ガソリンを探しにいったら山を見つけた。
ガソリンスタンドがあればいいのに(勇者談
お昼を食べ終わって、食後のお茶の時間。
双子ともえはお菓子に目を光らせている。
紅茶を「ずずーーーーーー。」と縁側のばーちゃんみたいな感じですする姫さまに3色団子精霊の様子を聞いてみる。
姫さまはどうやって聞こうか思案した挙句、自分の胸元を見たりもしたけれど解決には至らなかった。ひらべったいし。
「シース、レーネ、姫さまの精霊に呼びかけてもらえる?」
「「マスターりょうかいー」ですー」
またあさっての方向に話しかける霊感幼女。様子を聞いてもらう。
「「せいれいさんはマスターにまりょくをそそぎすぎてちょっとつかれてますー」ですー」
「「ぜつりんのそこなしぬまーといってますー」ですー」
よくわからないので、無理しないようにお願いしておいた。ぜつりん?たぶん赤玉ちゃんだな。
エーテルさえなんとかなれば、ああ、もえの魔力はどうなんだろう。さっき手のひらからものすごい吸い出された気がする。
もえは精霊と違い、自分で魔力を生み出すことができないようだ。
魔剣へ無尽蔵にエネルギーを供給できたら、それはおそろしいことになりそうだ。
「もえ、魔力は足りている?また透明になったりしない?」
「あるじさま、先ほどたくさんの魔力をいただきましたので、この姿を保つだけでしたらごはんをたべていれば大丈夫です。」
前の持ち主がおかゆを食べさせていたのは、そのためなんだろうか。
「もし、魔力が必要になったら遠慮なく言うんだよ。」
「・・・はい。あるじさま」
すこし顔を赤らめるもえ。どうして照れるのだ。
明日は式典の最後に車を動かすんだった。
迎賓館の裏に放置していたことに気がついた。
「シース、レーネ、もえ、車の様子を見に迎賓館の裏にいこう。」
よろこぶ双子、もえの頭の上に?が見えた気がする。
姫さまは呼ばれなかったのでちょっとむっとしている。
「姫さま、お手をどうぞ。」
ほっぺたに手のひら当てて、斜め下みて顔を赤らめる人がいた。マンガでしか見たことがない!
「マーガレットさん、おいてっちゃうよ!」
スカートがめくれるくらいの勢いで立ち上がったマーガレットさん。ふりるのついたかぼぱんでした。
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迎賓館の裏手には物々しい警備が張り付いて、車のあった場所には天幕があった。
あとから囲うようにして取り付けたのだろうか?
「ごくろうさまですー」
じゃぱにーず先制攻撃。
「勇者様!姫さま!マーガレット隊長!」
バラの騎士団の人だ。
「赤竜車に夜露などかからぬよう、勝手ながら覆いをとりつけました!」
「ありがとうございます。」
お礼を言う勇者に騎士団のひとがぱくぱくと酸欠金魚のような感じであわてている。
「明日の式典で使うので、ちょっと様子を見に来ました。」
「あ、はい、すぐに覆いを開けさせます!」
白い天幕の入り口が開けられ、中世っぽい建物にミスマッチな赤い車体が現れる。
「そういえばガソリン残っていたっけな。」
「ぴぴっ!」
ドアのアンロックボタンを押して開錠する。
一瞬びくっとする警備の兵士さん。
双子の暴走事件を間近で見ていた人たちにはトラウマものだろうなー。
現場に居合わせなくてよかった。(他人事)
「すこし後ろに出すので下がってもらえますー?」
様子を見に来ていた20人くらいの人がものすごい勢いで左右に分かれる。
モーゼか!
キーをひねり、燃料の残りを確認する。3/4くらいあるから大丈夫か。
キュルルルルル! フォン!
強化セルのおかげてカブらず一発始動。初期型の対策前セルはクランキング速度が遅く、プラグがかぶりやすいのだそうだ。
天幕の中はガスがこもりそうなのですこしバックする。
アイドリングさせたまま、車を降りる。
もえが何かいいたそうだ。
「あるじさま!この馬車からものすごい力を感じます!」
双子がやどっていたせいなのか。いや馬車じゃないぞもえ。
「せっかくだから少し乗ってみる?」
姫さま、マーガレットさん、双子にもえ。
乗車定員超えてる?ここをどこだと?
実はどこなのか異世界という以外勇者にはわからなかった!
もえはモップの柄とともに助手席に、姫さまとマーガレットさん、双子は後部座席に。双子は一人づつ抱えてもらう。
シートベルトを締めてまわり、運転席に戻る。
双子を車に合体させようかとも思ったけれど、なるべくならほかの人には知られたくないのと。
絶対暴走する!
