①①④
子どもたちを探していると、庭ではマクソンスと剣を振る神父がゴロツキたちと戦っているではないか。
マクソンスも十歳でゴロツキを相手にできるとはさすがというべきか。
(ゴロツキは五人……圧倒的に不利じゃない)
そんな中、神父も子どもたちやマクソンスを守りながら戦っている。
明らかに動きずらそうなところを見るに注意が散漫して戦いずらいのだろう。
(マクソンスお兄様と神父様は大丈夫そうね。まずは子どもたちを逃さないと……)
キャンディスは状況を把握するためにあたりを見回す。
戦っている奥ではキャンディスが持ってきた荷物、つまり金目のものを見ながらニヤニヤしているゴロツキの姿があった。
(これはあななたちにあげたものではないのにっ! 許さなくってよ)
キャンディスはギリギリと歯軋りをしながらも見つからないように進んでいく。
子どもの体は小さくて動きやすい。隙を見て神父のうしろ、柱の影て震える子どもたちの方へと向かう。
「しっ……! 静かに。みんな丘の上に逃げているわ。あなたたちは二人でそこに向かって」
「わ、わかった!」
「ありがとう、お姉ちゃん……」
残りはあと四人となった。
しかも三人はゴロツキたちのすぐ後ろに人質のような形で囲まれている。
(あとわたくしの袋に群がる近くに三人の後ろにいるわ……!)
震えながら固まる三人は泣き噦っている。
マクソンスに戦おうと元気に言っていた三人の男の子たちだ。
しかしミュリエルの姿が見当たらない。
(ミュリエルはどこ!? もう逃げたのかしら……)
キャンディスはダガーを持ちながらこっそりと近づいていく。
ジェスチャーでなんとかアピールしようとするも、恐怖に震えてまったく気付いてくれない。
だが、一人はキャンディスに気づいてくれたようだ。
手招きすると、一人の男の子は泣いている男の子たちに声を掛けている。
それから袋の中の金品に釣られているうちにと、こちらへと促す。
(よかった……! なんとか助け出せるわ)
神父はいつ子どもたちに標的が向かわないか気になって仕方ない様子だったが、子どもたちに近づくキャンディスに気がついたのだろう。
これでもかと目を見開いている神父を見て、キャンディスは唇に人差し指を当てる。
神父の視線の先に気がついてしまったのだろう。
ゴロツキの一人、リーダー格の男性が神父の剣を振り払うと大声を上げる。
「──おいっガキに逃げられているぞ! 何やってんだ」
「……ッ、こっちに来い!」
ゴロツキの三人は子どもたちを捕まえて髪を掴む。
髪を引き上げると首元にナイフを突きつける。
「痛いよぉ!」
「うわああああ! たずげでぇぇえ」
悲痛な叫び声に目を見開いた。
キャンディスもこうして簡単に命を奪っていたことを思い出す。
(わたくしも……こうやってすぐに命を奪っていた)
草の影に隠れながらも胸元で手のひらを握る。
こんなにも胸が苦しいのは何故だろうか。
まるで自身の行動を責め立てられているような気がしていた。
心臓がありえないほどに音を立てる。
(……今はこんなことを考えている場合じゃないわ。今、動けるのはわたくしだけ。わたくしが彼らを救わないと!)
だが、今は後悔している時間はない。
幸いギーグ神父以外はキャンディスの存在に気がついていないようだ。
子どもたちを人質に取り、神父とマクソンスに剣を下ろすように要求しているではないか。
ギーグ神父はすぐに剣を地面に突き立てる。そして両手をあげて子どもたちの解放を訴える。
「卑怯だぞ……ッ」
「貴族の坊ちゃんかぁ? いいか、覚えておけ……卑怯でもなんでも勝てばいいんだよ!」
「……くっ」
マクソンスも剣を地面に置いてしまう。
ゴロツキが神父を殴り飛ばした。ゴツリと痛々しい音が耳に届く。
ギーグ神父の体が地面に倒れて、子どもたちが更に大きな声で泣き声を上げる。
キャンディスの方に視線を送るギーグ神父が何かを訴えかけるように子どもたちをチラリと見た。
(隙を作れってことかしら……)
キャンディスは神父の意図を読み取り、大きく頷いてから合図を送る。
「ギャアギャアうるせぇなぁっ!」
「黙らねぇとブッ殺すぞ……っ」
ゴロツキが子どもたちを腕を振り上げた時だった。
(──今よっ!)
キャンディスはダガーの鞘を投げ捨てて、体を低くして男たちに近づいていく。
死角に入り込んだ後にキャンディスは両手を振り上げて、ゴロツキの一人の男の腕を突き刺した。
「──ギャアアアアアッ」
けたたましい悲鳴が響いた。
男は刺された腕を押さえながら倒れてしまった。
「な、なんだ!?」
「おいっ、何してる!」
男たちは草陰にいるキャンディスが見えないのだろう。
彼らは混乱しつつ辺りをキョロキョロと見回している。
(やっぱりこの腕力で切り落とすのは無理ね……)




