最終回「その後――」
そして、八月三十一日。午後十二時五十五分。
「ねえ。私は怒ってないよ」
暗い部屋の中で、DVDプレイヤーの光だけが光源であり、静かな空気を振動させてくれるものでもあった。
「何百回も何千回も繰り返したんだろ? 俺、数回でしんどかったよ。同じことばっか起こって」
ぎゅっと、彼女の手を握ると握り返してくれる。冷房の効いた部屋だからか、彼女の手はひんやりしている。
「でもさ、あのときは嬉しかったわよ」
「あのとき?」
「初めて彼女ができて嬉しかったってとこ」
「……」
は、恥ずかしいんだけど。
暗くて良かった。火照ってる顔が彼女にはきっとわからない。
「そ、そうか」
無愛想にそう言うと、彼女の手が顔に添えられ、柔らかな唇が俺の唇に押し付けられた。
てか、ばれたな。
「私は……あなたを世界中の誰よりも愛しています」
DVDプレイヤーの光が、彼女の色目かしい表情を見せてくれる。
じゃあ、俺はとびっきりの笑顔で返してみよう。
「一生、愛してる!」
彼女は嬉しそうに、口角を上げた。
うん。可愛い。
ここまで長く、ありがとうございました。
連続投稿となりました。文字数自体はそんなにも多くなかったとは思いますが、私自身、かなり悩んだものでもありました。
よければ、他のものも読んでいただけると嬉しく思います。
では。ここまで読んでくださり、ありがとうございましたm(__)m