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ヨネシゲ夢想 〜君が描いた空想の果てで〜  作者: 豊田楽太郎
第六部 明暗の夜 (イタプレス王国編)
357/401

第347話 総攻撃

 恐ろしい容姿の怪獣――破壊神『オメガ』と化したマスターが右腕を大きく振り上げる。


「――せめてもの慈悲だ。一撃で楽に逝かせてやる」


「く、来るぞ……!」


 それに伴いヨネシゲたちも両手を構えて戦闘態勢。

 守られる側のロバーツ親子(ネビュラとエリック)も、勇敢に拳や剣をオメガに向ける。

 一方、非戦闘要員であるクボウ母娘コウメとシオン、王族のヒュバート、ノエル、メテオ、ドランカドの母プリモ、クボウ家執事のクラークは互いに身を寄せ合いながら不安げな表情で様子を見守る。


 破壊神オメガが今にも右腕を振り落とそうとした時、意外な男たちが先陣を切る。それを見たマロウータンが彼らの名を叫ぶ。


「「「メテオ様は我々がお守りする!」」」


「バンナイ! アーロン! ダンカン!」


 その老年と二人の中年は――白塗り顔の同輩バンナイ、アーロン、ダンカンだった。

 南都の誇り高き戦士たちは刀やサーベルを構えながら、年齢を感じさせない飛翔で破壊神『オメガ』に迫る、迫る。迫る!


「これ以上、貴様らの好き勝手にはさせんわ!」


「散っていった同志たちの無念……今ここで晴らしてくれる!」


「こんなへなちょこな怪獣にやられてたまるかっ!」


 咆哮を轟かせる三人の身体が赤、青、黄に発光。

 上昇しながらスパイラル回転する三つの光は、やがて一つの白色閃光となり、オメガに襲い掛かる。

 神速で突撃する戦士たちをヨネシゲたちが固唾を呑みながら見守っていた。


「「「おおおおおおおっ!!」」」


 共鳴する三人の雄叫び。


 ――だが。


「フッ……雑魚が」


 オメガは振り上げていた右腕を一振り。その巨大な右掌が三人を捉えた。


「「「グハッ!」」」


「バンナイ! アーロン! ダンカン!」


 それはまるで叩き潰されたハエの如く。破壊神の一撃を受けたバンナイ、アーロン、ダンカンは、口鼻から血を噴き出しながら急降下。地上に墜落した。


 透かさずヨネシゲたちがバンナイたちの元へ駆け寄るも、三人は白目を剥き、絶叫の表情で気絶していた。


「なんて酷いことしやがる――!」


 ヨネシゲは破壊神オメガ――マスターを睨む。

 一方のオメガは、激怒の角刈りを見下ろしながら、冷たい声で宣言。


「次はお前たちだ」


「!!」


 突如ヨネシゲを覆う大きな影。

 一同頭上を見上げると、そこには破壊神の巨大な足があった。ヨネシゲたちを踏み潰そうとするそれは、空から降ってくる軍艦の如し――


「野郎っ! そう簡単にやられてたまるかよっ!」


 角刈りは怪獣の足裏に鋭い眼光を向けながら、青色に発光させた自慢の鉄拳を構える。


(――これは……俺と(マスター)の問題だ。これ以上、皆を巻き込むわけにはいかない!)


 先程マスターが語った内容の真偽は定かではない。とはいえ、如何なる理由があろうと、マスターが自分に敵意を向けていることは事実である。そしてマスターが自分に憎悪の感情を向ける理由も理解できる。だとすれば、これは自分と彼の問題だ。これ以上関係のない者たちを巻き込むわけにはいかない。


