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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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デートインポッシブル

要人護衛と書いて「デート」と読むようです。

護衛対象とのいちゃいちゃはアレなフラグにしかなりません。

倒れてもなおオーバーキル前提の決闘をするのか、血で血を洗う血の池地獄にでも突き落とされるのか。


そう身構えていた。


---


しかし今、僕はいつもの屋台村に向かっている。


魔族の長、ハイランダー国王から出された条件とは。


「今から娘を連れて人通りの多い場所に行き、護衛のテストを受けてもらおう。何が起こるかは伏せる。もちろん周囲の人間には危害が及ばぬよう配慮する」


という脅し文句をもらい、サフランをつれて護衛試験の最中というわけだ。


お子様ズはお留守番である。もえもそうだが、シルフィール姫が非常にご機嫌斜めになっていた。あとでお土産を買ってご機嫌を取ろう。


「「マスターいってらっしゃい!」です!」

双子はいつもどおりマイペースであった。


サフランは行きかう人たちを興味深そうに見ている。


僕も行きかう人を眺めていると、熊ガールがこちらに向かってきた。どうでもいいことだが山ガールが進化すると山姥やまんばになるらしい。みんなも山に行くときは気をつけよう!


「「精霊のもてなし亭」の女将さん!」


「色男じゃないかい!あれ、そちらの別嬪さんは?まさかナタリアから乗り換えたわけじゃ…なさそうだね!」


サフランはあまりの剣幕に僕の後ろに隠れてしまう。


僕の周りに居るおせっかい精霊がなにかまくし立てているが、僕には分からない言語だ。


「ふーん、色男もいろいろ大変だねぇ」


おせっかい精霊がさらに情報を提供しているようだ。


「すっかり聞きそびれてましたがナタリアさんの宿代、どうしましょう?」


「宿代?そんなのもらうつもりなんてこれっぽっちもないよ!それに、色男はうちの姪を連れてきてくれたし、逆にお礼がしたいくらいさ!」


腰に手を当てて、二の腕をぶるぶると揺らして笑う女将さん。


今朝その姪、精霊女王が国へ帰った話をするとニヤニヤと意味ありげな笑い方をする。いやな予感しかしない。


「それじゃ買い物があるから失礼するよ!ナタリアによろしくな!」


おせっかい精霊は「買い物じゃないよねー見回りだよねー」と僕に話しかける。女将さんもまたおせっかい精霊なのだ。


困っている女の子を見つけては自分の宿に連れて行って世話をする。ぼろくなった宿や傾いた看板を修理するお金があったら人助けに使ってしまうのだろう。


サフランがおどおどしながら僕に尋ねる。


「あの、今の方は…お知り合いなのですか?」


女将さんと知り合うきっかけとなった大量の魔獣に襲われていたナタリアを助けたいきさつを、ところどころ端折って説明する。今のグリズリーガールが精霊かもしれないというのは伏せておいた。


どうやら魔族の住む場所でも魔獣が活発になっているらしい。


一応念の為に、この世界では魔族と魔獣はまったく関係がない。むしろ敵である。


魔獣への警戒はしていたが、まさか自分が誘拐されるとは思っていなかったという。


「あの…大丈夫でしょうか?」


また誘拐されるかもしれない。見るからに頼りなさそうな僕を見上げて不安な顔をするサフラン。


「僕の仲間とお父さんの部下が見張っているから大丈夫だよ」


ソネッタさんとカレラさん、あとは名前は分からないけれどいつも付き添ってくれている影の人たち、ハイランダー国王の家臣が気配を消して守ってくれている。


僕が守るとはいえない。弱いから!


サフランは周囲を見回すが当然何も見えない。


「なぜ分かるのです?」


「とても親切でやさしい精霊がいて、僕にいろいろと教えてくれるんだ」


わざとおだてるように言うと、精霊が一瞬光の玉になって現れて、すぐに姿を消す。


「…………!」


サフランの目が点になる。


「目に見えない精霊と会話が出来るのですか!」


精霊に好かれていてたまに声が聞こえること、精霊にとっては僕の魔力がおいしいらしいことをかいつまんで説明する。


サフランは僕の手をとり、自分の平地へと引き寄せる。

人通りが少なくてよかった。

おまわりさん僕です!


