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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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わらわと契約(エンゲージ)せよ!白い精霊女王現る

ゴーレムから投げ出された精霊の運命は!

精霊は何かの力に守られているのか、空中にとどまっていた。しかしゆっくりだが、確実に降下している。


下は魔素の泥だ。うっかり落ちてしまったら大変なことになる。


「間に合え!」


赤竜王を精霊の落下予想地点へ走らせる。

足元が淡く光り、魔素の泥の上からすこし浮きあがっている。これも魔導結界のようだ。

僕は赤竜王を走らせたままコクピットを開放して外に出て、すんでのところで精霊を抱きとめる。


「おおおおおっと」

「勇者さま!」


勢いあまって落ちる寸前だったが、姫さまがひっぱってくれた。


精霊を抱えて操縦席に戻り、赤竜王を屋敷の方向へと移動させることにした。


精霊の様子を見るために薄暗いコクピットの天井に手を伸ばし、室内灯を点灯する。

LEDの人工的な光に照らし出された精霊は、人間の赤ん坊くらいの大きさだがメリハリのある体つき。白みを帯びたプラチナ色の髪。背中には虹色に光る羽がはえている。


ものすごく出来のいい1/3ドールのような感じだ。


「勇者さま、精霊をそんな目で見てはだめです!」


姫さまに釘をさされる。


困ったことに精霊は全裸である。


---


森ではまだファイヤボールが飛び火した炎がところどころでくすぶっており、手の空いた騎士や魔導士が消火に当たっていたがそろそろ終わりそうな感じだ。


屋敷の庭に赤竜王を止め、精霊を抱えて一度降りる。



「勇者さん!」

「リーダー!」

「お兄さん!」


気がつくとルティリナはいつものお子様体型に戻っていた。

地精霊は力を使いすぎたのか、ずいぶんと縮んで双子くらいのサイズになっていた。


ルティリナに落ちてきた精霊を預け、姫さまともえをコクピットからおろす。操縦席にはいつのまにか赤竜王から分離した双子が座っていて、幸せそうな顔をして寝息を立てていた。


フィリーもヒールをがんばったのだろう、メイド服があちこち煤だらけだ。


「ルティリナ、地精霊、フィリーありがとう!」


「すこし張り切りすぎてしまいましたので、あとで吸わせてもらってもよろしいかしら?」

「リーダー!ルティリナがんばった!ごほうび!」

「お兄さんのごほうびほしいな…」


勇者のエネルギーはこのまま枯渇するのか!ゆゆしきエネルギー問題が勃発した。


テスラは屋敷から飛び出してきた状態で固まっている。いまだに放心状態である。


屋敷からエキドナさんが走ってきた。


「テスラ!お父様の意識が戻りました!」


「おとうさまが!!」


何かにはじかれたようにテスラが屋敷に戻る。


テスラの後姿を見送る。


「みんな疲れてるだろうから、お屋敷の客間で休憩させてもらおう。マーガレットさんも心配だ」


夜が明けてきた。


漆黒のベールが消え、徐々に周囲の惨状が見えてきた。


ドラクさん、この状態を見ても大丈夫かな。


大小のクレーターができた屋敷の庭や、所々煙が上がり木々がなぎ倒された森を朝日が照らし出していた。


---


屋敷の客間で休憩を取る。

マーガレットさんは寝室に運ばれ、ものすごい寝相で就寝中だ。

眠っているもえと双子を寝室に運び、僕は地精霊とルティリナに「吸われ」ていた。

フィリーは頭をなでなでしたら満足したようでそのまま寝てしまった。

姫さまはその様子を若干不満そうに眺めている。


地精霊は最初会った時の少女の姿に、ルティリナは傷だらけだった体が元に戻っている。

魔力なのか生命力なのか、ぐんぐんと吸いだされる感覚はあるものの、特に問題はなさそうだ。

ひとしきり吸い出した後、ルティリナは「はうはうどっぐ」に戻って眠りに落ちた。


そして僕のひざの上には助け出した精霊がしずかに寝息を立てている。全裸なので寝室からシーツを拝借して巻きつけてある。


地精霊にこの精霊のことを聞いてみた。

自分よりも高位の精霊ではあるがそれ以上はわからないという。


「もしかすると、王族の…」


地精霊は言葉を濁した。


テスラとエキドナさんが客間にやってきた。

ドラクさんは熱が下がり、一度意識が戻ったが大事をとってもう少し寝かせるそうだ。


その後からソネッタさんが現れる。

「術者が行動不能になり、呪いが解けたのかもしれません」

その術者は屋敷の庭先で魔素の泥を浄化されているというが、まだ気絶中らしい。


「んん…」


ひざの上の精霊が目を覚ましたようだ。


「…」


僕と目があった。


「おいしそう」


寝ぼけてるのかな、この子(精霊)。


「ん!んんんーーーーーーーーーー」


精霊がいきなり「吸い付いて」きた!


