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第六話「動き出す」

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 八月三十一日。



「ねえっ! もうやめてよ! 私を苦しめないでっ!!」



 線の細い彼女からは考えられないほど、大きくて絶望に満ちたような高い声が、橋の手すりの上で出される。



 下には川。



 回りには警察や、騒ぎを聞いてやってきた野次馬がわらわらと集まっていた。



「君っやめなさい! そんなことしたら、お父さんやお母さんが悲しむぞ!!」



 若い警官の怒鳴り声を彼女は遮る。



「親なんてもういないわっ! あんなのどうだっていい。あの人が死んだのよ。あっち行ってよ」


 どんどんと語尾が小さくなっていく彼女の言葉は、刺刺しかった。


 わが身を引き千切られたような、悲痛な声が響く。



 たまたま通りかかっただけの若い警官は正義感の強さだけで、彼女を引き止めていた。


 次々と野次馬がきて、それを若い警官が呼んだ警官達が捌いていく。




 彼女はもう、橋から飛び降りようと思った。


 人の目何か気にしなくていい。自分が思うように死のう。



 若い警官に背を向け、遠くまで流れる川を見つめる。



 そして清らかに流れる川の方へ、体重を傾けた。




 けれど、彼女の手に大きな手が被さった。



「えっ?」




「俺が死んだのに、君も【また】死ぬの?」




 暖かな体に抱き寄せられ、彼女はゆっくりと体の力を抜いた。





 甲高い声が更に大きくなり、そして、川の流れがとまる。




《へへへっ! 何でわかった? お前》




 世界は、さっきまでの明るさがなくなり夜へと変わった。


 《光》が彼に話しかける。



「何でって……。まあ、彼女が教えてくれたかな?」



《ああ。やっぱりあれは駄目だったか。へへへへ! 失敗失敗!》



 《光》がお茶目に笑って、彼もニヤリと笑う。




「でもさ、このループも終わりにしないか? もう飽きたろ――」




 そこで、彼女の記憶は途絶える。




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