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2ー5

『どこにも行くなよ』


 きゅんがとまりませんっ!!


 こちら、動画サイトの『野獣野郎共』の公式ページなのですが、遠藤さんのワイルドヴォイスが炸裂するこちら。


 贅沢にも、遠藤さんのセリフです。


 視聴者の方用へのサービスなのだそうです。


 きゅんです。こんなことを言われてしまったあかつきには、自分だけに言われたような錯覚をしても無理はありません。


 ですが、ストーカーがこれを観たがためにストーカーになってしまったのか、わたしには判断できません。


 そして、寝る前にこれを観てしまったがために、今夜もなかなか寝付けそうにありません。


 ゆうべ。寝ぼけた遠藤さんに足首をつかまれました。


 昔のカノジョさんと間違えられたわけですが、不覚にもドキドキしてしまいました。


 きっと、声が出ていたら、先のようなセリフが聞けたに違いありません。


 役得です。


 でも。勘違いさせることが仕事ですのに、真に受けられたらたまったもんじゃありません。


 そう考えますと、どこまでがファンとしてゆるされるのか、難しいところですね。


 でも、好きな人を困らせてしまうのは、きっと違うと思うのです。


 わたしの部屋でかくまっている間に、ストーカーの人が自分の行動に気づいて目が覚めてくれることを祈ります。


 そして、一日でも早く、遠藤しんの声が元のように戻りますように。


 そう思っていた矢先に、またしても遠藤さんのスマホが振動します。


 顔をしかめた遠藤さんが、しかたないなと言うように居間に歩いていきました。


 洗い物はおしまいです。


 わたしは、遠藤さんの電話の邪魔にならないよう、そばを通って部屋に向かうことにしました。


 そのわたしの腕を、遠藤さんが乱暴につかみました。


 そして、自分のスマホを見せつけます。


 わたしは首を傾げて液晶パネルに目を落としました。


 そこには、とんでもないことが書かれていました。


『野獣野郎共は、正式に解散することになったから、声明を出してくれ』


 あまりよことに、空いた口がふさがりません。


 遠藤さんは大学ノートに乱暴に書き連ねました。


【俺の声が出ない間に解散が決まったんだが、声明ってどう書けばいい?】


 そしてそのメールは、野獣野郎共のマネージャーさんからのものでした。


 声明と言われましても。


 わたしにはどう言ったものかさっぱりわけがわかりません。


     つづく

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