金色に光る魔獣のうわさと勇者
勇者が警戒度を上げる少し前。
迷宮前広場ではとある噂が爆発的に広がっていた。
「迷宮に金色のほぼごぶりんが出たらしいぞ」
両肩に鉄のガードを付けた皮鎧姿の男が興奮気味に話す。
「俺もそれを聞いた。何でも金色の箱を必ず落とすと」
金属の胴鎧姿の男がそう返した。
南の平原迷宮ではひと月ほど前から宝箱を落とす魔獣が出現したとの情報が流れ、ライスリッチフィールドの冒険者のほとんどがここに集まってきた。
王城近くにある管理迷宮から一時人がいなくなるほどの騒ぎとなり、駆け出しの冒険者も苦労して装備を整え、南の平原に日参を。
宝箱は迷宮の気まぐれによって産み出されるレアアイテム。
運が良ければ迷宮の行き止まりに一抱えほどある木箱が見つかり、中からは程度の良い武器や防具、質の高いぽーしょんなどが見つかる場合が多い。
ごくまれに装着者の力に作用する腕輪や指輪が見つかることもあり、それらはオークションに出せばしばらく遊んで暮らせるだけの高値が付くことが多い。
迷宮に潜る冒険者の中には行き止まりの箱だけを専門に狙うトレジャーハンターも存在するが、道中の魔獣を倒せるだけの技と宝箱を見出す技の二つを要求され、冒険者の中でもごく一握りの存在となっている。
そんな特別な能力を持たずとも、普通に魔獣を倒すだけで宝箱が手に入ると知れ渡り、南の平原迷宮はいつにも増してにぎわっていた。
そんな中で突然現れた金色のほぼごぶりんのうわさ。
価値の高い金色の箱が確実に手に入ると言われれば例え休憩中であろうとも迷宮に潜るのが冒険者というものだろう。
迷宮広場で情報交換をしていたグループが即座に動き、迷宮内へと入っていく。
本来であれば迷宮内が混雑するほどに人が入らぬよう冒険者ギルドが入場制限を掛けるのだが、今回はそれが間に合わずに数百人ほどが一度に立ち入ることに。
迷宮は中にいる冒険者の数に合わせ、魔獣を送り込む性質があり、突如として増えた冒険者に見合っただけの魔獣を解き放つ。
---
「発令所、なにか情報は?」
『今迷宮広場にいる隠密メイドさんから連絡が入りました!金色の魔獣が出たという噂が一気に広まって待機中の冒険者が迷宮へなだれ込んだそうです』
そんな魔獣を設定した覚えは無いんですが…。
そもそも宝箱のドロップも管轄外ですし。
話を聞くと金色の魔獣を倒すと確定で金箱が落ちるとの噂が流れ、今まで箱のドロップが渋かったグループが一気に攻略を開始したと。
入り口付近の混雑っぷりはそのせいか…。
人を示す白い点が重なり合い、身動きすらままならない団子状態となった通路が何本も。
南の平原迷宮の入口は10か所あるが、どの通路も渋滞マークが出ている。
「これだと外に出るもの一苦労ですね…さてどうしたものか」
魔獣はグループの数に合わせて送り込まれ、今増えたグループ分が空いている通路に解き放たれることとなる。
とばっちりを喰うのは元々迷宮内にいたグループであり、多分20倍くらいに増えた魔獣と戦う羽目に。
ここの迷宮の難易度は管理迷宮の中でも一番低く設定されているのでおそらくは大丈夫だと思われるのですが。
「全員、今の場所から動かず移動してくる魔獣に各自対応を」
やみくもに移動すれば魔獣の濃い場所に突っ込むこととなり、交戦回数も増えてしまう。
出来れば行き止まりの通路を背負って一方向のみに注視できる位置取りをしたいところですが。
行き止まりの最奥に魔獣が送り込まれることもあるので危険と言えば危険だが分岐点で四方から襲われるよりはまだマシかと。
「全チームに伝達。アヒルちゃんのコントロールをこちらに貰います。ワンドだけ構えていてください」
アヒルちゃんを固定砲台として運用する事とした。
いま動いても迷宮の外に出るのは難しく、混雑が解消され次第すぐに外へ向かうことにしたのですが。
『発令所より全チームに伝達!ほぼごぶりんの集団が接近中!数は50以上』
「全員女児ワンド構え!まじかるびーむ、オートエイムで照射開始!」
数には数で対抗を。
マルチロックオン可能な女児ワンドを深緑の慈悲の裏に控えている戦術コンピューターに接続し、一番効率よく、安全に倒せるようにプログラムを調整。後は適宜にビームを発射することに。
女児ワンドから放たれた複数のラメ色ビームが薄暗い迷宮内を照らしつつ直進し、襲い掛かってきたほぼごぶりんを次々と魔素へと還す。
「冒険者ギルドへ連絡しないと…」
異常事態を知らせる為、南の平原迷宮にあるギルド出張所を呼び出し、魔獣の氾濫が起きていることを報告。
王城にある本部にも同じ情報を伝え、迷宮から冒険者を出すように依頼を。
「どうして入場制限が機能していないんだ…」
迷宮を入ってすぐの場所に冒険者用の待機所があり、そこで入場管理をしているはずなのだが何故か機能していない。
大量の魔獣を倒し続けること10分余り。
通路には戦利品が溢れ、足の踏み場もないくらいの状態となったころにようやく第一波が収束した。




