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009 20万対2

クレス侯爵領に入ったが、今回はどこも寄らないで通り過ぎるのが良いだろう。


「兄貴、最短で2日でクレス侯爵領を抜けれるが、領主の屋敷は今回の件を考えたら避けた方が良いと思うんだがどうする?」

「襲われたから自衛で戦っただけなんだがな。最短で抜けたいが、問題があるのか?」

「領主の屋敷の側を通るルートだと2日なんだが、避けるとなると迂回するので5日ほどかかる計算になるんだ」

カオルは道に詳しくて助かるな。

今回は完全に巻き込まれなので構わず2日の経路を取ろうと考える。


「また揉めた時には、カオルにはすまないが突破しよう。最短の道でクレス侯爵領を抜けよう」

「さすが兄貴だぜ。そう言うと思ってました。荷馬車の進路は2日コースですよ」

馬を操作していたカオルが、手綱を振って馬を早めた。


予定が決まった事だし、今回の結果を見てみよう。

私の行動を監視しているログを見る。


罪人の断罪。

戦時宇宙法の適切な執行。


2個の功績により、あと285年と1ヶ月と18日になっていた。

【10年の短縮がありました。詳細ログを読みますか?】


いや、また長そうだからやめておこう。

【まだ、停戦に至っていない判断がされています。クレス侯爵領内では、戦時宇宙法が優先されていて自治区の法律適応外です】


え? どうやって終わらせれるの?

【このクレス侯爵領を出るか、上位者による停戦の調印が必要です】


それ不可能じゃないか?調停しに行ったら次男を殺してるし全面戦争になる気がする。

まぁ、出たとこ勝負で法令順守で進めば良いか……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2日ほど道なりにカオルの領地へ最短で進んでいくと、クレス侯爵の屋敷が見える場所や、騎士が駐在しているテアモント城のそばを通ったが、問題ごともなくすんなり通過した。

ただ、すれ違う人が皆無であったことが何かある気がして恐ろしい。


「兄貴、もう少しでクレス侯爵領から隣のカルトロ公爵領へ向かう道へ出るぞ」

「やっと抜けるのか? すれ違う人が皆無だったのが、やな予感がしてならない」


「確かに変だね。行商も盛んだった筈だが?」

カオルに言われて道を見ると、馬車が通った跡や足跡などが多く残っていた。

やはり、変である。


「あそこの関所のような砦がカルトロ公爵領の入り口だと思うんだが、門が閉まってるね」


道の先に砦が道を塞ぐように砦があり、容易に侵入できないように左右に高さ4mほどの壁が広範囲に伸びている。


門の大きさも道幅一杯迄あり、大型でまるで城の入り口のような雰囲気さえある。


門の手前まで行くと、門の上の櫓から兵士から声がかかる。


「クレス侯爵領に魔族が出たとの報告があった。黒い鎧と皮の鎧を装備した二人組だという。貴公らがその二人に見えるのだが、そうなのか?」


圧倒的な戦闘であった為か、魔族の扱いになっているようだ。


「私達は、魔族ではない。先に進みたいので門を開けてもらいたい」

「今、その時の戦闘に参加した者を呼んでいる。確認したら門を開けよう」


これは、どうなるか想像もつかないな。

「兄貴は、何も悪ことはしていない。もしも戦闘になるようなら兄貴側につくよ」


目をキラキラさせてカオルが私を見る。

カオルも貴族なのだが、ここまで無茶しても大丈夫なのだろうか?

カオルが領地に戻ったら、立場が悪くなっていたら困るな。


【カオルの強化した武器の進化が確認されました】


え? どういう事?

【この世界の魔素(マナ)ついての解析が一部完了しました。囚人番号2019号の元の囚人用ロボットに付加されていた高性能センサーを利用して黒鎧と同化させて大気成分および発見された元素および魔素(マナ)の解析中です。わかった範囲で大気中の成分を伝達します。


窒素が70.08%、酸素が20.95%、アルゴンが0.93%、二酸化炭素が0.03%、 水蒸気は場所により最大4%で残りは魔素(マナ)が8%前後。

気圧は現重力で1.2気圧。


魔素(マナ)は、大気中に含まれる透過性が非常に高いもので目に見えません。

わかりやすい表現であればナノレベルの虫と表現した方が良い物質だと判明しました】


虫!? 生き物のナノマシンという事か?

