①②⑥
リュカと盛り上がり、彼もマクソンスと同じように「本を持って兄上のところに行くよ!」と、行って機嫌良く去っていく。
(なんて恐ろしい男なの……! あっという間にマクソンスお兄様とリュカお兄様と仲良くなってしまうなんて)
キャンディスの両側でぴったりと張り付いているアルチュールとミュリエル。
こうして二人で並んでいると兄妹のように見えてしまう。
十六歳になるとルイーズが現れるのを知っているが彼女よりもよっぽど双子のようだ。
(まさか、ね……)
キャンディスが考えている間にジョルジュはどこからかお菓子を取り出す。
「ダルトネスト王国でも人気のお土産に持ってきたんだけど、アルチュール殿下はどうでしょうか?」
「……!」
ジョルジュにそう言われたアルチュールはお菓子に興味津々である。
しかしハッとした後にジョルジュをキッと睨みつけた。
「あなたにキャンディスお姉様はわたしませんから!」
「……!」
アルチュールがそう思ってくれるのは嬉しいが、ジョルジュに直接言ってしまうところがよくないため口を塞ぐ。
アルチュールがそう言ったからかミュリエルはキャンディスの前に仁王立ちして両手を広げているではないか。
「アルチュール、ダメよ! ミュリエルもよ」
「……!」
「申し訳ありません。ジョルジュ殿下」
キャンディスがジョルジュに謝罪をしてアルチュールを制するが納得できないようだ。
片手だけのため、すぐに抜け出したアルチュールは信じられないことを口にする。
「でも、キャンディスお姉様はジョルジュ殿下が好きじゃないでしょう?」
「……っ!?」
「いつも嫌そうな顔をしてますからっ!」
最近はキャンディスを守ることにこだわっているアルチュールとミュリエル。
遊びの延長なのだろうが、これは本当にまずいではないだろうか。
ジョルジュの顔が強張っていくのがわかった。
「いや……あのですね。これは……っ」
「僕は随分と嫌われているようですね。何か理由があるなら教えてください」
「……えっと」
ジョルジュの問いかけに焦っていたキャンディスだったが、ふと彼がここまでしてキャンディスに近づく理由を考えていた。
ジョルジュは以前からキャンディスに理不尽な命令をされても婚約を続けていた。
それは何かメリットや目的があるからではないだろうか。
(今だって同じ、わたくしに何か利用価値があるから……ジョルジュは近づいてくるのよね)
目指すはいい皇女、以前と同じ道を辿らないためにはジョルジュを婚約者にすることは避けたい。
これはアルチュールによって与えられたいい機会だとキャンディスは唇を開く。
「ジョルジュ殿はわたくしに何を求めているのかしら」
「……!」
今度はジョルジュがキャンディスの言葉に目を見開いた。
サファイアのような瞳にキャンディスの真剣な表情が映し出されている。
「残念ながらわたくしはあなたに好意を持つことはありませんわ。利用できると思ったら大間違いですわよ?」
これ以上、ジョルジュに期待をさせても面倒だ。
キャンディスの勘違いかもしれないが、ジョルジュが期待しているのなら申し訳ないのと、無駄なためハッキリと断りたいたいと思っていた。
それに手紙のやり取りを続けるのもめんどくさい。
ジョルジュはいつもと同じように笑って誤魔化すのかと思いきや……。
「そのようなつもりはなかったのですが……僕はキャンディス皇女様を怒らすようなことをしてしまったのでしょうか?」
「……いいえ、特には」
むしろキャンディスの方が怒らせることばかりしているのではないだろうか。
「僕はそんなに魅力がありませんでしょうか?」
輝く銀色の髪と蒼瞳。普通の令嬢ならば博識で剣の腕も確かなのだろう。
ジョルジュの顔しか見ていないキャンディスにはわからなかったが、魅力的なのではないだろうさ。
(ジョルジュは権力さえあれば誰だっていいのよ。ルイーズを選んでわたくしを見捨てた。あの時はわたくしが悪かったのかもしれないけれど……なんかムカつくもの!)
ただの個人的な恨みである。キャンディスより優れていることも気にいらない。
「たとえば、わたくしよりもお父様に可愛がられている第二皇女が現れたとしましょう。そうしたらジョルジュ殿下はどうします?」
「……それは」
ジョルジュはキャンディスの質問が予想外だったのだろう。
ピタリと動きを止めたことで、やはりキャンディスの予想通りだと悟る。
(やっぱりそうだわ……! ルイーズが現れたらジョルジュは絶対に裏切るに決まっている。その未来をわたくしは知っているんだもの!)
キャンディスが自分の選択が正しかったのだと、頷いていた時だった。
「あの……」
「まだ何か?」
「いえ……ですが僕はキャンディス皇女以上に皇帝陛下に愛される人が現れるとは思えないのですが……」
「…………はい?」
予想もしない返答にキャンディスは目をこれでもかと目を見張る。




