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よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
玖章 平安時代 後期 ~摂関政治の頂点と衰退 そして武士の時代へ~

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陸奥六郡を基盤にしていた安倍氏が反乱し、前九年の役が始まった

何とか今日も更新……。

結論だけ言えば、俺達はまた交代で現世生活を送ることにした。

さらに、今回はこれまでとは違い、宮中に出入りする立場となっている。


(……実例を示してくれると、参考になるな)

(まさか、化け狐が宮中生活を満喫しているとは……)


その実例とは、いつの間にか宮中で過ごしている金毛の化け狐だ。

多くの女房達に混じり、貴族の女として日々を送っている。

悪さをする気もない様で、そういう気質であるからか陰陽師達からも見逃されている彼女は、人の記憶を少しあやふやにする術で宮中に潜り込んだようだ。


俺達は、そのやり方を参考にすることにした。


(であるなら、小野家を利用すると良いかと)


かつて、ツクヨミとアマテラスが現世で過ごす為に関わった小野家。

今も続くこの家は、大きな発言力こそ無いものの、古くから続く家系の重さから、軽んじられることが無い。

その現在の当主にほんの少しだけ記憶を曖昧にする術をかけ、縁者として入り込むのだ。

実際、俺達とは早々に縁が深い家である為か、潜り込むのは簡単だった。

俺自身も相応の期間、この屋敷で下人頭として過ごしていたので、色々と勝手は知っている。

とはいえ、今度は下人ではなく、家人としての扱いになるのだが。


とは言え俺達の身分は、公卿のような完全な殿上人ではなく、彼らに仕える立ち位置だ。

完全な殿上人となると、政治的な判断を要求されてしまう。

あくまで現世で当たり障りなく生身の生活を送りたい俺達としては、それは避けたい。

民でもなく、公卿でもなく、その中間やや上寄りと言った所か。


こうして立ち位置を確保した俺達は、順番に現世で過ごすことにしたのだった。



もっとも、それでも世の中は動き続けている。

未だに藤原氏が摂関政治を維持し続ける中、少しずつ変化は始まっていた。


そしてある時、俺の耳にもその報せが飛び込んできたのだ。


「陸奥の国で、反乱が?」

「ああ、陸奥六郡を基盤にした土豪が、事を起こしたらしい。上の方は大騒ぎだぞ」


噂をするのは、蔵人所に詰める蔵人たちだ。

蔵人と言うのは、帝や大臣などの最上位貴族に仕える秘書のようなものだ。

彼らの補佐を務める蔵人は、後々そう言った役に就くことが多いエリートとも言っていい。

それだけに高い家格の子弟がつく役職で、その長たる蔵人頭にもなろうものなら、将来の栄達が約束されるとも言われるほど。


だからこそ、この蔵人所で交わされる噂は、朝廷の動きを知るには余りに都合の良い場所だった。

俺も、それを見込んでこの場所に居る。


もっとも、俺自身は蔵人ではない。

俺の今の役目は、雑色ぞうしきと呼ばれる蔵人のさらに一つ下、彼ら直属の現場スタッフのような役職だ。

宮中の雑務や伝令、警護や儀式の準備役などがその役割で、下級貴族や武士の生まれの者が就く。

時に蔵人に昇進することもある、宮中の実務の要。

そんな役割なので、蔵人所には多くの雑色が控えているのだ。


俺もその一人として、蔵人でも有力な者達の下で動いているのだが……。


(相変わらず、情報が早くて助かる。だが、陸奥の国か……となると、始まるのは、前九年の役か)


耳にした情報に、俺は事前に調べていた、この時代で起きうる出来事を思い出す。



前九年の役と言うのは、今耳にした通り、陸奥の国で起きた大きな反乱の事だ。

1051年から1062年にかけて起きた長期の内乱で、陸奥六郡を基盤にしていた安倍氏が原因となっている。

朝廷への徴税や国司権威に反発したことが発端だった。

朝廷は国衙兵や既存の受領では抑えきれないと判断し、武家である源頼義を陸奥守兼鎮守府将軍に任じ討伐を命じるのだ。

が、本州の北の端と言う立地や、安倍氏が当初は即帰順したこともあり長期化。

そしてある事件の後に、複数の合戦の末、安倍氏は破れ、蝦夷系統の豪族である、清原氏が陸奥の国を治める事になる……そんな流れだったはずだ。


そして、この内乱は後の世に大きな意味を持つ。

源氏の源頼義が活躍し名声を高めた事で、東国での軍事的基盤と名声を確立し、後の武士台頭・鎌倉幕府成立への土壌が形成されたのだ。

更に、清原氏の台頭も、この後大きな意味を持つことになる。



(……もっとも、現状だとまだ始まったばかりと言った所かな?)