魔法と言われる現象は、科学的に根拠がある現象だったのか!?


【その表現に近いですが、この異世界には過去にいた世界にはなかった小さな元素が100種類以上存在していて、それらで構築されたナノレベルの生き物ですね。

驚いた事にその小さな元素も作られた形跡があります。


まだ、存在しか確認していませんが、私達のナノマシンに近い機能が付加されていて、カオルの体内に呼吸によって取り込まれて寄生していた魔素(マナ)が、カオルの強化した身体に寄生して支配したようです。急激にカオルにインプラントしたナノマシンが進化しています】


カオルが妙に好戦的になった気がするが、それが影響しているのかな?


櫓の上に、前回の戦闘に参加していた記憶がある鎧の兵士が現れていた。

「あ、あいつらだ!! 魔人だ!!」

「やはり、そうか? 騙されるところだった。人間の真似をしても無駄だぞ。生きて帰れると思うなよ! 

全軍に通達! 開門の準備! 狼煙で背後のルズワルト辺境伯に伝えろ」


【索敵の範囲を広げたところ、門の向こう側に15万ほどの生命反応があります。来た道の方向からは5万ほどの生命反応が接近中です】


また、はさみうちの作戦のようだな。

前回の戦闘で退却した兵士の情報で、対応されて待ち伏せされていた感じだな。

戦時宇宙法適応中で助かったかもしれない。

前回行ったので宣戦布告の義務が発生しないようだ。

ただ、この人数は異常だ。私は平気だと思うがカオルが心配だ。


そう考えている間に砦の壁の上に弓兵が大量に現れた。

「攻撃を開始しろ!」


叫び声が聞こえた後に、砦方面から空が黒くなるほどの矢が飛んできた。


「兄貴のおかげで矢が止まって見えるよ」


私に矢が飛んできているが黒鎧で全て弾かれる。

カオルは、両手に持ったプラズマブレードで器用に全て叩き落としいる。


一本しかなかった筈だが両手に持ってる? 二本?!


【短めの剣に入れた進化型ナノマシンが、魔素(マナ)に寄生されて2個に分離して増殖したようです】


物質の構築まで始めたって事か?

カオルの体が心配になってきた。他人の事はどうでもよかったはずなんだが、人は変わるものなのだな。

カオルが虫型ナノマシンに寄生されるという事は私も寄生されないのか?


【私達は、呼吸をしてませんから自ら取り込まない限りそれはないでしょう】

なるほどね。


「報告によると魔法が効かない魔族らしい! 魔法部隊は味方への補助魔法を優先して攻撃はするな!」


櫓から集音器に兵士たちの指示が聞こえる。

魔法? 前回の戦闘でそんな攻撃を受けたかな?

【大気中のマナから発火レベルの高熱攻撃と冷却的な攻撃を受けていましたが、熱はエネルギーとして吸収して冷却的な攻撃は、逆に黒鎧の冷却として使用しました】

インディが優秀すぎて私が気がつかなかっただけで、結構攻撃を受けていたのか?

だがそのおかげで魔法がなければ、飛んでくる矢が止まって見えるカオルの心配は不要かもしれない。


門が開いて、武装した15万の軍隊が進軍してきた。

最前列は、長槍を構えて整列した部隊である。

背後からは、武装した5万の騎兵と歩兵が進軍してきた。


「カオル、前回と同じく背後を頼む。私は目の前の敵を蹴散らす」

「了解だよ兄貴! ワクワクするなぁ」


カオルが背後から迫ってくる騎兵に向かって、両手に持ったプラズマブレードを掲げて走っていった。


まさか、ここまでの事に巻き込まれるとはな。

カオルを眺めていると背後から、私に進軍してきた長槍の部隊に攻撃されるが、多少体が揺らされるだけで全て鎧で弾かれる。


「ば、化け物だ」

「槍が効かないぞ!」


兵士たちが口々に、叫んでいる。

振り向きながら右手に刃渡り1.5mほどの高周波ブレードを、黒鎧表面からナノマシンを集めて構築した。

インディ、この剣は長くできないのかな?


