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第20話 vs mysterious monster -中編

更新が滞って誠に申し訳ありません。



イアさんと犬山は魔獣の方へと駆け出し、あっという間に俺と凛堂だけがこの場に残った。

さっきの作戦通りだ。

犬山とイアさんが魔獣と正面から戦い、俺と凛堂が後方支援。


「よし、犬山さんの呪詛の解除もしたし、私も行こっか。」


「あ、あぁ。そうだな。」


凛堂に連れられ俺も走りだす。


走りながら状況整理を試みる。

とにかく同じ場所に居続けるのは危険だ。俺たちもあいつを迎撃しやすいポジションに陣取るべきだろう。幸いなことにこの辺りは比較的被害が大きくない範囲で、建物も残っている。あいつを隠れて狙うための障害物として利用できるものが多い。

まずあいつと距離を取らないと。


だけど、俺は魔法を使えない。つまり、遠距離からあいつにダメージを負わせる術がない。

だから今は凛堂だけが頼りだ。


そういえば、イアさんにこのこと言ってなかったな。

だから、俺を遠距離担当にしたんだろう。

魔法が使えないんだから、俺は近距離戦闘を担当するべきだ。というか、そうするしか俺の使い道がない。

クソ、恥を忍んででもちゃんと言うべきだった。後悔先に立たずとはこのことだ。

もう今は後悔している時じゃない。


なぜならもう戦闘は始まっているのだから。



―――――――――――――――



「ヴァアアアッァァッァアアァァアァァァッァ!!」


魔獣の咆吼が響く。

思わず振り向く。どうやらあいつが自らに接近してくる二人に気付いたようだ。


見れば見るほど不気味な魔獣だ。

あいつは一体何なんだろう。どこから来たのか?目的は何なのか?町を破壊した理由は?


何も分からない。


そうだ。俺たちはまだこいつについて何も知らないんだ。

会ったばかりのイアさんはともかく、犬山の戦い方も詳しく知らないが、二人で大丈夫なのだろうか?

間違いなく俺より強いことはわかるけれど、不安がぬぐいきれない。


不安な気持ちを押し殺しつつ、戦況を確認する。


二人は先頭に犬山、そしてイアさんが犬山のやや後ろに続く形で魔獣に向かっている。

二人ともすごい速さだ。魔法の恩恵か、もしくはこの世界での訓練のおかげなのか、今の二人の速さなら人類最速記録も軽々更新してしまうだろう。


だが、魔獣はそんな二人の速さに何の反応も示さず、ただ魔剣を構えるだけだ。

その様子を見て、イアさんが方向転換して犬山と離れる。

回避行動に移ったのだろう。だが、犬山はそのまま魔獣に向かい続けている。


魔獣は犬山に狙いを定めたのか、そのまま燃える剣を振るう。

魔剣が荒々しい爆炎を纏いながら犬山に迫る。


風魔法・疾風ブレスドライブ!!」


犬山が魔法を使う。風が犬山の身を包み始める。

あれは確か藤林も使っていた魔法だ!

犬山の体を包むように風が収束し始める。風を纏った犬山がさらに加速する。


だが、魔獣による強烈な一撃が犬山を襲う。

魔獣が魔剣を振り下ろした。


次の瞬間には爆発が起こり、犬山の姿が完全にかき消えてしまった。


「犬山!!!」


思わず叫ぶ。

でも、俺の心配は杞憂だった。


パキン


大爆発の余韻が残る中、その音だけがその場によく響いた。何かがひび割れる音。その音源は――――空だ。

魔獣も気付いたのか、空を見上げる。


そこにいたのは、一つの氷塊。そしてその氷塊に忍者のように張り付いている、犬山だ。


風魔法・鎌鼬ブレスカッター


だが、それを認識した瞬間に――――――


バキン!!


