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よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
間章5 ~大平安魔人伝~

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発端は獄卒から

(う~ん、どうしたモノかな……)

(おとーさん?)

(あら、アナタ?何を悩んでいるの?)


これは、平将門の様子を見ていた時のことだ。

俺が少しばかり悩んでいると、ハルカとアマタがやって来た。

遥かは相変わらず若々しいが、同時にアマタも生まれてから随分と経つのに幼い口調が抜けきっていない。

一度、小野家の下人として幼少から老年まで過ごし、老成したはずなのだが……。

そもそもからして、本体が魔力の中にいるためか、精神の根本はあまり変わらないのかもしれない。


それはともかく、二人に尋ねられた俺は、ある光景を映しだした。


(それなんだがな……この京の地下の空間をどうにかした方がいいと思ってな)


そこは、京の地下に広がる大空洞だ。

小野篁とその下人──つまり、ツクヨミと俺が崩れないように彼方此方補強した、あの空洞。

暗闇の中、俺達が立てた補強用の柱が立ち並び、まるで生前でニュースなどで見た首都圏外郭放水路のようだ。

魔力によって建てた柱は今も濃密な魔力を帯びていて、そこから染み出した魔力が、仄かな光としてこの空間を照らしていた。

中々に見どころのある光景だが、問題はこの魔力だ。


(……まさか、平将門が超人的な力を得た理由が、これだったとはな……)


そう、坂東八州を巻き込んだ平将門の乱の様子は、俺も一通り観察していた。

そして、将門の凄まじい力も。

特に、刀で切りつけられても傷一つ負わない金属属性の肌には驚かされたのだ。

将門が頻繁にダンジョンに潜っていた事は知っていたが、そんな力を持つのは想定外で、俺はその源を探り、そして知った。

将門がどのように力を手に入れたのかを。


(将門が此処に迷い込んであんな力を手に入れたのは、想定外だったんだ)

(そうなのアナタ? 海の向こうで作った地下の世界みたいに気付くのかと思ったわ)

(……いや、この地下空洞は、俺が作った訳じゃないからな……)


実際、壷中天の術で作った各地の地下空洞は、一歩誰かが入りでもしたら直ぐに判るように設定済みだ。

地震などで入り込む道が出来たりすることはあるが、今では直ぐに対応できるようになっている。

少なくとも、今それら海外全般の対応を任せているイザナギ・イザナミ夫婦の元に、直ぐ報せは入るだろう。


国内で言えば、富士の地下などはアマタに今は任せている。

小規模とは言え世界の管理だ。

いい経験になるだろう。


だが、それらの管理が行き届くのは、あくまで俺達が作った疑似的な地下世界に限る。

元々自然に出来た地下空間の場合、管理は殆どできない状態だ。

そもそも、未だに日本の地下の全体像を把握できていない状態なのだから。


そういった理由もあって、京の地下の大空洞は、崩落しないように補強だけして、後は入り口だけ封じていたのだ。

しかし、日本は地震大国。ちょっとした地震によって、この大空洞への道が開いてしまい、それを見つけたのがよりにもよって平将門だったのだから……。


(これも、魔力の誘導か?)


等と思ってしまったのも、無理ない事だと思う。


……それはともかく。

平将門があれ程の力を示してしまった以上、今後も似たような事例が起きないとも限らない。

その為、何らかの対策が必要だと考えていたのだ。


(そういう事なのね)

(でも、おとーさんたちが柱を立てていた時には、気付かなかったの?)

(柱を立てていた俺とツクヨミは、元から魔力で出来た写し身だから、判らなかったんだ)


俺達の場合、柱を立てる事によって、魔力を振りまく側の方だ。

やはり、気付けるものではない。


(そんなわけで、迷い込んで来た人間が長く滞在して魔力を取り込まないようにしたいんだよ)

(なるほど~)


頷くアマタ。

ハルカと共に、状況は理解できたようだ。

すると、ハルカが何か思いついたらしい。


(それなら、アナタ。見張りを置いたらどうかしら?)

(見張り?)