【高周波による振動効果が、この長さで最高になるように調整してありますので再調整が必要になります。カオルのプラズマブレードは、理論上の上限はないです】

1.5m程だと一人か二人ほどしか一気に倒せない。やっぱりカオルの、勇者の武器っぽいプラズマブレードの方が良いなぁと考えながら敵陣へ突っ込んでいった。


容赦もなく長槍を持った兵士を一刀両断で倒していくと重そうな鎧を装着した重歩兵が現れた。

武器は大型のハンマーで大きな盾も装備している。


厚い装甲も、関係なく一刀両断していく。


「重歩兵の鎧が意味を成し得ないぞ」

「なんだ、あの剣は?」


飛び交う兵士の叫びを無視して屍を作りながら門へ前進していく。


数の暴力で、重歩兵の大型ハンマーが体に直撃するが、よろめく程度でダメージがない。


これは流石に戦力差が酷いな。

向こうの指揮官は無能なのだろうか?

たった二人である事が、相手の判断を鈍らせているようだ。

既に秒速1人以上で15分戦闘しただけで1000人以上の兵士を斬り伏せた。


カオルを見ると、かなり後方で同じように無双していたが、プラズマブレードが三メートル程の長さに変化していて、一振りで5人以上同時に倒していた。

しかも両手である。

淘汰速度が、私の数倍で返り血もない。

私は周りは血の海である。

武器を変えたい……


【放出系のプラズマボールを作成しますか?】


あ、洞窟を壊したあれか!


【衝撃に弱い為に作成中の衝撃で自爆しますので、一度下がるか攻撃が止まないと使用はできません】


前回の威力が手元で爆発したら確かに私でもまずそうだな。

かといって、デスマーチのように兵士が休みなく襲ってくる。

相手の指揮官は、私達の疲労を狙っているかもしれない。

いくら強くともいつかは疲れるからな


そして、デスマーチに二時間ほど付き合う事になる。

目の前には、地面に隙間がないほどの死体が横たわる。

やっと、指揮官が動いたのか門を閉め始める。

周りの兵士が引いていく。


カオルを見ると、かなり遠くの方で地面が死体の山のようになっていたが、全く疲れない動きで戦闘を継続していた。

しかも、戦闘前より動きが、さらに加速している。

私よりも速く動けるのでは?


プラズマボールのチャンスである。

私から撤収する兵士の後ろ姿と閉まっていく門を見ながら、剣を黒鎧の表面に格納して右手にエネルギーを集中していく。


【前回と違い広範囲だと想定出来ますので、現状可能な最大出力で構築します。5分ほど動かないでください】


右手に青白い玉がスパークを伴って大きくなって作成されていくが、大きくなりすぎて腕に当たりそうだ。

万歳するように上に右手を突き出す。


大きさが直径2m程になると、青白い色から全くの白色に変化して突然直径20cmほどまで小さくなった。


【安定しましたので、優しく門に投げたら3km以上離れてください。思いっきり投げるとその場で破裂するので注意してください】


3kmだとちょうどカオルがいる所付近かな?

優しく投げるって難しい判断だな。

門に向かって白い直径20cm程の光球を優しく投げつけて、カオルに向かって走り出した。


投げた光球がゆっくりと重力を無視したような放物線を描いて、閉まった門へ空中を漂う感じで向かって行った。


【ちょうど良い速度です。2分で門と衝突します】


2分で3kmって!

思いっきり走っているが、カオルの所まで間に合わないぞ。


突然、黒鎧の足の関節が少し開いて、さらに加速した。

【鎧が壊れるのを無視してリミッターを解除しました】


突然三倍近い速度まで加速した。

あっと言う間にカオルのそばまでくると、振り向きざまにカオルのプラズマブレードが私を襲う。

背後から近づいたので勘違いして攻撃したようだな。

脳の処理速度が上がって世界がスローになった。


首筋に正確に迫り来るプラズマブレードを、必死に躱そうと動くが間に合わなそうだ。


【電磁シールドを構築します】


なに、その便利なシールド!

