆んな、アタシの音楽を聴いてくれたの?」
「カナデちゃん。この高校は、コンサートホールだよ」
カナデとマイクくんは、手を取り合う。
東音都。音タノ市。
音楽を楽しむ人が住んでいる。
多くは、聞く。
音を作る。歌う。奏でる。
その夢を叶える人は、一握り。
数えるほどしかいない。
でも、夢を追う、キミよ。
そばにいるから、笑顔のまま未来へ。共に行こう。




