不意打ち
城の外に迫るゴーレム。その手には何かが入った檻が!
城に近づいてきたゴーレムの目の前に赤竜王を着地させる。
先頭にいたのは赤竜王より若干大きめのゴーレム。胸の部分には水槽のようなものがはめ込まれ、おなじみの緑色の液体の中に何かが浮いている。
そのゴーレムの後ろには4体の小型ゴーレム。このゴーレムにも水槽がついていて、うち1体が檻のようなものを抱えていた。
檻の中には誰かが入っているようだが、半分ほど覆いがかぶせられ中はよく見えない。いずれにしてもうかつに攻撃はできない。
先頭のゴーレムからくぐもった声が聞こえる。
「私、ラクーンこそが勇者!ライスリッチフィールド城に乗り込み、偽勇者と国王を倒す。そして世界を救うのは私だ!そこの貧弱なゴーレム!どかなければ、いやどかなくても破壊する!」
「くらえ!ファイヤボール!」
先頭のゴーレムの指先から無数の火の玉がが放たれる!
ずだだだだだだだだん!
赤竜王は火柱に包まれるが、すべて無効化している。
「ラクーン?あのとき逃げたラクーン大臣か!」
赤竜王の魔導拡声器でラクーンと思われる人物に問いかける。
「そ、その声は偽勇者!きさまいつの間にゴーレムを!」
ラクーンは若干うろたえているのか、ゴーレムの攻撃を中断し二、三歩後ずさりする。
しかし、ラクーンには別の意図があった。
「スレイブゴーレム接続!強化ファイヤボール発射!」
4体の小型ゴーレムが先頭のゴーレムにワイヤのようなものを接続する。
「あるじさま!ゴーレムの魔力が増大しています!」
もえが赤竜王のコンソールを覗き込みながら何か操作をしている。
先頭のゴーレムは先ほどの数倍の大きさのファイヤボールを撃ち出してきた!
「おおおおおおおおおおう」
「あるじさま!」
赤竜王のコクピット内がはげしくゆれる。
ちなみに叫んでいるのは精霊女王だ。
もえは僕にしがみついている。
「はははははは!これで偽勇者も?」
無傷で立つ赤竜王。
ついにラクーンが切れた!
「偽勇者よ!これを見るがいい!」
小型ゴーレムが抱えていた檻の覆いが取り払われる。
「…犬?」
檻の中には野犬と思われる犬が20頭近く入れられていた。さらによく見れば小型のゴーレムの中に閉じ込められているのも犬のようだ。
「この犬どもを助けたければ、その貧弱なゴーレムから降りて勝負しろ!」
このさわぎを聞きつけて、様子を見るために集まっていた群衆から湧き上がるブーイング。
「犬を盾にするとは卑怯だぞ!」
「それでも元大臣か!恥を知れ!」
ラクーンは群集の罵声には一切答えない。
檻の中からつぶらな瞳でこちらを見つめる犬たち。
もえから「ザ・シード」を預かり、双子に赤竜王の操縦を任せる。
僕は赤竜王のハッチを開き、コクピットの外に出る。
犬とはいえ見殺しにはできない。
「偽勇者よ、いざ尋常に勝負」
どこが尋常なんだ!と突っ込みたい気持ちを抑える。
あのファイヤボールをまともに受ければ身の破滅だ。
まだか…まだか…。
ファイヤボールが撃ち出されるのをじっと待つ。
ふと、ラクーンのゴーレムの後方を見ると、何かが高速で近づいてくるのが見える。
「新手の敵か?」
「ゴーレム?いや自動人形?」
「わるいやつをやっつけます!」
近づいてきた何かは、アニメキャラのような甲高い声を上げる。
声の主はラクーンのゴーレムの近くまで来ると突然、小型のゴーレムに攻撃を仕掛けた!
小型ゴーレムが糸の切れた操り人形のように倒れ、背中のハッチが開くと中に閉じ込められていた犬が飛び出した!
次々と倒される小型ゴーレム。そして檻を抱えたゴーレムも倒れ、その弾みに開いた檻から犬たちが大脱出!
犬たちは散り散りになって逃げて行き、ラクーンが乗るゴーレムだけが残された。
「シース!レーネ!もえ!ラクーンを避けて攻撃だ」
「「「ジャッジメントレーザー発射」なの」です!」
三人の声と共に赤竜王からまばゆいばかりの光が放たれ、ラクーンのゴーレムの手足を蒸発させる!
大量の土煙が上がり、視界をさえぎる。
しばらくして土ぼこりが納まり、頭と胴体だけとなったゴーレムからラクーンが放り出された。
緑色の液体と土ぼこりまみれのラクーンは、僕をにらむ。
「ラクーン、もうあきらめておとなしく降参するんだ」
城から衛兵やバラの騎士団のみなさんが駆けつけ、ラクーンを取り押さえようとした瞬間。
「偽勇者よ!死ぬのだ!」
ラクーンが懐から何かを取り出し、操作をする。
倒れたゴーレムの頭部が突然光ると、僕に向けて打ち出された!
「うわっ!!!!!!」
「ザ・シード」で打ち出された頭部を受け止めるも、勢いを抑えられず僕は弾き飛ばされ、何回か空中で回ったあと、なすすべもなく地面にたたきつけられた。
「……………………!」
姫さまの精霊の加護が切れていたため、衝撃をまともに受けてしまう。
「エイト!」
「あるじさま!」
「「マスター!!」」
双子達が走ってくるのが見えるが、体を動かすことができない。
痛みを感じないのは、精霊女王の分身が宿っているせいか、それとも。
「エイト、しっかりするのだ!」
精霊女王が傷ついた僕の様子を見て非常に焦っていのが伝わってくる。
「勇者さまーー!」
「お兄さーーん!」
姫さまとフィリーが来てくれたようだ。だんだんと視界がかすんできた。
突然のことに騒然とする周囲の悲鳴や怒号が徐々に小さくなる。
僕はこの「世界」を救えずにここで終わるのか。
妙に冷めた感情と共に、意識は深い闇に吸い込まれる。
勇者はこのまま死んでしまうのか!
今度は誰が主役を張るのか!
次回 妖精フィリー(仮題)




