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【11/12 コミック1巻発売中】悪の皇女はもう誰も殺さない  作者: やきいもほくほく
七章 皇女、大奮闘

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①⓪⑥

しかし荷物が重いからか思ったようにスピードが出ない。

護衛なのか従者なのかはわからないが、キャンディスに声を掛けてくるのだが、あまりにも必死なキャンディスにどうすべきか迷っているのだろう。

キャンディスは後ろを振り返る余裕もなく、キャンディスは記憶を辿って裏口へと走っていく。

商人に頼んでいたものを取りに行く際に何度か侍女と行ったことがある。

待てなかったからだ。そして時間通りに来た商人を『遅い』という理由で罰したことがある。

ホワイト宮殿を抜けて、記憶通りに入り口へと向かう。


(もう少しで出口よ……!)


キャンディスは裏口にいる馬車を見つけて目を見開いた。


(あの馬車に乗って、王都から離れられるわ……!)


キャンディスは馬車の御者に声をかける。



「ちょっと待って……! わたくしも乗せてちょうだいっ」


「キ、キャンディス皇女様っ!?」



御者もキャンディスの姿を見て驚いているが、キャンディスは荷物を持ち上げながら無理やり馬車のステップによじ登る。


(使えない御者ね……! わたくしが馬車に乗りたいって言っているのにっ)


半ば苛立ちながらもキャンディスら勝手に馬車に乗り込んだ。

馬車を用意する方法なんて知らない。

いつもは命令すれば何だって周りが動いてくれたからだ。

けれどホワイト宮殿にいたらキャンディスはヴァロンタンに殺されてしまうかもしれない。


(逃げられるならどこだっていいわよ! ここから離れないとっ)


キャンディスが馬車に乗り込むと、後ろから聞こえる泣き声。

振り返ると、そこにはキャンディスの名前を呼びながら大号泣しているアルチュールの姿があった。



「ギャア、ジィ、おね゛え゛ざばぁ……!」


「アルチュールッ!?」



キャンディスは馬車から降りれずにその場で焦っていた。



「早くホワイト宮殿に戻りなさい!」


「い゛や゛ぁ、ですっ」


「……アルチュール、ダメなの!」


「う゛わ゛あ゛あ゛あん」



馬車のステップに這い上がろうとして転げ落ちていくアルチュールを見てキャンディスは焦っていた。

ジャンヌの元に送り届けたいが、それはキャンディスの命と引き換えになってしまう。



「ど、どうされますか……?」


「うっ……こっちが聞きたいわよ」



キャンディスがどうするべきか迷っていたが御者にアルチュールを馬車に乗せてもらうように頼む。

御者がアルチュールを抱えて馬車に乗せるのを見守っていると……。



「……さっさと馬車を出せ」



苛立ちを孕んだ声が前から聞こえる。

キャンディスが顔を上げると、そこには短いカシスレッドの髪とレッドパープルの鋭い瞳を見て、キャンディスは口をあんぐりと開けた。


(……マ、マクソンスお兄様!?)


どうやらキャンディスはどこかに行く予定のマクソンスの馬車に勝手に乗り込んでしまったらしい。

呆然としているキャンディスだったが、本を抱えたまま大号泣しているアルチュールが馬車に乗ったことでハッとする。

マクソンスは剣を自身の横に立てかけて、腕を組んでいるではないか。

足は苛立ちからか貧乏揺すりをしていた。


(これはいい状況じゃないわね)


マクソンスの額には青筋が浮かび、今にもブチ切れてしまいそうである。

キャンディスの記憶を辿っていくと、マクソンスは短気だ。

こうして苛立っている時は右足を細かく揺すった後に剣を握って相手を斬り殺してしまう。

どうやらこの時から癖は変わっていないらしい。



「で、ですが……」


「さっさと出せと言っているんだ。聞こえないのか?」



キャンディスとアルチュールが馬車に乗ってきたことで戸惑う御者を睨みつけて唇を開く。



「このオレを……これ以上、待たせるな」


「ひっ……は、はいっ!」



御者は馬車の扉を閉めてから、慌てて馬車を出す準備を進めているようだ。

さほど時間が経つこともなく馬車は動き出す。


(アルチュールを連れてきてしまったわ。どうしましょう……)


キャンディスは荷物を端に寄せて、鼻を啜りながら泣いているアルチュールを共に椅子に腰掛ける。

ベッタリとキャンディスに張り付くようにして泣くアルチュール。

足元にはアルチュールの本が転がっている。

キャンディスは本を取り、自分の荷物の上へと置いた。


チラリとマクソンスを見るが、彼の足は小刻みに動き続けており苛立ったままだ。

どうして彼が一人で馬車に乗っているのか。

裏口からこっそりと出て行こうとしている理由は何なのかはわからない。

それに時間に遅れたくないとはいえキャンディスたちを馬車に乗せたのは意外だった。



「キャンディスお姉様、ジャンヌは……?」



アルチュールは心細そうな声でキャンディスに問いかける、

きっとアルチュールは何が何だかわからないままキャンディスについてきてしまったのだろう。

だけどキャンディスはヴァロンタンに暴言を吐いて、勝手に宮殿を飛び出したのだ。

今更になって顔が青ざめていく。



「もう……ジャンヌとは会えないのよ」


「…………!」


「エヴァとローズにも……っ」


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― 新着の感想 ―
お嬢様の行動力が裏目に出てる…! マクソンスとどう絡んでくるのか
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