 ――自分の手で決着(けり)を付けなければならない。ヨネシゲは右拳を力強く握りしめた。


 ――ところが。

 角刈りの肩をマロウータンが掴む。


「待たぬか、ヨネシゲ」


「マロウータン様?」


「ここは儂らに任せろ」


「え?」


 マロウータンが言い放った予想外の言葉。困惑するヨネシゲに白塗り顔が続ける。


(マスター)の狙いはそなたじゃ。そなた自ら奴に飛び込んで行ったら――それこそ相手の思う壺じゃ!」


「し、しかし――」


 そうこうしている間にオメガの足がすぐ真上まで迫っていた。その光景をチラ見しながらマロウータンが微笑みかける。


「そなたには散々助けられた。じゃから今度は儂がそなたを助ける番じゃ。甘えることも覚えよ――」


「マロウータン様……」


 白塗り顔は、呆然とする臣下の顔を見つめながらゆっくりと頷くと、頭上へと視線を移す。


「――同輩たちの無念、儂が晴らしてみせようぞ! 麻呂扇奥義『鶴の羽ばたき』! ありゃああああああっ!!」


 その刹那、

 マロウータンは全身を白色に輝かせながら、巨大化させた扇を目にも止まらぬ速さで扇ぎ始めた。その扇から生み出される風は烈風。暴力的な風力がオメガの足元を急襲する。


「吹き飛んでしまうのじゃあああああっ!!」


「ぬっ……!」


 油断していたのか? 或いは片足を上げていてアンバランスな状態だったからか? 下方から吹き上げてくる風圧に、オメガの巨体がよろける。

 それを見た白塗り顔が好機と判断。一同に力強い声で命じる。


「今が好機じゃ! 破壊神を叩き潰すぞよ!」


『おおっ!!』


 直後、マロウータンの声を合図に一同が地面を蹴る。


 ソフィアが、カエデが、ジョーソンが、グレースが、ネビュラが――王都のヒーローたちが、一気に四、五十メートルの高さにあるオメガの頭上まで飛翔。攻撃態勢に入る。


「――例えどのような理由があろうと、罪なき人々を殺めた貴方の行いは絶対に許せません! 今ここで貴方を食い止めます!」


「っ……!」


 ソフィアの言葉にオメガは悔しそうに顔を歪めた。

 そしてヒーローたちは全身にエネルギーを充填させて――


「超絶激おこなカエデちゃんの一撃受けてみなさい! 激怒の烈火『レイジファイヤー』!」


「おじさんも本気出しちゃうぜっ! 『鉄腕ラリアット・改』!」


「ククッ。トロイメライ頂点の一撃……耐えられるかな? 跪け! キングアクスキック『平服』!」


「総帥……貴方が作ろうとしている世界は、『(メリル)』が望む世界ではない! あの子の為にも……貴方の暴走をここで終わらしてみせる!――はああああああっ!!」


「この裏切り者めが……恩を仇で返すつもりか――」


 上空ではヒーローたちが今まさにオメガ目掛けて攻撃を繰り出そうとしていた。


 一方の地上でもマロウータンたちが猛攻を仕掛ける。


「麻呂扇奥義『鶴の翼』! ありゃあああああっ!」


 マロウータンは空想術で右腕の筋力を極限まで強化すると、鋼鉄と化した扇をオメガの脚に打ち込む。


 白塗り顔の攻撃を皮切りに、ドランカドの濃緑のオーラを纏った十手が、豹人間に姿を変えたノアの青炎の右脚が、そして第一王子エリックのサーベルから放たれた橙色の斬撃が、破壊神の脚に炸裂!


「正義の十手! お見舞いするッスよ!」


「清き青の右脚を受けてみるがいい!」


「第一王子の名にかけて、貴様の謀略はここで阻止する!」


 更にジン化したルドラ・シュリーヴが地上から浮上。オメガの腹部に暴風と言う名の衝撃波を解き放つ。地上からは二丁豆腐のトウフカドが白色ブロックを次々と投げ付けて援護射撃。


「王都の治安を守護する者として、貴様の蛮行はこれ以上見過ごすことはできぬ! その腹に穴を開けてくれるわ!」


「父上! 援護しますぞっ!」


 そして、この者たちも活躍。


「喰らえっ! ビッグな輪投げドーナツだぞ!」


「先程充電したエネルギー、全て放電してくれるわい! ぬおおおおおおおっ!」


 ドーナツ屋ボブが投げた七色に輝く輪が、破壊神の胴体を縛り上げる。続いてイエローラビット閣下がマーク戦で蓄えた電力を全て放出。高圧電流がオメガの全身に纏わり付いた。


 味方側の総攻撃。

 その威力凄まじく、オメガの巨体所々に爆炎や閃光が発生し、周囲に轟音が響き渡る。ヨネシゲは汗ばむ拳を握りしめながら、総攻撃を凝視。


(なんていう威力だ! あんな攻撃を食らったら、流石のマスターもただじゃ済まねえ……!)


 尚も続く総攻撃。

 オメガの巨体が発生した黒煙に飲み込まれる。故に破壊神がどれ程のダメージを負っているのか確認できない。それでも攻撃の手を緩めることはなく。戦士たちの猛攻は激しさを増していた。


 ――だが。

 改革戦士団の面々は微かに口角を上げながら、まるで花火を鑑賞するように、総攻撃を眺めていた。




 ――その時。

 戦士たちの猛攻がピタッと止まる。


「ぬほっ?! か、身体が動かないぞよ……!」


「ど……どうなっているの……ま、まるで……鎖で縛られているみたい……」


「ソフィア! マロウータン様! みんな! 大丈夫か!?」


 ヨネシゲの顔が青ざめる。

 何故なら、自分以外全員の身体が濃紫の煙霧に縛られているのだから。


「クックックッ……」


「マ、マスター! 貴様の仕業だな!?」


 突如、黒煙の中から聞こえてきた薄気味悪い笑い声。やがて黒煙が消え去ると、無傷の破壊神オメガ――マスターが仁王立ちしていた。

 ヨネシゲは瞳を大きく見開きながら声を震わせる。


「そ、そんな……あの攻撃が効いていないだと……!」


 動揺を隠しきれない角刈りにオメガが言う。


「あの程度の攻撃で()()()した私を倒せると本気で思っていたのか?」


「くっ……」


 オメガはニヤリと牙を剥き出す。


()()()した私の前では此奴等(こやつら)など赤子同然だ。小虫を潰すより容易い――」


 オメガが右手をゆっくりと振り上げる。


「な、何をするつもりだ……?」


「お前に絶望を見せてやろう――」


 マスターはそう言うと、右手の指を鳴らした――次の瞬間。戦士たちを拘束する濃紫の煙霧から、一瞬だけ発せられた強烈な閃光。と同時に糸が切れた操り人形の如く力を失う戦士たち――



つづく……

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