「勇者さま!離れて!」


姫さまが精霊を引き剥がそうと引っ張っているが、ものすごい力で吸い付いている。


精霊の体が輝き、どんどん大きくなる。


「ぷはっ!」


体感で地精霊の100倍くらい吸われようやく開放される。


目の前には20歳くらいだろうか、いろいろと超越したプロポーションの女性がひざの上にいる。


全裸で。


なぜか僕を見るソネッタさんの表情が怖い。テスラも目が怖い。

一番怖いのは姫さまだ。


僕の膝にまたがり、いろいろと目のやり場に困る状態で女性が口を開く。


「わらわは精霊の女王。こたびはあの忌まわしいゴーレムから救っていただき感謝する。さっそくであるが、褒美を取らせよう」


「ちょっとまってください!」


「どうしたのだ。そんな真っ赤な顔をして」


僕は精霊女王をひざから降ろし、さきほどのシーツを巻きつけさせてもらった。


「ところで、どうして女王さまも人の生気を吸うのですか?」


「一度人の体になじんだ魔力は美味なのだ。エーテルだけでも生きられるがあれは味が無いのだ。それに、そなたの生気、いや魔力はとても澄んでおって何度でも吸いたくなる」


地精霊が力強く同意している。


ぐるめなせいれいこわい。


---


「精霊の国でクーデターですか!」


地精霊が驚いて紅茶をこぼしそうになる。王女の気配を感じて出てきた姫さまの中の3色団子も驚きを隠せないようだ。


「わらわは捕らえられ、おかしな入れ物に閉じ込められ正気を失っておった。それをエイトに助けられたというわけだ」


「あの、どうして名前をご存知で」


「先ほど「記憶」の一部も吸い出したのでな」


精霊怖い。そういえば地精霊にも記憶を見られている。


「話の続きだ。エイトに褒美を取らせよう。おぬしの欲しているものもわかっておる。精霊の加護であろう」


「さぁ、わらわを食うのだ。遠慮はいらん」


「今なんとおっしゃいました?」


「わらわがおぬしの専属精霊になると言っておる。さぁ契約エンゲージして分身を食うのだ!」


契約エンゲージは魂を融合させ、わらわの分身をエイトの体に植えつける儀式だ。エイトもわらわにも痛みは無い。安心するがよい」


一連のやり取りを聞いていた姫さまが口を開く。


「勇者さま…わたしを、シルフィールを食べてください!その方にできるのならわたしにもできるはずです!」


「シルフィール姫?」


「精霊を複数宿しているとはいえ、人の子であるそなたが契約エンゲージなど無理な話だ。いきなり何を言い出す」


姫さまは精霊女王を見据えて言う。


「国を追われた女王さまが、国を取り返すために勇者さまを利用しようとしている、それを阻止するためです!」


精霊女王は「ほぉ」と意外そうな顔をする。


「たしかに戦力としてエイトを利用するというのは魅力的な話だが、なぜそう思ったのだ?」


「あなたの目を見ればわかります。欲に駆られ、自身のためだけに力を振るう人と同じ目をしています」


姫さまに取り入るために数え切れないほどの人間が訪れ、その醜態を見てきたからこそだろうか。


精霊女王は冷ややかな目で姫さまを見る。


「わらわが私利私欲のためにエイトを利用するというのであれば、この国も似たようなものではないか。先ほどエイトから取り込んだ記憶で見させてもらった」


「それは…」


姫さまが言葉に詰まる。


僕は女王の言い方にすこしむっとした。


「僕が姫さまに協力するのは世界を救うことに同意したからです。女王さまが無理やり力を貸せというのであればお断りしますが、状況によってはお力になれるかもしれません」


あのゴーレムは間違いなくゴーレム犯とつながりがある。そうなれば精霊国のクーデターも何かしら関連があるかもしれないと説明した。


精霊女王は徐々に落ち着いてきたのか、言葉のトーンが低くなった。


「そうか…無理を言ってすまなかった。いきなり連れ出されてあのような物に縛り付けられ、気が動転しておった」


「わらわの国の件はひとまず置いておく。すこし焦りすぎたようだ。先ほどの戦闘、途中から意識が戻って見ていたが、そのお嬢さんをかばって戦うのは危険であろう。今回は仮契約ということで」