目の前に白い板が出来たと思ったら、世界が普通に動き出しシールドとプラズマブレードがぶつかって爆発した。

カオルと私が衝撃で飛ばされる。


「あ! 兄貴か! すまない。さっきから周りの気配だけで攻撃出来るようになってしまって攻撃してしまった。味方がいるときは気をつけないとダメだね。兄貴でよかったよ。他の人だったら倒してたところだね。流石兄貴だぜ!」

吹っ飛んだ衝撃で、ちょっと焦げてる感じのカオルが笑顔で話しかけてきた。


戦闘中に笑顔か? カオルの性格変わってないか?

当たり屋みたいな出会いだったし、これが本当のカオルなのかもしれないが違和感があるな。


【カオルの体内のインプラントからの情報ですと、マナに寄生されてから、体内に広範囲センサーが構築されたようです】


もはや、人間ではないのでは? 進化を止めないとまずい気がしてきたぞ。


【まだ魔素(マナ)のナノインセクトの解析が終わっていません。終わり次第対処はします】


ナノインセクト?


【ナノレベルの虫と言う意味で命名しました】


成る程ね。


門の方を見ると門に光球がぶつかった。

しかし、なにも起きないで、門の手前に落ちた。

え!?


【自爆を防止する為に、安定化しすぎて爆発しなかったようです。規模は前回の10倍になる予定でしたが、不発です】


はぇ!?

怖くて近くに寄れないしどうするんだ?


「この化け物どもめ!」

考えていたら背後から騎士に斬りつけられる。


カオルも離れたところで戦闘を再開していた。

後方の5万程いた部隊は、退却せずにデスマーチを継続していた。


斬りつけた騎士を反撃して真っ二つにしたところ、その背後から金ピカの鎧を着た騎士が現れた。


「貴様らは何者なんだ! 我が精鋭の騎士団をここまで倒すとは!」


まさか、戦闘好きなルズワルト辺境伯本人だろうか?


「ルズワルト辺境伯ですか?」

「ほぉ、言葉は通じるようだな。いかにもルズワルトである。一旦攻撃をやめよ!」


周囲の兵士達が攻撃を止めた。

カオルも戦闘をやめてこちらに歩いてくる。


「私は強い奴が好きだが、貴公らの強さは私の常識を超えたものであった。何者なんだ?」


先ほどより謙って再度聞いてきた。

このままデスマーチを法律の範囲内で繰り返していてもキリがないので、ここまでの経緯を話し事にした。


「そんな事があったのか。我が領地を次男に継がせたいヘンリと、自分の妹を嫁がせたくないクレス侯爵の次男であるハシルが策を練って、我が息子のベルナンドが殺された。

その濡れ衣をきせるために貴公らをを襲ったと言う事だな。


だが、私はそんな話は聞いていない。とても信じられないが貴公らの強さを考えればそれが真実なのだろう。次男に継がせた方が良いと言った戯言を、あのヘンリがそこまで考えていたとはな」


ルズワルトが、深く考え込んだ。


「こちら側としては、一方的な無用な戦闘は避けたいのですがどうしますか?」

「襲った我らを見逃すと言うわけだ。舐められたものだな。いくら貴殿らが強くても我が軍は、まだ戦か……」


私の一言にルズワルトが腹を立てて反論したところに大爆音がこだました。


バヒュウウウウ!!

シュウゥゥ!!


