たぬきふたたび
既に忘れ去られていたあの人がやってきます!
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ここは某国のゴーレム工房。
精霊ゴーレムに改良を加えた中型ゴーレム1体と小型のスレーブゴーレム4体がロールアウトを控えていた。
人間に術をかけ、強力な魔力の供給源となる「よりしろ」を作り出す魔族の娘がさらわれた為、数体のスレーブゴーレムを用意し、不足した魔力の供給源とする仕様に変更された。
深夜、ゴーレムを仕上げていた術者たちが歓声を上げる。
「預言書の偽勇者を倒せ。そして我らが真の勇者に!」
その隙に乗じて、背後から襲い掛かる者がいた。
「だ、だれだ!なんだこの小型ゴーレムは?うわっ!」
その場にいたゴーレムを仕上げていた術者数人が、突然乱入した小型ゴーレムにより無力化された。
「ようやく見つけましたよ。こんないいものを隠しているなんて。私の金で作ったのだから、これは私のものです」
小型ゴーレムの影から姿を現した侵入者。そのシルエットはどことなく、瀬戸物のたぬきを連想させる。
長い間の逃亡生活でやつれきってはいたが、体型は変わらなかった。
侵入者は中型ゴーレムの傍らにあった仕様書に目を通す。彼はゴーレムに関してかなりの知識を持っていた。ゴーレムおたくといっても過言ではない。
「ふむ、マスターゴーレムは魔果実を取り込んだ術者を「よりしろ」に動くのか。スレーブゴーレムからの魔力供給?」
4体のスレーブゴーレムには既に「よりしろ」が取り込まれていた。
「私こそが勇者。今度こそ偽勇者とあの国王を倒しましょう。そして世界を救うのです」
侵入者は仕様書の傍らにあった黒い丸薬を何のためらいも無く飲み込むと、中型ゴーレムの胴体に埋め込まれた緑色の液体が満たされた水槽に体を沈めた。
中型ゴーレムに命が吹き込まれ、起動した。4体のスレーブゴーレムもそれに呼応する。
「こ…これは!ゴーレムと意識を一体化できるとは!」
ゴーレムを通して鮮明になった視界。工房の片隅に置かれた檻に入れられた何かを見つける。
「あの偽勇者のけん制に使えそうですね。君たちも一緒に連れて行きましょう」
5体のゴーレムは工房の扉を破壊すると夜の闇に消えた。
侵入者が操っていた小型のゴーレムは追っ手を足止めするため、その場に残された。
暴れん坊ローブ事件での戦闘で破壊を免れた1体。
ゴーレム強奪の一部始終を見守っていた、いたずらな浮遊精霊が、このゴーレムに目をつけた。
「私の体になってみる?」
命令を実行するだけのゴーレムに自我は無い。沈黙を肯定と受け取った精霊は、ゴーレムに乗り移る。
ゴーレムはその不恰好な体を強制的に「作り変え」られる。
そしてこのゴーレムも闇へと消えた。
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ところ変わって勇者の「自宅」
屋台村に派遣した買出し班が戻ったころ、ようやく魔族の少女が目を覚ます。
少女は目つきのするどいメイドさん改めカレラさん(仮名)にぴったりと張り付いている。
「ねえ?おなかすかない?」
僕の問いかけに少女は首を横に振るが、少女のおなかは「ぐー」と返事をした。
「いまの、ち、ちがう!」
傍らにいた姫さまを見ると、わたし?という表情になる。
「「マスター!おなかすいたー」ですー」
双子が駆け寄ってきて僕にしがみつく。
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少女はカレラさんから手渡された串焼き肉をもそもそと食べながらも、僕への警戒を怠らない。
僕が口を開こうとすると。
「人形の術は使わない!」
「その人形の術ってどういうものなの?」
少女は知っているのになぜ聞くのという感じで説明をしてくれた。
「人形の術は、魔力を生み出す「よりしろ」を作るための術。生贄に術を掛け、術が掛かっている間「よりしろ」は普段の何十倍もの魔力を放出できる」
「その代償として術者には「よりしろ」の声がずっと聞こえる。術者が「よりしろ」を開放するか…「よりしろ」が死ぬか…」
「私は、ある精霊にその術を掛けるよう強制され…ずっと声が聞こえていたのに…聞こえなくなって」
「エイト、帰ったぞー、おお、今日のお昼は屋台の食べ物か!わらわにも串焼き肉を」
精霊女王が帰ってきた。
「そう、こんな感じの声…?あのときの精霊さん?」
「エイト、そこの魔人は客人か?」
そういえば入れ違いになっていたこの二人。
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「精霊さんごめんなさい。本当にごめんなさい」
少女はぼろぼろと涙をこぼす。
「わらわはゴーレムに取り込まれたときの記憶があまりないのでな。そのように謝られても困るのだ」
結果的に僕が精霊女王を解放したことを少女に説明した。
そして、勇者を名乗る一団と僕とは関係も無いことを改めて伝えた。
結果的にまた泣かせてしまった。
双子ともえが少女を慰めるのを見ながら、僕はちょっと焦げ目のついたお好み焼きを食べようとした。
「あれ?僕のおこのみやき?」
カレラさんのほっぺたにソースがついていた。
「にげるときに食べ損ねたから、今食べる」
相変わらずよくわからない。今回カレラさんは大活躍だったのでお好み焼きくらい。
ふとテーブルの上を見ると、クラーケン焼きがいくつか残るだけであった。犯人は遅れてやってきた奴!
姫さまと精霊女王、二人ともリスのようにほっぺたを膨らませた顔を見合わせていた。
この二人はいろいろと共通点が多い。山脈のサイズを除いて。
あとは十六夜さんからの情報待ちだ。
残ったクラーケン焼きをめぐって精霊女王と爪楊枝を戦わせていたそのとき!
「た!たいへんです!ゴーレムが!数体のゴーレムが城のそばに迫っています!」
マーガレットさんが叫びながら走りこんできた!
「「マスター!出動なの」です!」
「あるじさま!」
僕はもえを抱えると、「自宅」の庭先に停めてある赤竜王に乗り込む。
双子は光の玉となり、赤竜王へと吸い込まれた。
「わらわもいくぞ!」
隣には精霊女王がちゃっかり乗り込んでいた。
状況がわからないので、姫さまには留守番をお願いした。
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いつの間にか長距離ジャンプが可能になっていた赤竜王を城の外へと飛ばす。
「あ!あれか!」
眼下にサイズの違う数体のゴーレムが見える。
もえが追加してくれた武器で攻撃をしようと思ったが、ゴーレムの手に何かが乗っている。
「檻?だれか中に居る!」