なにしろ、およそ十年程度続くような乱だ。

その将方が入ってきた段階では、その初期段階。

まだ、朝廷は国司に命じて何とか鎮圧させようとしている時期のようだ。

源氏を派遣するという話もまだまだ先らしい。


(……それに、事が起きているのはあくまで陸奥の国での事。都で過ごす分には、気にすることも無いか)


現状俺とハルカとアマタが生身で過ごしているが、乱がダンジョンに関わってくるようなら、ツクヨミ達から俺に連絡がある筈だ。

連絡がまだ無い以上、ダンジョンにも影響が無い訳で、俺達が乱をどうこうする必要もない。


(……ただ、雑色としての仕事は増えるか)


問題は、そのような乱が起きた以上、宮中も慌ただしくなるのが確実だという事だ。



……などと、高をくくっていたのが、昨日の事。

だが、今日になってさらに続報が入って来たのだ。


「鬼切部の戦いにて、国司、藤原登任殿、討ち死に!」

「何だと!?」

「どういう事だ!?」


朝廷に乱が起きたという知らせが入ったのは昨日だが、本来はもっと早くに起きていたらしい。

そして国司も自分の統治下での乱を朝廷に知らせて、評価を下げたくなかったのか、長らく隠蔽していたようだ。

しかし、直接の合戦で国司が討たれたため、その情報統制が崩れて、ようやく朝廷にも状況が届き始めた、という事のようだ。


(……それとも、安倍氏側も朝廷に情報を知らせないように動いたかな?)


乱を起こした安倍氏の長は、安倍頼良。

中々に戦上手の様で、国司の兵を翻弄して国司を討ち取る所まで行ったようだ。

そしてこの安倍氏も、蝦夷の系統の豪族だ。


(蝦夷と言うと、もしかして阿弖流為に教えを受けたか?)


人の枠を超えてしまい、未だ奥州の山々で過ごしているはずの阿弖流為。

どうも奥州の人々の前に現れては、指導したりしているらしいので、安倍頼良もその一人と言う可能性はあるのかもしれない。


まあ、それは今は重要じゃない。

問題は、国司の軍が破れたという事。

朝廷も事態を重く見て、すぐさま武士を派遣することにしたようだ。

そして、その軍の頭領、陸奥守兼鎮守府将軍に任命されたのは、やはり源氏の源頼義だった。


(……貫禄があるな。あれが頼義か)


陸奥守に任じられる頼義は、摂津国・河内国に本拠を置く、河内源氏の頭領だ。

父は平忠常の乱を平定した名将・源頼信。

右兵衛尉・左馬権頭など武官ポストを経験し、受領として地方行政にも通じているという、こういう地方の乱を収めるにはもってこいの人材と言えた。


(源氏は、清和源氏を中心として支流が多いな……)


そして、この河内源氏こそ、後々の世で武家の棟梁としての道を歩んでいく家系になる。


(その実質的な契機が、この前九年の役になる……少し、様子をじっくり見たいな)


この乱の流れについては、事前に大まかなものを調べているが、それはそれとして詳しい状況を知りたくもあった。


(……ついて行くか?)


今は雑色としての身分だが、今回宮中に潜り込んだように、陸奥の国に向かう兵の中に紛れ込む事も可能だろう。

その上で、この乱で何が起きたのか間近で観察したい気持ちが湧き上がる。


(……いや、後で調べるだけでいいか)


だが、今現世で過ごしているハルカとアマタの顔が浮かび、俺は思いとどまった。

今回の現世でも、俺達は夫婦とその子という形で過ごしている。

それをわざわざ興味本位で崩してしまう気になれなかったのだ。


(……ツクヨミに連絡を取るか)


後で確認する為に、ツクヨミには乱の状況を詳細に記録するよう頼むことを決心しつつ、俺は慌ただしい宮中を、他の者と同じように走り回る。

その慌ただしさは、来るべき武士の時代の予兆のように響くのだった。

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