(そう。他の地下でも、住人は居るのだし、そこに住まう何かに管理してもらうの)


ハルカが言うように、自然発生した地下空間に生息する生き物は居る。

以前確認した、信州地下の無数の空洞に居た人々がいい例だろう。

勿論、全ての地下空間がそうではない。何も住んでいない空間もある。

そして京都の地下の場合、何も居ない側だ。

だから、将門も中で長く過ごせていた面もある。


そして、俺ならばそう言った空間に新たな住人を作り出すことは、可能だ。


(たしかに、一つの手かもしれないな。だが、どんな存在を作り出すか、だな)

(あら、そこが問題?)

(この空間を管理するだけの存在となるとな)


ダンジョンに関係なく存在した地下空間に住まわせて、迷い込んだ人間を追い出すとなると、ある程度の知性が必要だ。

京都の地下は広大なので、ある程度の個体数も必要となるだろう。

そう考えると、一つの種族を生み出す様なものだ。

下手な種族を生み出そうものなら、後々に禍根を残しかねない。

新たにアマタのような存在を生み出しても良いのだろうが、何となくしっくりこないのもある。


(……出来れば、迷い込んだ人間が見て、地下に居る事に違和感を持たないような存在が望ましいな)


そして、その姿を見たら逃げ出す様な……。


(おとーさん、それなら、アレがいいんじゃない?)

(……アレ?)

(うん、篁様……じゃなかった。ツクヨミお兄ちゃんの噂の奴)

(ん~? ……あ、もしかして、小野篁が閻魔に仕えていたという、あれか?)

(そう、それ。あの世っぽい住人が居たらいいんじゃないかなって)


小野篁にまつわる有名な逸話に、鳥部野にある六道珍皇寺の井戸から冥府に降り、閻魔大王に仕えていたというものがある。

この世界の場合、問題の地下空間の補強作業の為に度々地下に向かったことから来ているのだが……。


(なるほど、それも一つの手か)


少なくとも、人々は都の地下に冥府があると信じている。

だったら、そこに住まう住人として設定するべきは、それにちなんだものが良いという事になるだろう。


俺は、ダンジョンの機能を立ち上げた。

元々、あの地下空間には魔力が満ちている。

あれ程の濃度なら、そこに住まう住人──つまり、モンスターを作り出しても、問題なく維持できるだろう。

そして、冥府に住まう者となると、それは獄卒に他ならない。

つまり……。


(わあ、すごく強そう!)


俺が生み出したモノを見て、アマタが歓声を上げる。

生み出されたのは、鬼だ。

所謂、地獄の獄卒たる鬼たち。

赤鬼や青鬼など肌色の違う者や、牛や馬の頭を持つ牛頭鬼や馬頭鬼など。


それらが、仄かな明かりに照らされた地下空間を闊歩していた。

下手に僅かな光に照らされたせいで、その姿は何とも恐ろしく、不気味だ。


(……うん、コレは普通見たら逃げ出すだろうな)


メンタルが鋼な強者なら、逆に挑んだりもするかもしれないが、それは外れ値の筈。

それ程恐ろしい姿をしていた。


(あの獄卒たちには、あの空間に迷い込んだ者を察知して、追いだすように条件付けしてある)

(本当だ~、何か探すように動き回っているね)

(あそこを支える柱のメンテナンスを出来る力も持たせたから、今後は完全に任せられるはずだな)


その気性は荒くない。

そもそもこの地下空間の管理者として作り出したのだ。

迷い込んだ者を追い出しはするものの、その見た目で怖がらせて追い払うだけ。


(ここに無駄に充満している魔力も、この獄卒たちが吸収するだろうから、将門のような力を手にするものは居なくなるだろうな)


そしてもう一つ、この獄卒たちが此処で過ごすことで、この空間に充満してしまった魔力を吸収させる目的もあった。

魔力の塊に近い柱からは今後も魔力が広がっていくだろうが、その殆どを獄卒が吸収してしまえば、迷い込んだ人間が取り込んでも問題ない程度の濃度になる筈だ。



こうして、都の地下には獄卒が住まう事になった。

しかし、それが後に様々な出来事を呼ぶことを、俺は気付かなかったのだ。


如何にも強そうな見た目であるために、スサノオ達が彼らを鍛えてしまったり、気性が大人しい筈の彼らの中から、凶暴な者が現れて地上へと逃げ出したり。


ひいてはそれが、都を揺るがす大事件になって行くことを、俺はまだ知らない。

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