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ヨネシゲ夢想 〜君が描いた空想の果てで〜  作者: 豊田楽太郎
第六部 明暗の夜 (イタプレス王国編)
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第334話 決戦間近の裏側で

「早速来てもらいましょうか」


「くっ! 無礼なっ!!」


 マークはネビュラの髪を鷲掴み。砦の屋上へと連行する。


 そして、国王の頭部から一匹のコバエ――偵察用想獣が飛び去っていく。




 場面変わり、ここは王兄屋敷。

 偵察用想獣から得た映像が映し出される水晶玉。卓上に置かれたそれを見つめるのは三人の男。

 その内の一人、フェイスベールで顔の下半分を覆った中年男――改革戦士団総帥『マスター』が不気味な笑い声を漏らす。


「オッホッホッ! マーク元帥のお出ましか。王妃側もようやく切り札を使ったようだな」


 主の言葉にドミノマスクの銀髪青年――改革戦士団四天王『ソード』が相槌を打つ。


「ええ。王妃側も随分と追い込まれていますからね……」


「オッホッホッ。さあ、王妃殿下にロルフ王子。もっと抗ってみせなさい」


 まるでスポーツや格闘技の観戦である。マスターとソードにとって水晶玉に映し出される映像は娯楽に過ぎないのだ。

 すると薄茶色髪の中年男――トロイメライ王国・王兄『スター・ジェフ・ロバーツ』が苛立った様子で声を荒げる。


「二人とも楽しんでいる場合ではないぞ!? 我々の作戦を成功させるためには、王妃側にはなんとしても勝ってもらわねば困るのだ!」


 マスターは余裕の高笑い……と思いきや、突然予想外の言葉を口にする。


「オッホッホッ! ――ズバリ、此度のクーデター……ネビュラが勝利を収めます」


「どうしてそう断言できる……?」


 突然の宣言に困惑する王兄。彼から訊かれたマスターが不敵に目元を緩ませる。


「ネビュラに……()()()()()()が味方しておりますからね。あの手この手を駆使して、勝利をものにすることでしょう」


「なんとかならんのか!?」


「……ご安心を。不測の事態に備えて代替策を用意してございます」


「代替策だと?」


 代替策とは何か? 

 スターが尋ねると、マスターは自信に満ちた表情で代替策をプレゼンテーション。


「ええ。その代替案に移行すれば、今ならスマートに王都の全てを手中に収めることができます! 王都の全官民、貴族たちまでもが、スター殿下に忠誠を誓うことでしょう!」


「そ、そんな簡単に……我々の手だけで王都を制圧できるのか!?」


 この男は夢でも見ているのだろうか?

 王都の全てを手に入れて、全王都人に忠誠を誓わすなど、現役の王でも難しい話である。それを簡単に成し遂げるつもりでいるマスターに、スターは疑問符を浮かべた。だが総帥には確信があるようだ。


