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学園計画   作者: 洋野留衣
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二つの宝石



 とうとう学校生活が本格的に始まる日。先端技術科の新入生五人は揃って校舎に向かった。


「緊張してきた」

「二クラスにわけられるんだろ? 全員一緒っていうのはまずないな」

「そんなこと言わないでよ!」

 五人の中で一番緊張しているのは一番身長が低い山内謙太。その身長と色白の肌、初々しい切りっぱなしの黒髪で、昨夜は寮のお姉さま方の心をしっかり掴んでいた。

 そんな謙太にばっさり現実を突きつけたのは黒縁眼鏡がよく似合う田辺博。1年生にして知的なオーラが溢れ出ている。


「でも一人は不安だな。クラスの仲良しグループも寮ごとで作られることが多いんだって。咲希、仲良くしてね?」

 小さな頃から新体操を習っているという新沢真沙子は、そう言って咲希のすぐ横に並んだ。

「もちろん! 私こそ仲良くしてね」

 咲希も頷き、女子二人で笑いあった。


 校舎の玄関には、言われていた通り大きな紙が二枚貼られていた。

 1組から見ていくと、まず目に入ったのは一条慧の名前。そして下に視線を移していくと山内謙太、結坂尚人の名前がある。更にその下の女子名簿を見ると、確かに結坂咲希と書かれていた。


「同じクラスだね」

「うん。よろしく、謙太」

 一安心して隣の紙を見ると博と真沙子の名前がある。クラスは別れてしまったけれど、誰も一人ではない。


「良かった!」

「そっち遊びに行くね」

「教室は三階で当然隣か」

「エレベーターも使っていいみたいだよ」

 お喋りしながら階段を上り、笑顔で別れることができた。


 教室に入った第一印象は綺麗。でも、見れば見るほど整いすぎているのがわかった。壁は傷一つない白。床はフローリングでシミどころか埃一つない。窓から差し込む日差しが広々とした教室を照らしていて、三カ所に飾られた観葉植物が殺風景な教室に色彩を与えている。


「席は自由だって」

「後ろの方でいい?」

 謙太の提案に二人共頷き、窓際の最後列に三人並んで座る。


 暫くすると尚人と理沙、それに達哉が入ってきて、全ての席が埋まった。

 それとほぼ同時に入ってきたのはラフな格好をした担任。


「初めまして。このクラスの担任になる工藤彼方です」

 咲希達を迎えに来た時の言葉通り、工藤先生が担任になるらしい。優しく好青年な外見に、女子生徒の半数近くが色めきたった。


 初日は授業はなく、最初に時間割が配られた。国語と数学、英語が週に四時間で体育と情報が週に三時間。歴史と地理、化学に生物、家庭科が週二時間で、礼法と音楽が週に一時間。水曜日と土曜日は午前のみで、午後は寮ごとの活動時間だ。他の曜日が六時間授業で、日曜日が休みというのは普通の学校と変わらない。

 ただ、昼食の時間が八十分もとられているため、終わりの時刻は少し遅い気がした。


「教室や授業での注意事項は三つ。移動教室も多いから遅れないようにすること、携帯電話が鳴らないようにすること。そして、教室内での食事は禁止。飲み物はいいけど、おやつや昼食はショップ街か五階のラウンジでとること。いいかな?」


 工藤先生は相変わらずの優しい声で説明を続け、女子ばかりか男子までもが静かにその言葉を聞いている。彼の整った容姿と優しい雰囲気に、誰もが好感を持った。


 教室内の設備について説明を受けた後は、校舎内を案内された。

 五階がラウンジ。六階には第二図書室があり、二階には多目的ホールと資料室、一階には何度か使用した視聴覚室と調理室がある。二階の渡り廊下で繋がる特別棟には音楽室や生物室、社会科室などがあった。

 

 本当に広々としていて、重厚壮大、優雅という言葉につきるような校舎。案内されながらみんな目を輝かせていた。



「明日は入寮届の締切日だから、まだ決まっていない人は今日中に決めるように」

 工藤先生がそう締めくくって出ていくと、教室は一気にざわめきたった。


「やばいよ! 早く寮決めなくちゃ」

「もう体育科に出しちゃう?」

 何人かはまだ寮が決まっていないようで、慌てて教室を飛び出していき、残りの生徒は昼食の話し合いをしながら一組、また一組と教室を出ていく。


「でも、まだ昼には早いよな?」

 慧が二人に聞いた。


「そうだよね、どうする?」

「あ、私ラウンジ行ってみたい!」

「いいな。さっきは入り口までしか行けなかったし」

「僕も行ってみたい」

 真沙子と博にメールをいれ、先に三人でラウンジへと向かった。


 ラウンジはこれまた高級感が漂うホテルのような場所だった。椅子は一人掛けの赤い革のソファーで、テーブルはガラス製。

 見る限り席に指定はなさそうで、慧の携帯を機械にかざした後、奥の窓際を陣取った。


「ドリンクは注文か」

「お菓子は自販機で買ってもいいんだって。見に行こう!」

 それぞれ好きなドリンクを注文して、自販機でポッキーや芋のお菓子を買い込んで席に戻った。ふわふわのソファーで美味しいお菓子を食べながら、時間も忘れて会話を楽しんだ。



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