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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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「ごむだっく」のお店と勇者

商業ギルドから歩いて十分ほど。


貴族街と異なり、「一の門」の内側にある商業エリアでは徒歩でも特に問題はない。


カーモ家は荷馬車の行き交う大通りから少し外れた一角に、こじんまりとした店舗兼邸宅を構えていた。


貴族というよりは少しだけ裕福な商人の家といった雰囲気をかもし出している。


相変わらず僕の翻訳機能がバグっているのか、店の前に掲げられた縦一メートル、横三メートルほどの看板には白地に黒で「ごむだっく」とひらがなで書かれ、同じように黒色であひるのおもちゃのシルエットが刻まれていた。


「いらっしゃいませ!」


黄色の布地に黒色であひるのシルエットが描かれたエプロンをつけた女性が出迎えてくれた。


先ほどの冒険者ギルドで立ち聞きの最前列に陣取っていたあの人だ。


名前を聞きそびれてそのままでした。


彼女の案内で店に入る僕とコルトさん。


「お、おまちください!」


僕を追ってきた見張り役、もとい案内役のローザさんと。


「ぐわっ!」


何故かあひるちゃんも大慌てで走ってきた。


「まてーーーーー!」


自走するあひるのおもちゃはかなり目立ったようで、あひるちゃんの後ろには十数人ほどの見知らぬお子様が!


皆それなりの身なりをしているので、この辺に住む商人の子だろうかと勝手に判断する。とりあえず保護の必要はなさそうだ。


「きゃーーーーーーー!」


なぜか回れ右をして戻っていくお子様達。


お子様達は武器を携えた兵士の姿を見て逃げ出したようだ。しかし何故に武装した兵士が?


---


大き目の魔導ガラスで光をふんだんに取り入れたショールームといった感じの、三十メートル四方ほどの店内。


ひとつのテーブルに四脚のいすを置いたセットが五つほどあり、お互いのテーブルが見えにくいよう人の背丈ほどの衝立が設けらていた。


店の壁には作りつけの棚があり、その上には大小のあひるちゃんらしき黄色い鳥のほか、何かの部品と思しき物体がいくつか展示されている。


壁の展示物を注視する僕に、先ほどの最前列の女性が声を掛けてきた。


「「ごむだっく」は主に卸売りをしておりまして…」


もちろんバラ売りも!とあわてて補足説明が入った。


大きな「ごむだっく」は主にグランディオーラとタングラートの貴族向けに作られるものらしい。


手のひらサイズの物はグランディオーラ内だけで流通しているようだ。


---


女性と話していると、商店の主であるカーモ男爵が店の奥から現れた。


僕が預言書の勇者だとコルトさんから説明があり、慌てふためいていた。


彼に「ごむだっく」をいくつか譲ってほしいとお願いしたところ…。


「その…おしゃべりをしたり、自分で動くようなものは当店では…それに…」


店内をフリーダムに走り回る「あひるちゃん」を見て青ざめている。


「いえ、逆に動き回らないものが欲しいんです。おしゃべり機能も無しで!」


お風呂の中で合唱されたらとんでもなく賑やかになるだろう。歌うあひるちゃんは一人で十分ですよ!


「ぐえ?」


あざとい角度で首をかしげるあひるちゃん。


「大変申し訳ありませんが、今はそれほど数をご用意できず…」


今はとある部品を重点的に作っており、人も材料も不足していると、青ざめた顔になるカーモ男爵。


部品についてはグランディオーラからの注文であり、用途も不明と言う。


外に立つ兵士はその部品を守るために居ると、消え入りそうな声で説明を。


それでも製造元が分かっただけでも良かったと伝え、店を後にした。


---


兵士の立つあの場所では聞きづらかったので、商業ギルドに戻ってからコルトさんとお話タイムである。


カーモ家が男爵として取立てられた理由、それは鉱脈に混じる「やわらかな鉱石」に由来するという。


それまでは特に使い道もなく、量もそれほど出ないために放置されることが多かったようだ。


「カーモが冒険者をしていた頃に古代遺跡で見つけた準アーティファクトがきっかけとなったのだ。それに「やわらかな鉱石」を入れると「ごむだっく」が生み出されると分かってのう」


その準アーティファクトは「ごむだっく」だけでなく、他にも数種類の物体を作れるらしい。


「準アーティファクトは国への登録が必須だ。その準アーティファクトが作る物体に国が目をつけ、カーモを男爵に取り立てたのだ」


同時に冒険者から商人へと鞍替え。グランディオーラでは駆け出しの商人が資金集めのために冒険者を兼ねることも多く、商人に鞍替えするのは特別なことではないらしい。


こうしてカーモ氏は男爵となり、グランディオーラでただ一軒「ごむだっく」の製造卸販売をすることに。


貴族へ取立てたのはむやみに権利を譲渡させないための足枷だろうか。と、考える僕。

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