ギルドへGo!
求めよさらば与えられん(職が)
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時間をさかのぼること半日ほど前。つまり朝。
まだ勇者が眠っているころ。
某隠し部屋で筋肉の守護者とほんわかメイドさんが話をしている。
「ギルド長には話を通しておいた。エイト殿の冒険者登録時に結果はどうであれ、偽の情報を書き込むという件を了承してもらった。」
「それではエイト様に今日にでも登録していただけるよう、お願いをしてみます。」
「ただし、測定に際して何らかのトラブルが起こることも考えられる。別室を用意させるのでそちらで。」
「了解しました。しかし、今の状態ではシルフィール姫も魔獣狩りに同行させることになりますが。」
「心配は無」「国、いやマッスルキングさま、ついていくのはおやめください」
「うむう。仕方ない。まかせるとしよう。」
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ギルドの会議室。
防音用の魔導陣が外の騒音を遮断しているため非常に静かだ。
石版から低くうなるような音が聞こえる。
ちみっこ(ユースィア)が目を丸くしている。
「魔力深度が測れないなんて…。」
魔力を放出する際に必要なのは容量と出力。
「魔力深度」(マジックシアー)とはタンクの貯水量のようなものだ。
毎秒どれだけの魔力を搾り出せるのかが「魔力値」となる。
貯水量が多く、蛇口が太いほどより強力な力を出せることになる。
魔力値が大きくても魔力深度が浅ければ魔力の総量が足りずに不発に終わることもあり、逆の場合は非常に効率が悪い。
勇者の場合、石版に示された数値がどちらもおかしなことになっていた。いや既に0が欄外にはみ出して読み取れない。
「しかも適正はフルニュートラルときたか。」
魔力を使う場合、魔導具との相性が重要となる。これを「適正」といい、色と濃さによって分類される。
赤ならば火系、青ならば水系など。
勇者の場合、かぎりなく透明に近い。どの色にも振れていないため既存の魔導具との相性は最悪になる。
「それに対して、身体能力は…。」
姫さまの精霊の加護を差し引いた数値は下級兵士にも遠く及ばず、その辺のおじさんレベル(ちみっこ談)にとどまっていた。
「エイトさまはまず基礎体力作りが必要のようですね。それではギルド長、お願いしたとおりに記録を」
「国王さまからも承っておりますゆえ、ご心配なさらずに」
勇者も含め?になっている。
姫さまとフィリーも測定する。二人とも年相応だそうだが、魔力深度はかなりいい数値になっていた。という。よくわからない。
双子ともえは測定できるのかと思ったが、ほんわかメイドさんに止められた。
2人はぶーたれて、ひとりはしょんぼりしていたが、お昼は例の屋台村に行くといったら双子はころっと機嫌を直してくれた。もえは双子に耳打ちをされてどんな場所か聞いたようで表情があかるくなった。
登録証の発行待ちの間に、探索依頼などを見ることにした。
まだカードがないのでほんわかメイドさんが自分のカードで実演してくれた。
ほんわかメイドさんなら持っていても不思議は無い。
ハ■ワにある情報端末のような石版にカードをかざすと、自分の力で受けることのできる依頼が表示される。
難易度や金額、期限などで絞込みができるように工夫されていた。このレイアウトはどこかで見た記憶が…。なにかの間違いだろう。
一度カードを認識させると席を離れるまではほかの人でも使えるようなのでいろいろと試してみた。
達成難易度を下げて初級クラスにして、当日達成可能で絞り込むと薬草取りや小型の魔獣退治といったお使い程度のものが出てくる。
そもそも魔獣がどうやってできるかは聞いているけれど実物を見たことが無い。
「エイトさま、週末くらいに初級の魔獣退治をやってみませんか?魔獣は見るまでのおたのしみということで。」
「了解であります!サー!」
双子がなぜか反応して敬礼してる。もえはわたわたしてる。
どこのフルメタルジャ(ry
そうこうしているうちにカードが出来上がったようだ。
受付嬢からの説明を受ける。おねーさんはどことなく緊張した面持ちだ。
「エイト マスダさま、職業は勇者。で間違いありませんね?」
一瞬ざわっとするギルドの受付。
「それではカードにつきまして簡単にご説明いたします。」
「カードには名前と職業、総合判定指数、討伐ランクが表示されます。」
「こちらの総合判定指数は保有される魔力や身体能力などから自動的に算出されます。」
「ただし、魔力だけ、あるいは剣技だけが突出していても指数には反映されにくくなっています。」
「詳細な情報については普段は本人だけに見られるようになっています。訓練の成果を確認するのにお役立てください。」
「エイトさまの総合判定指数は320となります。ちなみに当ギルドの最高指数保持者が180です。その方はマッスルキングさまといいますが、現在は休業されています。」
「数値に大して差がないと思われるでしょうが、マッスルキングさまが特殊なだけであって一般の冒険者の方は90まで上昇すれば高位とみなされます。」
僕は身体能力がずばぬけて低いはずだけどどうなっているんだろう。
カウンターの石版にはリザルト画面のようなものが表示されている。
マッスルキングさんが頭3つ分くらい飛びぬけている。
「ちなみに伝承で残っているだけですが女神さまが500以上と言われています。」
チートだなとおもったけれど口には出さない。女神さまだもの。
「討伐ランクですが、エイトさまは登録直後のためFからのスタートとなります。Fから始まりAに到達した後、S、S+、レジェンダリーとアップします。」
