僕の彼女の攻略法
小夏頃は昼が長く、夜が短い。
さしあたってこの七月の終盤の山中も例外ではないといえよう。ましてや、山奥なのだから少し薄暗くなっただけですぐに夜を感じるだろう。そんな、日もとうに暮れ夜を迎えた頃、僕らのクラスはあるイベントが開催されようとしていた。
「さぁー!いよいよっ、明日は皆さん、特に男子のイン○連中がウハウハしてウッキーモンキーキッキキーしてお楽しみにしているであろう海に行きますっ!ですが……その前にっ、今日は山なんといっても山っ、山ですっ!山さんですっ……さてっ、ここで問題ですっ!山と言えばっ!?はいっ、そこのキザメガネっ!回答プリィーズ!!!」
司会の町田風菜さんが僕に指をさした。ふむ……山、山といえば………
「獣……山には獣がたくさんいます。そう………ケダモノという名の、ね」
「そうですっ!山と言えばっ!暗いっ!オバケっ!オバケがいますっ!多分っ!そこで皆さんにはこれからクジで同じ番号になった人同士でペアを組んでもらい、このキャンプ場を出て少し奥にある神社で今、自分の中にある想いを告白してもらいますっ!何を告白してもらっても結構ですっ!……もしかして『あ、あのっ……ね?実は私……たっくんのこと……(///)』なんて展開がアリアリアリアリ、アリーベデルチっちゃうかもしれませんっ!!!きゃー、桃色白書っ!まさしくこの肝試しというイベントが恋のキューピットとなりえるのかもしれないのですっ!さぁ、ではさっそく始めましょうっ!!!」
アリーべデルチは確かイタリア語さよならだとかそういう意味だったと思うのだが………もしかしたら、今クラスで付き合っている恋人同士がペアになってアリーベデルチっちゃう可能性もあるのかもしれない。もし、そうなったとしたら目も当てられないな。恋のキューピットどころか悪魔のキューピットとなりえるかもしれない。だが、しかし。僕にとってはどうだい?これはチャンスと言う名のR18展開になりえるかもしれないのだ。フフ……ウフフ、フフ……フフ……
「……いっ、直人さんがニヤニヤしていますっ……!」
「……どーせ、コイツの頭の中にはエロイ事で満たされているんでしょうよ。ほっときなさい、まともに相手なんかしてたらキリがないわよ」
「……みゅーん、もうツッコミ遅れだと思いますが、ちなみにさっきの獣とケダモノをかけてる、アレ。全然うまくないですよ」
ルルーの僕を怯えた表情……いい、実にいいじゃないか……そう、例えばルルーとペアになったとしよう。
『ルルー……僕は君に伝えたい事があるんだ……』
『ひっ……嫌ですっ!聞きたくないっ……!聞きたくないですぅ!!!』
ルルーは神社の賽銭前で頭を抱え込みしゃがみながらそんな事を言った。そう、彼女は怯えているのだ。普段僕が彼女の事をオッパイでしか見ていないから自分自身は眼中には無い、そう思い込んでいるのだ。だが、実はそれは違う。僕は決して胸フェチではない。
『ルルー……何をそんなに怯えているんだい?話してごらん』
だが、いくら僕がそれを言葉で伝えたところで伝わるものも伝わらない。だからまず、彼女を解放してやらねばならない。そう、話を聞いてあげることが先決なのだ。
『……うぅ、ひっく……だ、だってぇ』
彼女の頬はすでに涙で濡れており、それを僕は指先ですくい、僕はそれを口でしゃぶり味わった。
『……あっ』
『……しょっぱい。でも、君の心は純粋なんだね……僕のことでこんなに悩んでくれるなんて』
『……あ、あうぅ(///)』
ルルーは頬を真っ赤に染めた。ふふっ、本当に無垢で汚れのない赤ん坊のような可愛らしい子だね、君は。
『……だって、だってぇ』
『……おっと、その先は……もう言わなくていいんだよ?ルルー……僕は君という世界にたった一つしかない『君自身』が好きなんだ。……それだけは分かってほしいんだ』
『……直人、さん』
そして、彼女は僕に身体を預ける。僕は彼女の身体を抱きしめ、彼女の胸に手を持っていくーーーーーそう、僕はオッパイを通して君自身を見ていたんだーーーーー言葉だけでは伝わらなくても二人の身体を重ね合わせれば言葉以上に色々なものが伝わるーーー僕はそう信じている。fin(藤本直人の愛の妄想劇場その1 完)
「ルルー……僕はオッパイを通して無垢で純な……そう、君をじっと見続けているんだよ」
「な、何を言ってるんですか……何か寒気が……いつも以上に気持ち悪いです直人さん、ちょっと私から離れてくれませんか?」
ルルーは何故か身震いしながらクジを引きに行った。