後ろのほうで物音がした。たぶんハイランダー国王だろう。ソネッタさんあたりが押さえつけてるに違いない。

そこまで娘ラブなら僕に護衛しろなんて言うんじゃない!と心の中でツッコミをする。


「確かに、勇者様の魔力には不思議な波長を感じます」


そこに割り込んできて、あまっていた僕の手を乱暴に取って同じような動作をする少女1人。エクセレント山脈の渓谷が肩掛けかばんによって加速されている。


「ボクのもさわってみるか!おっぱい魔獣!」


いや、いま触っているわけじゃない!サフランは顔を真っ赤にして僕の手を離してしまった。


「お、おおう。ア、アイリスさん、今日は仕事ですか?」


いきなりの登場は心臓に悪い。


「今日は学校に行く日だ!暇だったらあとで稽古つけてくれよ!おっぱい魔獣!」


アイリスはいつものようにしぱぱぱぱぱぱぱと走っていった。


ん?何か落としていった。本のようだ。


「アイリスー!本!!!!!」


既に視界から消えていた。


「まいったなぁ。あいつ、これがないと勉強できないんじゃ」


サフランは遠慮がちに言う。

「あの、届けに行きませんか?学校?という場所に行けば今の方に会えるのでは?」


「サフランさえよければ。屋台村はその後でもいいかな?」


「はい!」


屋台村近くにある学校を目指す。


---


学校というが、もともとあった3階建ての倉庫に間仕切りをしただけの簡素なつくりである。


そろそろ授業が始まるのか、中に入っていく生徒は居ない。

だれかに届けてもらうよう頼もうかと思ったけれどそうもいかないようだ。


入り口には守衛所があるが、いるのはお年寄り。

ウサギのような耳があり、白いひげを蓄えてなんともいえない存在感がある。


「あの、アイリスという娘に本を届けに来たのですが。今日はこちらで勉強があると言ってたのでこれがないと困るんじゃないかと思いまして」


学校というのはなぜか緊張する。


耳をぴくぴくさせて、校舎という名の倉庫の奥を指差す。自分で届けろということらしい。


「二階の奥だ。用が済んだらすぐに出て」


「失礼します!」


---


「あっれーおかしいなー。部屋を出るときにはあったのに」


「アイリス、また忘れ物!しっかりしてね!」


女子同士のたわいないおしゃべりが聞こえる。どうやらここで間違いないらしい。


トントントン。


いちおうドアというか開閉式の間仕切りをノックする。


「はい、あの?どちらさま?」


間仕切りの近くに居た少女が来てくれた。種族はわからないけれど、やわらかそうなグレーの毛が生えた耳がせわしなく動いている。


「はい、アイリスさんにお届けものです」


そういってさっき拾った本を見せる。


「アイリスー!おとこのひとー!本を届けてくれたって!」


声でかいな!


いまのおとこのひとが点火装置となり、教室にいた女子が仕掛け花火のように色めきたった。


「アイリスに彼氏?」

「男勝りのアイリスに?」

「でもちょっと頼りない感じ?」


最後で失火した!ずいぶんな言われようだ。当のアイリスはいつもと様子が違いすぎる。


「ゆ、ゆうしゃさま、わ、わざわざとどけてくくだだださり、あ、あり」


ここまで言うと僕の手から本をひったくって自分の席に戻っていった。


「あとでうちに来いよ!稽古してやるから!」


ちょっとだけいじわるをして、その場を後にする。


「え?勇者様!」

「アイリスどこで知り合ったの!」


入れ替わりに教師らしき人が来て騒ぎは収束した。ちなみにメガネ女教師である。

狐耳の。


守衛さんに挨拶をして学校を後にする。


---


ようやく屋台村である。


定番メニュー4点セット(やきそば、お好み焼き、クラーケン焼き、串焼き肉)と果汁水を買う。

とりわけ用に木のお皿も借りる。


軍資金はいつもの(ry


屋台から少し離れた場所に席を取った。


サフランは何か物思いにふけっている。


「サフランどうしたの?」


「先ほどの学校という場所について少し考えていました。勉強というのは家庭教師がついて一対一で私語も許されずにやるものだとずっと思っていましたので」


ここの学校の制度について、知っている範囲でサフランに説明する。働きながら読み書きを習っていることや、アイリスたちと知り合うきっかけとなった腐敗兵士の話もすこしだけ。


シルフィール姫もそうだけど、サフランは同年代の子と接する機会はほとんど無いんだろうな。


「サフランは友達と一緒に勉強してみたい?」


「たぶん無理です…父上が許してくれません」


サフランはしょんぼりしてしまう。


「ハイランダー国王に掛け合ってみるよ。一人で勉強するより誰かが居たほうが励みになるから」


サフランにすこしだけ笑顔が戻った。


お皿などを返却場所に戻し、お土産を買って「自宅」へ戻ることにした。


人通りがなくなるのを見計らいようやく現れる試験官、ハイランダー国王とその家臣。


サフランにお土産をまかせ、腰につけていた短剣状態の「テイルズオブドラグーン」に手を伸ばす。

ついに動き出したハイランダー国王。

平地とかうっかり触ってしまった勇者は夕日を拝めるのか!


次回:どーたーこんぷれっくす(仮題)

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