門の方面から、衝撃波と爆風が同時に襲ってくる。

周りの全ての人が地面にしがみつくが、爆風で飛んできた私達が倒した死体などに直撃されて、多くの兵士が飛ばされていく。

私は自重が重いので飛ばされないが、飛んでくる死体を叩き落としながら必死に地面にしがみついているルズワルトに飛んできた死体も叩き落として守る。


カオルは、器用に飛んでくる死体をかわしながら地面にしがみついていた。


振り返って門を見ると直径4km程の広大な範囲にクレーターが出来ていた。

中心部は熱で、地面がガラス化して光って見える。

元あった門や城壁のような壁も兵士も綺麗になくなっていた。


【不発だった光球を門にいた兵士が回収しようとして、衝撃を与えたようです。その振動で爆発したようです】

インディは、見てたんだ。


ルズワルトを見ると爆風の埃と風で涙と鼻水を出しながら呆然とクレーターを見ていた。

門のそばにいた15万の兵士も、彼が率いていた5万の兵も、吹き飛ばされて私達の周りに運良く吹き飛ばされなかった数人が残っているだけであった。


「な、なんなのだ?なにが起きたのだ?」

「人数が多かったので広範囲攻撃をしてみました」

「あ、兄貴がやったのか! すげェェ! 今度やり方教えてくれ!」

カオルには、教えない方が良さそうだな。


「ま、待ってくれ! 悪かった。いや申し訳ございません」

地面にルズワルトが、土下座を開始した。


「では、停戦を受け入れるという事でしょうか?」

「も、もちろんでございます。まさかこれほどの力の持ち主だと理解できていなかた私が間違っていました。直ちに軍を引き上げますので!」


「私達のことは、出来る限り秘密にしてほしいのですが可能ですか?」

騒ぎが大きくなるとカオルに迷惑がかかる気がしたので条件をつけた。


「もちろんです」

「兄貴、気遣い要らないよ」


カオルが気がついて補足するが、まぁ目立たない方が良いだろう。


土下座して動かなくなったルズワルトを置いて、カオルと一緒にカルトロ公爵領へ出来たてのクレーターを迂回しながら歩き始めた。


私たちが見えなくなるまで、ルズワルトが土下座をしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クレーターを迂回して、吹き飛ばされた死体が散乱している道をカルトロ公爵領へ向かって歩いていた。

門に近かった15万の兵士達の生存者は。皆無のようだ。


道に吹き飛ばされた兵士の破片や痕跡がなくなる頃に、カオルが道案内の看板を見つけた。


「兄貴、ここからカルトロ公爵の領地みたいだ。かなり広い領地だから、抜けるまで2週間ぐらいかかるよ」

「そんなに広大なのか?」


「カルトロ公爵は、メルクボルク王国の四大貴族の一人で、国王に次ぐ権力者なんだよ。ただ、奴隷制度や商業ギルドを仕切っていて良い噂は聞かないかな」


奴隷制度があるのは、ゴブリン討伐の時に知っていたが、関わるとトラブルの予感しかしないなぁ

今回の領地では騒ぎを起こさないように気を付けよう。

カオルの魔素マナに寄生された私が付与したナノマシーンが気になる。


「カオル、ステータスを見たいんだが良いか?」

「かまわないよ! かなりレベルが上がっている気がするよ。兄貴のおかげだな」


早速、見てみる。


カオル レベル79

職業 天使・冒険者・貴族


STR 3426

VIT 2794

DEX 2467

INT 1012

AGI 2811


パッシブスキル

【自己再生】【神器構築】【神々の心臓】【神々の祝福】【筋肉増強】【剣技】【解毒】


アクティブスキル

【乱舞max】【スラッシュmax】【連撃max】【突撃max】


天使? なんだその職業は? ステータスも一桁おかしい気がするぞ?

レベルに関しては、凄いか凄くないか全くわからない。

パッシブスキルって後天的に取得するの難しいんじゃなかったっけ?

突っ込みどころ満載のステータスだな。


【ナノインセクトの解析中ですが、ナノインセクトが集合体になると情報量が増加して特定個体種族になるようです。カオルの体内のナノインセクト量が私達がインプラントしたナノマシンに大量に寄生したために劇的に増えています。これにより天使と言う認識になった可能性を伝えます。パーティーや、魔法やステータスの表示や伝達などは、全てナノインセクトが処理しているようです。】


何者かがナノインセクトにそのような処理を付加したと言う事か?