いつもツンツンな君へ送る愛のラブソング……(///)
『なっ!何で私があんたとペアを組まなきゃいけないのよっ!』
七瀬美菜、僕の前で決してデレない僕の愛しの恋人。一方的な僕の押し付け愛だと勘違いする方々が多数いるだろうが実は違う。彼女は……実は僕の前でだけツンでいられる体質なのだ。従って、普段はツンツンでとっつきにくいタイプなのだが、突然のハプニングには結構脆い。まさしく、ジェンガ(?)のようなデリケートな女の子と思ってくれて構わないだろう。
『……僕は、美菜とペアになれて嬉しいよ』
僕は微笑み100%な顔を彼女に向けた。すると彼女は……
『私は嬉しくないわねっ、あんたみたいな変態とペアになるなんて!ほらっ、さっさと終わらすわよっ!』
デレてくれない、当たり前だ。これぐらいの揺さぶりではデレてくれないことは分かっていた。僕はそのまま彼女の後を追って行った。
『………』
そして、森の中。結構暗くて足元はおろか周辺も暗くて辺りはよく見えない。そして、僕は彼女につかず離れず、そのぐらいの距離を保って彼女の後ろについていった。
『………』
彼女は何も言わない。僕も何も言わない。そう、この雰囲気が重要なのだ。こちらから喋ってはいけない。彼女から喋りかけてきても一切無視……それはすごく心痛いことなのだけれど。
『………ねぇ』
10分後、彼女はついに僕に話しかけてきた。しかし……反応してはいけない。ここからなのだ、ツンツン娘の攻略は。僕は返事もせず、じっとその場で立っていた。
『………ねぇ、ねぇっ!聞いてんのっ!?直人っ!?』
彼女は次第に焦りだす。これは僕が狙っていた展開だ。『不安』にさせる。これが重要なのだ。幸い、暗いので僕が返事をしなければ後ろにいるのかいないのか、分からないのだ。
『………ねぇ!聞いてよ……聞いてったらぁ!!!』
彼女は悲痛の叫びを上げる……もう、真っ暗な闇の中で一人は不安すぎるのだろう。だが……もう少し、もう少しだ……彼女が落ちるまで。
『………ねぇ、……うっ、うぅ』
………
『うっ、うぅ……ぐすっ、ひっく……な、なぉ、直人ぉ……』
……やった、ついに……デレた。
『………美菜』
僕は声を上げ、彼女の傍に駆け寄った。
『っ!直人っ!』
彼女は僕に気付くとすぐさま駆け寄り、僕を抱きしめた……あぁ、柔らかい感触が僕を包む……サンドイッチに包まれているようだ……(///)
『……ごめんね、美菜。いぢわるしちゃって……』
『ううんっ!いいっ!そんなことはどうでもいいのっ!直人大好きっ!(///)』
そして、彼女の唇が僕の唇と重なるーーーーーいいんだ、これで。君はツンツンでも、僕は君を愛している。君の、ありのままの君を見せておくれ、それが僕の願いですーーーーーfin(藤本直人の愛の妄想劇場その2 完)
「……美菜、君は君のままでいてくれ……ツンツンな君ーーーーー僕は君を愛している……(///)」
「ルルーは何番だった?」
彼女は既に僕から離れ、ルルーの元に駆け寄っていた。そして、僕は先ほど引いたクジを見つめる。そのクジには『6』と書かれていた。僕はミューたんに駆け寄った。
「ミューたんは何番だったんだい?」
「……9番です」
「そうかい……それは残念、僕は6番だったよ」
「みゅーん、やったぜ、みゅーん」
ミューたんは大喜びしていた。
「でもあれだね、僕が6番でミューたんが9番だったのは残念だけど、僕とミューたんの番号を合わせれば『69』………フフ、何だか数奇な運命を感じるね」
「みゅーん、感じないで下さい、死んでください」
ミューたんは無表情でそんなことを淡々と言った。フフ……素直じゃないウサギちゃんだ。
「嫌いなのかい……じゃあ、もしかして君は……陵辱されるのがお好みだとか……?」
「お前、本当に殺しますよ」
今度は無表情で、しかしながら殺気を僕に放ち、それから彼女は人波に消えていった。フフ、いつか君のその無表情な顔をバリエーション豊かにしてやるぞっ♪
「おーい、6番の可愛い子はどこなんだい?」
僕はペアの女の子を探しているが、なかなか見つからない。うーん……どういうことだろうか?
「……おい、藤本直人」
僕に声を掛けてきたのは……五十嵐幸太郎君。げっそりしている……どうしたのだろうか?
「……なんだい?幸太郎君はもうペアの女の子は見つかったのかい?」
「………」
彼は首を横に振り、無言で僕に紙切れ……クジを見せて来た。そこに書かれていた数字は………『6』という数字だった。