―――――再び彼女の姿は消えた。


「ウ゛ガア゛ア゛ァァァア!!」


今度は魔獣の悲鳴が響く番だった。魔獣には切り傷が刻まれていた。


俺が気付いたころには、すでに犬山は地面に着地して2本の小刀を逆手持ちで構えていた。


氷魔法・大槌アイスハンマー!!」


別の声が響く。

その声が聞こえた瞬間、巨大な氷の塊が魔獣に激突した。

犬山の攻撃に絶叫をあげていた魔獸にとってみれば、まるでトラックに轢かれたようなものだっただろう。

だが、そのダメージはトラックの比にならないだろう。


氷の塊に衝突された魔獸は、傷口から腐りかけの血を撒き散らしながら豪快に吹っ飛んでいき、そのまま家の瓦礫に突っ込んでいった。


「な!?」


今の声からして明らかにイアさんの攻撃だ。あのイアさんだ。それは間違いない。

だけど、その魔法はあの綺麗で可憐なイアさんとは結びつかないような……………何というか………とても荒々しいものだった。


イアさんが顕現させた氷の塊は巨大な槌、ハンマーだった。

そのハンマーがただのハンマーじゃなかった。日曜大工とかで使うような釘を打つヤツじゃなくて、色々と装飾がされたヤツだった。

問題はその装飾だ。

刺とか骸骨みたいなのがたくさん付いてた。

………………………なんかストレス溜まってるんだろうか………。


というか、この状況をみて俺は


「なんだこれ………………」


と、淡白な感想しか言えなかった。

突然現れた謎の魔獸(しかもかなり強そう)、そしてそいつを圧倒する二人の女子。


一体誰がこの展開を予想できただろうか。

二人ともたぶん俺より腕細いのに、総合的な戦力は俺とは天と地の差があるんだろうな。


「二人とも強いな……………。」


犬山は多少性格に難ありと言っても勇者な訳だし、イアさんもこの超危険な事件に抜擢されるぐらいだから、強いんだろうなって思ってたけど、ここまでとは思ってなかったなぁ。


「………………………そうだね。」


俺のふとした感想に凜堂が返事をした。

けど、なんだか凜堂の様子がおかしい。


「……?どうした?」


「別に。何でもない。」


どうしたんだろう?

何か……凜堂の機嫌が悪いような………気がする。

でも何でだろ?俺なんかしたかな?


「え~っと………」


「ケー君こそどーしたの?別に私怒ってないし、機嫌悪いわけでもないから言いたいことはっきり言っていいよ。うん、全然気にしてないもん。あの二人に嫉妬してるわけじゃないもん。」


いや、もう答え言ってんじゃん。

つーか、しょーがないだろ。素直にすごく強いと思うし。


………………………………………………………………………………………………仕方ない。


「え~と、い、犬山が何したか分かんなかったな~。お、教えてほしいな~。」


「…………………………………本当?」


「本当本当。」


「私に教えてほしいの?」


「そうそう。」


「私だけが頼り?」


いきなり答えづらい質問になったな!!


「え、え~と、それは…………………」


「ねぇ、どうなの?」


「ま、まぁ……それは…うん。」


「エヘヘヘ///もう!しょうがないな~。やっぱりケー君には私がいないとダメなんだから。」


ふぅ、なんとか機嫌直してくれたか。

俺この村でこんなんばっかだな。


「さっきの犬山さんの攻撃はただの風魔法だよ。風魔法・疾風ブレスドライブで加速して、爆発を躱しつつ氷を足場にしてすごい速さで連続斬り。たぶん、昨日の見回りであの小刀拾ったんだね。それだけだよ。」


「マジか。俺には何にも見えなかったぞ。というか、氷って……」


「うん。イアさんが作ったんだね。」


「あの二人、いつの間に打ち合わせしたんだ?」


「どうだろ?もしかしたら即興かもよ。」


即興であの完成度かよ。いや、さすがにそれはない………よな?