【元の世界に存在しない元素構成で、ナノマシンよりも微細な生命体のため調査があまり進行していませんがナノインセクトがどこから発生しているか調べればもう少し詳細が分かるかもしれません】


大分興味が湧いてきたので、調査を頼むよインディ。


【了解しました】


「うあ! なんだこのステータス! ど、どうなってるんだ?」

カオル本人が一番驚いている。

現状は、インプラントしたナノマシンと寄生しているナノインセクトが暴走している形なので早期に対応しないと危険な香りがする。


「でも、兄貴といると強くなった実感が湧かないなぁ。一度兄貴と戦えば良いのかな?」

カオルが、新しく得たスキルで作成した短めの剣を納める鞘から2本の剣を抜いて構えた。


え? カオルだよな?


【カオルの中にあるナノインセクト集合体に意識を確認しました。やはりある程度集まると特定個体種族になるようです】


構えた二本の剣が白く光りだして2m程の光の剣のようなプラズマブレードになった。

カオルの体内のインプラントで制御はできないのか?


【情報の取得は可能ですが、寄生しているナノインセクトの支配の方が強く制御はできません】


私も寄生されると不味そうだな。


『お前は、何者だ?』


カオルから、まったく別人の高圧的な声が聞こえる。


「カオル?」


『私は、カオルではない。この世界を構築した神に仕える天使である……』

カオルが一瞬だけ親の仇を見つけたような顔になったが、突然素のカオルに戻った。


「え? なんで兄貴に剣を構えてるんだ?」

カオルがキョトンとしている。一瞬記憶が飛んだようだ。


【カオルの体内でカオル以外の別の意識体が確認されました。危険を感じましたので私達がカオルに与えたナノマシンを強制的に、プロテクトをかけてナノインセクトの寄生体からの制御を不能にしました。

これによりカオルの身体機能は半分ほど低下しますが、寄生の進行を止める事に成功しました。

現在、再度調査中。結果がわかりしだい伝達します】


危なかった。インディのおかげで助かったのか?

大気中に含まれる魔素マナであるナノインセクトに関して、早急に調べないと危険なことが分かった。


ナノマシンを使用した武器や防具に「神」と言う名がつくことや、マナが集まると意識が発動する事からこの異世界には、大きなカラクリがありそうだ。


インディのおかげで、カオルのマナによる変化は止まったので、調査しながら先を急ごうと考えながら、歩き出した。


自分のステータスを見たが職業以外の変化は、相変わらずなかった。


ニーゼロ レベル1

職業 天使を止めるもの・法の番人・冒険者・平民

STR 7

VIT 5

DEX 4

INT 9

AGI 11


パッシブスキル

【共通言語解読】


アクティブスキル

未取得


職業に、天使を止めるもの?

そのまんまだな。

これらの情報も大気中のナノインセクトが判断して伝達してきている情報と言うことはわかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ルズワルド・ウズの日記

※死後に次男へ引き継がれる。 


長男が魔族に襲われて殺された報告が上がってきた。

早急に、足が速い騎兵と軽装な兵士を集めて討伐に向かう。

その際にクレス侯爵の多くの兵士も倒されたと聞いた。

クレス侯爵と遠くと会話できる魔法により話し合った。偵察隊からの魔族の情報を待って挟み撃ちにすることになった。

魔族達の目的が不明であったが、帝国や魔族からの侵略された場合のため、カルトロ公爵領からクレス侯爵領の侵入を防ぐ役割の砦に進んでいるようだ。

私の指示する5万の兵力と、砦に用意した15万の兵力で息子の仇をうたせてもらおう。


偵察隊からの情報を聞きながら気がつかれないように魔族の背後から、移動した跡を追尾している。

荷馬車と黒い鎧を装備した人物と皮の鎧を装備した小柄の人物と言う事だが、息子の護衛につけた剣を持たせたら無敗である剣の達人ヘンリが、剣で殺されたと報告が上がってきている。