「ランクは魔獣の退治や依頼の遂行を繰り返し、ギルドに報告していただくことで自動的に上昇しますが、C以上はランク適正試験を受けていただきます。」
ちなみにレジェンダリーはマッスルキングさんのためだけに作られたものらしい。迷宮という迷宮を狩りつくしてお宝を寄贈し「国の財政」を救ったのだそうだ。
「ちなみ」にがつづくけれど、一人しか思い当たる節が無い。シルエットクイズでもバレバレな。
最後にカードと「初心者のしおり」を受け取りギルドを後にする。カードは運転免許証に似ており、しおりは免許書き換えの講習でもらうようなQ&A集だった。
別のカウンターで説明を受けていた姫さまとフィリーも終わったようだ。
姫さまが30、フィリーが35と表示されていた。一般人の初期値が5から10程度らしいので高いほうのようだ。
双子は暇をもてあまして席を離れ、冒険者に混じって依頼検索用石版をいじくりまわしていた。何かしていなければいいが。
ちなみにもえはひざの上でおとなしく説明を聞いている。
カードは無くさないよう専用のチェーンで首からぶらさげる。いざというときには身元を示すドッグタグの代わりにもなる。
再発行は勇者といえども罰金が科せられるらしい。公正さを保つためだそうだ。
僕のカード登録を見守っていた何人かの冒険者が時折覗き込むような不審な動きをしていた。あとでほんわかメイドさんに聞いてみよう。
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ギルドから歩いて屋台村にやってきた。
(1名の年長者を除い(いま書き手が頭部にダメージを受けた)お若い方を除いて)年端も行かぬメイドをぞろぞろと従えて歩く姿はシュールそのものだ。
屋台からすこし離れた広いテーブルに陣取り、買出しに行こうとしたら
「エイトさま、ここはメイドにおまかせください」
「お兄さん、食べたいものがあったら言ってね!」
「勇者さま、焼きとうもろこしが食べられるのですね!あと焼いたパスタも!」
猫耳をつけたげっ歯類の再来か!姫さまに出会ったときにジャンクフードを食べさせたのが間違いだったか。
そういえばもえは初めてだったか。
「もえはなにか食べたいものがある?」
「あるじさまとおなじで!」
よし肉だな、肉。おさない娘に肉をくわせていまから肉食系にするのはどうかとおもうが。
「シースとレーネは?」
「「マスター!やきそばとおこのみやき!あとはクラーケンやきをたべたいの」です!」
くらーけん?あいつにはあまりいい思い出が無いなー(とおいめ)というかコナモンばっかりだ。
「僕は串焼き肉とおこのみやきあたりで、飲み物は適当でお願いします。もし持ちきれないようでしたら声を掛けてください」
ほんわかメイドさんとフィリーが買出しに行っている間、姫さまをはじめとしたお子様メイドの面倒をみることに。
ぐるっとあたりを見回したけれどアイリスやリーナ、エテルナの姿は見えない。そうそう暇じゃなさそうだし仕方ないか。
相変わらず、シースとレーネは人目を引く。当人たちはどこ吹く風ですまほーちゃんをいじくりまわしていた。画面にはさっきギルドで見かけた依頼検索石版と同じものが映っていた気がするけれど、気にするのはやめよう。
もえはずっとこちらをみてニコニコしている。この子がこんなに笑っているのは初めて見る気がする。
姫さま、よだれを拭いてください。
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双子ともえにお肉などを食べさせながら、ほんわかメイドさんにギルドで見かけた不審な冒険者の話を振ってみる。
「あの者たちは他国からエイトさまの監視に来ている諜報員です。諜報員といえば聞こえはいいのですが所詮はお金で雇われた身。作法がなっておりません。」
若い人を諭すような(ごふっ)いや未熟なものを諭すような口調で語っている。
「あとは「預言書否定派」のメンバーも見受けられましたが手出しをしてくる様子は無かったので放置しています。」
結局、お披露目の際に倒れかけた柱も「預言書否定派」が犯人と思われたものの証拠が無く、大臣の行方も不明。唯一ゴーレム犯だけは他国へと移動中で目つきのするどいメイドさんたちが追っていると。
エテルナが持ってきた村の手紙の件も極秘に動いているという。
不正に関わっていた兵士をそれとなく「配置転換」している最中らしい。
「彼らにはミートシールドをやってもらっています。(にっこり)」
内容は駆け出し魔導士が訓練のために迷宮に行く際の「肉の盾」になり、前衛で防御に徹するだけの簡単なお仕事らしい。精神的な束縛をかけて逃走できなくしているという。中衛が攻撃魔法、後衛が回復魔法の訓練ができるので効率がよいとか。
削れたら回復し、削れたら回復し。考えるだけでもたのし、いやこわいです。
たまに前衛にフレンドリーファイヤするようだけど、まぁ犯罪者だし仕方ないよね。
やばくなったら地上に転送して「入れ替え」をするらしく人数は多ければ多いほど(ry
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お口直しに串焼き肉をもふもふする。こっちのミートなら大歓迎だ。
姫さまは双子に負けないくらい口の周りがソースだらけだ。フィリーともえはお上品に食べている。これではどちらが侍女なのかわからない。
そういえば、いままでは気がつかなかったけれど、私服の警備員らしき影が何人もいて周りを固めてくれている。
急に見えるようになったというか、誰かが教えてくれる。
そういえば双子が僕は精霊に好かれていると言ってたな。
「エイトさま、お気づきになられましたか?でも、だまっててあげてくださいね。」
「了解です。」
今日は何事も無く終わるだろうか。
ちなみに姫さまの職業は「メイド」になっています。