「ええ。王都人の殆どが一箇所に集まった今なら、容易くそれを成し遂げることができます。私を信じてください」


 一方で懸念も口にする。


「ただ……守護神が解放される前までに作戦を完遂する必要があります。奴に邪魔をされては元も子もありませんからね」


 続けてソードが口添えするように言う。


「ウィンターが戻って来る前にある程度体制を整えておく必要があります。あのガキは……脅威であり、忌まわしい存在だ……」


 マスターの腹心は……何処か憎悪に満ちた様子で口元を歪めた。


 二人の話を聞き終えたスターが恐る恐る尋ねる。


「――つまり……今すぐ代替案に移行した方が良いということか?」


 マスターが首を立てに振る。


「ええ。直ちに代替案に移行します」


 その刹那。総帥は卓上の呼び鈴を鳴らす。間もなくすると、青い瞳を持つ茶髪ボブカットの女性が、マスターたちの前に姿を見せた。


「マスター様、お呼びでしょうか?」


「オリビアよ。至急、()()()()()()()をこの屋敷に集結させなさい」


「かしこまりました!」


 それは一味の召集命令。マスターから指示を受けた彼女――改革戦士団第2戦闘長『オリビア』は力強く返事。そして念の為、ある事を主に確認する。


「一点、確認がございます」


「なんだね?」


「謹慎中のサラ様はいかがいたしましょう?」


「――謹慎は只今をもって解除とする。サラも召集だ」


「はっ!」


 マスターの返答を聞いたオリビアは、再び力強い返事をすると、急ぎ足で部屋を後にした。


 すると彼女と入れ替わるようにして、ある男が慌てた様子で部屋を訪れる。


「マスター! 大変だ!」


「ルッコラ閣下。どうしたのですか、血相を変えて?」


 その男、壮大なアホ毛を持つ緑髪頭の中年男は、トロイメライ王国の大臣『ネコソギア・ルッコラ』だった。

 この男、第二王子ロルフの側近であるが、今は改革戦士団と結託、スターを騙してトロイメライを蝕もうとする欲望の亡者の一人だ。

 ヘリコプターのように回転させていたアホ毛は徐々に失速。マスターと向き合う頃にはその動きを停止させていた。

 そして彼が血相を変えていた理由――その衝撃的な内容をマスターたちに伝える。


「大変だ。タイガーが危篤状態らしい!」


「「「!!」」」


「ノーラン討伐を中断して、自領(アルプ)に引き上げるとのことだ!」


「まさか……」


 驚愕の表情を見せる三人。総帥が瞳を見開きながら尋ねる。


「それは……本当なのか……?」


「間違いない! 王妃とロルフから聞いた情報だ。先程リゲルの伝令が王妃の元を訪れたらしい」


 ネコソギアの言葉を聞いたマスターが王兄に向き直る。


「――守護神は不在……猛虎は危篤……スター殿下。どうやら天は、我々に味方しているようですぞ……!」


 スターがゆっくりと頷く。


「頼むぞ、マスター。決して奴らにトロイメライを渡してはならぬ!」


「オッホッホッ。このマスターにお任せください!」


 総帥は胸元に右手を当てながら、深々と頭を下げた。








「――それはそうと、ルッコラ閣下。大失態でしたな……」


「な、何のことだ?」


 先程までの穏やかな雰囲気とは打って変わり、マスターが怒りのオーラを放つ。一方のネコソギアが顔を強張らせながら尋ねると、総帥から恐れていた言葉が返ってきた。


「ノエル殿下の件ですよ。報告が遅いのでは?」


「そ、それは……」

 

 マスター怒りの理由。それはネコソギアに指示していたノエルの身柄拘束についてだ。

 大臣は一時王女の身柄を拘束するも、ドランカドによって解放されてしまった。

 そしてマスターらは、解放されたノエルの姿を、ネビュラの頭髪に忍ばせていた偵察用想獣(コバエ)を介して確認済みである。

 王女を奪還されてからかなりの時間があった筈だ。にも(かかわ)らず、ネコソギアからの報告は一切なかった。


 ――隠蔽するつもりだったのだろう。 


 ネコソギアは慌てた様子で弁解。


「す、すまない! なかなか城から出れなくてな。ほ、報告も今しようと思っていたのだ! ほ、本当だぞ?! 次はこのような事がないように――」


「次などありません」


「へ?」


 マスターはネコソギアの言葉を遮ると、冷たい眼差しを向ける。


「貴方とは手切れです。我々の仲間に無能は必要ありません」


「ちょ?! ちょっと待ってく――うぎゃああああっ!」


 突然悲鳴を上げながら後退りするネコソギア。彼はトレードマークのアホ毛をソードに掴まれながら、部屋の外へと連行された。


 その刹那。ネコソギアの断末魔が轟く。




「――さて……スター殿下には一つ、大仕事をお願いしたい」


「大仕事だと?」


 スターが額に汗を滲ませながら尋ねると、マスターはフェイスベール越しからでもわかるほど口角を上げた。


「オッホッホッ! 目には目を、演説には演説を……準備が整い次第、スター殿下には――公開演説を行ってもらいます」


「公開演説だと?!」



つづく……

今回は改革戦士団側のお話でした。次回からリアリティ砦での決戦回に突入です。

※前回『第333話 雷魔襲来(前編)』の表記を『第333話 雷魔襲来』に変更しております。ご承知おきください。

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