「ん!んんんん!」


「女王さま何を!」


姫さまがあわてて引き剥がそうとする。精霊女王に巻きつけたシーツがはだけ、豊穣な山脈があらわになり僕におしつけられる。


精霊女王の不意打ちによりまたも「吸われ」…てない!

唇から何かが流れ込んできて、胸焼けのような違和感を感じる。


「ぷはっ!」


「今、エイトの体にわらわの分身を流し込んだ。数日は違和感があるだろうがじきに慣れるだろう。今回救ってくれた謝礼の一部として受け取ってもらえるとありがたい。契約なしの分身譲渡ゆえ、あまり無茶はできぬが、どの程度まで耐えられるかはその分身に聞くがよい」


「さて、ここにいても邪魔になりそうだから出るとしよう」


精霊女王はちらっと姫さまを見る。

姫さまはぷっと頬をふくらませて視線をそらす。


「精霊の国へ行くのですか?」


「何者が謀反を企てているのか、それすらもわからぬ状態で乗り込むような真似はせぬ。しばらくは地精霊の迷宮にやっかいになり対策を練るつもりだ」


精霊女王は地精霊を伴って屋敷を後にした。


---


「あの者、わらわの裸体を見ても欲情すらしなかったぞ。魅惑チャームも効かぬとは」


魔力により作り出した真っ白なドレスをまとい、地精霊を従えて迷宮を歩く精霊女王。

真っ暗な迷宮も精霊女王自身が発光し、遠くまでよく見える状態だ。


地精霊は答える。


「異世界から来た者ゆえ、なにか特別な性癖(壁)があるのかもしれません。」


吸い出した勇者の記憶を探る地精霊。


精霊女王は腕組みをし、豊穣山脈を強調しながらぼやいた。


「そういえば、エイトのまわりは実体化した精霊の幼子や獣亜人がいた。成熟した普通の女では満足できないのか」


「国を追われた先で偶然見つけた力、これ幸いと色香にまどわせ、取り込むつもりであったが失敗であった」


迷宮の最深部の突き当たりに到着した。そこには隠し扉がある。


「この先が我が寝城にございます。散らかっておりますが、ご容赦のほど」

「いや、世話になるゆえ、文句など」


がちゃ


「きしゃああああああああああああああああああああああああああ」

「UGYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY」


「りざーどまーん!どうしてここに!しかも数が」


地精霊の地下砦には数千を超える「りざーとまーん」がひしめいていた。

筋肉質のトカゲがみっちりとマッスルしている。

「地精霊、ここは一旦引くぞ!復活したばかりのわらわには荷が重過ぎる!」


精霊女王と地精霊は迷宮をすたこらさっさと退却した。


それを追う「りざーどまーん」の暑苦しい大群。


この迷宮は「りざーどまーん」によって乗っ取られたのだった。


---


「…おかえり、女王さま?、地精霊?」


わずか30分ほどで戻ってきた精霊女王と地精霊。


二人ともお子様サイズに縮んでおり、あちこち擦り傷だらけだ。


「ぐすっ…ううううう…えいとぉ…こわかったのじゃーきんにくはいやなのじゃー」


お子様サイズの精霊女王が泣きじゃくり僕にしがみついている。

ちなみにメリハリのあるボディではなく、双子のようなイカしたボディになっていた。

姫さまはあきれてものが言えないとゼスチャーで答える。


精霊女王をよしよしと撫でながら地精霊から事情を聞いた。

りざーどまーんに住処を追われ、逃げる途中にボコボコにされたという二人をしばらくかくまうことにした。

姫さまが「また犬を拾ってきたのね」というおかんの顔になっている。


そろそろ限界に近いので、仮眠をとらせてもらうことにしよう。

ここちよい睡魔が襲ってくる。姫さまにおやすみのキスをされたこともわからなかった。

精霊女王は身長によって性格が変わるようです。

そういえば地精霊も精霊女王も名乗っていません。


次回「魔素のプールと花咲か勇者じいさん」(仮題)

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