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第3話 混血の少年と家庭教師

 朝は散々な目に合った。

 8歳児相手に対して、大の大人である父親が本気で来れば、勝てないというものだ。

 といってもその原因を作ったのは自分であると自覚しているし、反省もしている。


 というか反省しないと、また同じ目に合いそうな気がする。

 そう思い自重を心に決めたジークであった。

 しかし子供というのは直ぐに忘れるもので

 また同じような騒動を起こすのに、左程時間はかからないのだが。


 そんなこんなで疲労の極致にあるジークは、父の執務室にいた。

 父の執務室は辺境伯にしては質素であり、嗜好品の類が非常に少なかった。

 これは実用性を重視する、父の性格がにじみ出た場所である。

 

 「しかし僕は何故呼ばれたのでしょうか 」


 早く部屋へと戻って本が読みたいジークは、父の呼び出しに困っていた。

 あの模擬戦の後で呼ばれたのである。

 また、お説教かと憂鬱になる。

 ため息の一つもつきたくなるものだ。


 そんな憂鬱なジークの気持ちをよそに父が執務室に入ってきた。

 ある意味、諦めと覚悟を決めていたジークであったが、父は一人ではなかった。

 紫のローブに包まれた、フードを被った一人の女性を連れてきていたのだ。


 「ジーク。 この人が今日からお前の家庭教師になる。 しっかり学ぶといい 」

 「家庭教師ですか? 」


 ジークが不思議そうな顔をしていると、家庭教師と呼ばれた女性はフードを外した。

 フードを取ったその顔は非常に整っており。

 子供のジークが見てもとても美しく、そして特徴的として耳が尖っていた。

 エルフと呼ばれる種族である。


 「この人はリゼッタ。 お前に魔法と弓術を教えるために来てもらった。 あいさつを 」

 父に紹介されてジークはあいさつをする。


 「はじめまして。 私はレギウス・フォン・シュミットの三男ジルクニス・フォン・シュミットと申します。 まだまだ知らない事だらけなので、色々と教えてください 」


 ジークは先ほどまでの鬱状態とは一転して喜びに満ちていた。

 なにせ自分が知らない知識を得る機会を得たのだ。

 好奇心旺盛なジークとしてはとてもうれしかった。


 そんなジークに対してリゼッタと呼ばれたエルフは笑顔を向ける。


 「私はリゼッタ・アリエスと言います。 あなたの父上とは古い知り合いになるの。 これからよろしくね 」

 「こちらこそよろしくお願いします 」


 そう言ってジークは深々と頭を下げる。

 挨拶が終わったあたりで、父に呼ばれたメイドが扉を開けて入ってきた。

 客人でもあるリゼッタを部屋に案内するためにだ。

 

 「いえ、そんなものは後ででもいいわ。 それより訓練場に行くわ。 30年前と変わらなければこの家にあるわよね 」


 そう言ってリゼッタは客室への案内を断る。

 ジークを連れ出したリゼッタは、まるで自分の家の様に屋敷を進む。

 このシュミット邸には中央の他に東棟と西棟がある。

 リゼッタが向かったのは東棟の地下にある訓練場だ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ジークが連れてこられたのは広く薄暗い部屋だった。

 もの珍しそうにあたりを見回すジークをよそにリゼッタは問いかける。

 

 「まずは貴方がどこまでできるのか知りたいわ。 初級魔法でいいから撃ってもらえる? 」


 その言葉にジークは困惑した。

 なにせ自分は一度も魔法の訓練というのをしたことがなかったのだ。

 父が教えてくれるのは剣術や槍術・馬術といった肉体的な面だけである。

 なので正直に、自分は一度も魔法の訓練をしたことがないと訴えた。


 その言葉に次はリゼッタが困惑した。

 そして少し思案した後に大きくため息を吐いたのである。


 「はぁ……そういえばレギウスは魔法があまり得意ではなかったわね。 生まれ持った身体能力の高さでごり押していたのを今思い出したわ……いいわ。 なら魔力とはなにかといった基礎的な部分から教えてあげる 」


 仕方ないといった様子でリゼッタは基礎部分から始めることにした。

 それに歓喜したのはジークである。

 ジークにとって魔法というのは本の中でしか見たことがなかった。

 

 ジークは元々勉強好きである。

 中々屋敷から外に出る事ができなかったジークは、よく屋敷の書庫に入り浸っていた。

 本で読んだ知識は、ジークにとって世界を広げてくれる材料である。

 ジークは読んだ知識を、父との模擬戦で実践する事で身に着けて行ったのだ。


 しかしジークにとって実践できないものは身に着けようがなかった。

 例えば戦記物にでてくる組織戦術であったり、英雄譚に出てくる魔法もそうである。


 戦術論に関して言えば、当然使えるのはジークの体一つであるために実践のしようがない。

 魔法にかんしても、どうやって使えるようになるのかが解らなかったために、実践の使用がなかった。


 「良いわ。 そうやってやる気に満ちた子は好きよ。 必ずものにしてあげるわ! 」


 その喜びに満ちたジークの表情を見たリゼッタは、満足げに言った。

 こうしてジークにとって初めての魔法訓練が始まるのである。

これから頑張って書いていきたいと思いますので

興味を持っていただけたり、面白いと思っていただければ幸いです

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