決して外見通りの存在なのではないのだろう。


クレス侯爵にある大型の砦から、戦闘が開始された狼煙があがった。

急いで現場へ向かった。


そこで見たものは、恐ろしい光景であった。

精鋭部隊である先鋒隊が、反撃もできずに一方的に斬られている。

小柄な皮鎧の少年だと思うが、両手にまるで伝説の武器の様な光剣を振り回している。

遠くから矢を射るが、矢を見ないで光剣で叩き落とす。

すぐに、我が軍の兵士の死体で地面が埋め尽くされていく。

クレス侯爵からの情報だと、魔法も無意味だと聞かされていた。


だが、所詮は1人。砦の方でも黒鎧が戦っていたが、倒す速度がこちらの少年よりも遅いので少年の方が強いのだろう。少年を倒せれば十分勝機はある。

いずれ、過労で動きが遅くなった時がチャンスだ。


魔族の四天王の噂は聞いた事があり、1人で数万の軍勢と戦うと聞く。

彼らは、魔族の四天王なのかもしれない。


クレス侯爵の砦に黒鎧が魔法らしき光玉を投げた後に、こちらに向かって走ってきた。

とうとう、黒鎧も疲れが限界で退却したのだろう。

かなりの数の兵士が倒されたが、私の軍勢はまだ数万の兵力である。

我らの勝利だ。


退却してきた黒鎧と少年が、衝突した。

あまりに早い速度で黒鎧が接近したために、誤って少年が攻撃したように見えたが、吹っ飛んで2人が倒れた。少年も疲労がたまってきているのだろう。


今が勝機であると踏んだ私は、近衛兵と一気に距離を詰めた。


接近すると疲れているはずの黒鎧の一撃が、先に黒鎧を襲った近衛兵でも最強のブテルを両断した。

ありえない。動きが見えなかった。

この化け物達は疲れを知らないのか?


驚いたことに名乗りをあげると、人間の言葉で返答してきた。

魔族は、プライドが高い種族で決して人間の言葉を喋らない筈だ。

彼らは、魔族ではない?


一旦、攻撃をやめて話を聞いた。

彼らは、冒険者だった。我が息子の暗殺事件に巻き込まれただけの存在であり、自衛で反撃していたことがわかった。


誤解は解けたが、既に我が軍は多くの兵士達を失っている。

クレス侯爵が、この話を聞いてどう対応するか予測が出来ない。

このまま、この二人の冒険者を魔族として殺せば、魔族討伐の功績と、息子の死が魔族が原因と言うことになり今後の動きもやりやすい。


そう判断した所で大爆発が砦から発生した。

最後に黒鎧が投げた魔法の効果であろうか?


今まで味わったことがない爆風の風圧が襲い、大地にしがみついていたが、爆風で飛んでくる殺された兵士達が雨のようにやってくる。

だが、風圧を物ともせずに黒鎧が飛んでくる兵士から私を守り始めた。

私を守る?


大地にしがみつきながら、今までの話をまとめると、噂に聞いた王城での勇者召喚の話を思い出した。

最近、秘密裏に勇者召喚に成功したと言う事だった。


まさか、過去に魔王を打ち滅ぼした勇者様に誤って攻撃してしまったのではなかろうか?

自衛以外で誰も襲っていない上に、伝説に勇者様も確か冒険者だった筈だ。


とんでもない事をしてしまった。

爆風が収まって謝罪すると、情報の隠蔽を条件に見逃して頂いた。

こんな条件を言うと言うことは、やはり勇者様だった。


クレーターになって消えてしまった砦と、そこに駐在していた15万のクレス侯爵の軍勢を思いながら、砦にいたクレス侯爵が生きていない事を悟る。


出来の悪い息子だったが、最後にクレス侯爵の領地を置き土産で持ってきてくれた気がする。

我が子孫には、勇者様には手を出してはいけない事を伝えていこうと判断した。


既に去っていく勇者を見ながらクレス侯爵領をどうやって手に入れるか頭の中で試行錯誤を開始していた。

囚人番号2019号内部規約説明


戦時宇宙法 執行の停止

大規模な戦闘や国家間の戦いの場合は、戦時宇宙法が最優先で適応される。

適応後の解除は、戦闘区域からの離脱および停戦調停によって法の執行が停止する。

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