いや、でも犬山はバレー部だったから、案外チームプレイが得意なのかも………。


というか、さらっと解説してくれた凛堂にもあれが見えてたってことか。


「なんにせよ、案外楽に……」


そのとき、崩れた家から巨大な火柱が上がった。

あれはさっき魔獣が突っ込んでいった家だ。

ということは、つまり


「そう簡単にはいかないよね……。」


ヤツはまだ健在のようだ。


激しい火柱がその勢いを弱めると、その中には案の定ヤツがいた。

魔獣はまだ生きている。

犬山とイアさんはもう武器を構えてる。


「grrrrrrrrrrrrr…………」


魔獣はうなり声を上げながら、犬山とイアさんを見ている。


風魔法・散弾ブレスショット


ここで魔獣と距離をとっていた凛堂が魔法を放つ。三発の風の弾丸。それらは文字通り疾風のごとくスピードで魔獣に迫る。

あの二人の戦いに夢中で忘れていたが、これが俺たちの役割だった。あの攻撃を受けてまだ動ける魔獣に呆然としている場合じゃないのだ。


魔獣はまだこっちを一度も見ていない。つまり、俺たちの位置を把握できていない。

このチャンスを逃す手はない。


だが、当たらない。

凛堂の魔法は確かに魔獣を打ち抜かんと放たれた。

あの魔獣はそれを躱したのだ。最小限の動きで、何の焦燥もなく。

魔獣はその場からほとんど動くことなく、首をかしげるなどの動きだけで的確に弾丸を回避したのだ。


「何だよ……今の……気付かれてたのか……?」


「ううん、たぶん本能だと思う。戦士の勘………みたいな……」


魔獣はそのまま凛堂の狙撃など無かったように犬山とイアさんに突撃していった。


「な!?ガン無視かよ!?」


「アンデッドには知性がないから。だから普通は作戦とか考えないで、ただ目の前のものを破壊するだけなの。私たちを狙うよりも近くの二人を襲うことしか考えてないんだよ。脳のリミッターが外れてるから大抵は生きてるときよりパワーがあるんだけど、時々昔の癖とかが残ってる場合があって、たぶんそれのおかげで躱せたんだよ。」


「あいつが生きてるとき………?」


「多分だけど…………。でも、かなり強いと思う。生前も相当……」


ヤバいな、あいつ。生前の戦闘技術と強力なパワーを持ってるのかよ。


そうだ!二人は!?


見ると、犬山とイアさんもすでに魔獣と激しい斬り合いを展開している。

だが、さっきまでとはまるで動きが違う。魔獣は二人と互角………いや、それ以上の戦いをしている。

めちゃくちゃに魔剣を振り回しているようにも見えるが、その剣裁きがもはや巧みの域に達している。


氷魔法・散弾アイスショット!!」


イアさんが魔法を放つ。

だが、その魔法は魔獣に届くことなく蒸発した。

魔獣が魔剣を振るったのだ。


魔剣の一振りからあふれた炎は氷もろともイアさんに襲いかかった。


「くっ!」


短い悲鳴を上げ、イアさんが炎に包まれた。

だがそれと同時に、魔獣がイアさんに気を取られている隙に背後から犬山が迫る。


「うあぁぁぁぁぁ!!!」


雄叫びを挙げながら犬山の刃がヤツのうなじへ振り下ろされた。

しかし、魔獣は犬山の腕を掴みこの攻撃を止め、そのまま犬山を地面にたたきつけた。


「かはっ――――」


その衝撃で手が滑ったのか、魔獣は犬山を離し犬山は追撃を逃れることができた。

だが、先程の一撃はモロに喰らっていた。運が悪ければ骨折すらあり得る。


やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい


この一瞬でかなりマズい状況になった。

このままだと、本当にヤバい!


「何か弱点とかないのか!?」


焦った俺は声を荒げながら凛堂に尋ねた。


「アンデッドは皆頭を潰せば動かなくなって死体に戻るの。首をはねても一緒。飛び道具もさっきみたいに二人に近づいてたらむやみに撃てないし………。後は…………聖属性に弱い。」


「……聖属性か……。」


俺と凛堂はそれが使えない。なら…


「ハァ…ハァ…ハァ…」


「チッ……………うざったいな、あいつ……」


イアさんと犬山が魔獣といったん距離を取る。

二人とも致命傷は避けているようだが、息が荒くなっている。


「二人は聖属性は使えるのか?」


「たぶん使えないと思う。」


「どうして?」


「アンデッドが聖属性に弱いのは、冒険者なら常識なの。なのにそれをしないってことは、たぶん自分が聖属性魔法を使えないんだと思う。それか使えてもあいつを殺せる威力がないとか……」


じゃあ、あいつの頭を狙うしかないってことかよ。

だけど、かなり難しい。犬山とイアさんの二人がかりで接近戦をしてもあいつにかなわない。遠距離からの攻撃も防がれる。

その上、あいつ自身の戦闘力と魔剣が厄介すぎる。

せめて魔剣だけでもどうにかしないと…。

でも、どうすれば……………。


「ねぇ………………ケー君。」


焦りと不安と恐怖で頭がぐちゃぐちゃになりかけていた俺に凛堂が声をかけてきた。


「私ね……作戦があるの。これならあいつを倒せるかも………」



読んでくださりありがとうございます。

次回の更新は1月16日までにできればいいなと思っておりますが、一ヶ月後ぐらいになるかもしれません。

これからもこの作品をよろしくお願いします。

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