僕の運転でゆっくりと走り出す。それでも標準的な馬車よりは速いはずだ。
もえは放心状態だ。
「あるじさまあの・・・馬は?」
「最近の馬車はこうなんだ」
さりげなくうそを言う。
「うしろのみなさん、げんきですかー?」
後ろを振り返ると危ないので、声だけ掛ける。
姫さまは2回目なのでなれたものだ。乗り込んだときの目つきがあやしかった。シースの頭をもしゃもしゃなでる音が聞こえる。
マーガレットさん、息してるかな。レーネがマーガレットさんのほっぺをぺちぺちする音が聞こえる。
双子はゆっくり走っているのに不満なのか
「「ますたーもっとだしてー」ですー」
ああ、この子達はスピードキングだ。
だめもとで聞いてみるか。
「シース、レーネ、この車を走らせる燃料、ガソリンが必要なんだけど、精霊の力でなんとかなるかな?」
「「うんてんはできますが、がそりんはつくれません」です」
やっぱりかー。
双子が、あ!と言う。
「「もえちゃんのいたおへやに、まどうごうせいそうちというのがあるの」です!」
「「たぶんがそりんもいけるかも」です」
おお!びっくりしてアクセル踏んでしまうところだった。
合成装置か。錬金術みたいなものだろうか。
あとで国王さまに相談だ。そうしよう。しかしどうやってつくるんだろう。
魔導具といえばシルビアさん。シルビアさんへの罰はまだ完了していないのだ。
まず国王さまに許可をもらって、シルビアさんを訪ねることにしよう。
なにか忘れているけどいいや。
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そのころ、例の大臣は
「あの勇者、何か感づいたのか」
迎賓館に使者を送ったものの、不在だと追い返されたのだ。
「まぁよい。計画通りに進んでいれば。例のローブの男と勇者が共倒れになればよし、勇者が生き残ってもこちらの兵士とあの人形を使って。」
「例の人形はどうなっている」
後ろに控えていた魔導士の男に問いかける。この男のローブは宮廷魔導士とは異なる。
「すでに起動試験を終え、いつでも呼び出せます。」
「明日の夜中が楽しみだ。邪魔者さえいなくなれば。」
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「と、言うわけなのです。国王さま」
双子の言う合成装置を調べさせてほしいとお願いした。
「勇者様、代わりにといっては何ですが、1つお願いをしたいことが。」
今日2回目の宝物庫。
例の防具だ。これは避けたかったけれど仕方ない。
「式典でこれを着ていただきたいのです。着るだけでいいので!勇者様ならなんとかなるはずです!」
どうしてそこまで必死になるのか。
「実は今朝「預言書」が夢に・・・いや今のは忘れてください。」
「預言書」は国王さまの夢で何をしたのだろう。そういえば1週間後にどうとか夢で見た記憶が。
それ以前に開かないものをどうやって着ればいいのだろう。
「「マスター!まかせてください」です」
双子は防具に触れる。触れた部分が一瞬光ると、防具のロックがはずれ、上半身がゆっくりと胸と背中に分離した。
もうなにもおどろかない!そう決めたんだ。数日前に。
横から見るとYの字に見える。
「「ずぼんをはくようにしてなかにはいってください」です」
とりあえず靴だけ脱いで足を通す。内部はやわらかい未知の素材でできており、しめつけずゆるすぎずといった感じだ。
本当に何千年も前の遺物なんだろうか。昨日できましたといわれても信じてしまいそうだ。
続いて胸のほうに残っていた篭手の部分へ腕を入れる。
「「それではしめます」です」
双子が再び触れると胸と背中のパーツがゆっくりと合わさり、ロックされる。
背中についていた兜が前に倒れ、頭を覆うとこちらも自動的にロックされる。
真っ暗だ。意外と閉所恐怖症なので焦る。
ブーンという音とともに目の前が一瞬明るくなる。モニターのようだ。
モニターに見慣れない文字がたくさん流れ、何かの調整が行われているのか体のあちこちが一時的に軽く締め付けられては緩む。
外の映像が映し出され双子が手をふっている。音も聞こえるようになった。
「「マスター!じゅんびかんりょうー」です!」
腕を持ち上げてみる。それほど重みは感じない。何度かグーとパーを繰り返して手先の感触を確かめる。
「「マスター、だいからおりてみてください」です」
みなさんは危険を感じて遠巻きにみている。双子も避難完了だ。
普段より目線が高いので怖い。歩けるのかな。右足を一歩前にだす。お約束のように転びかけるので踏ん張ってみた。
「どーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
宝物庫に響き渡る。すごく固そうな床に凹みができた。
ぐっとこらえて立ち上がる。防具自体にパワーアシストがあるのだろうか。
正直、精霊の加護の力でうごかしているのか防具の力なのかわからない。
兜があると息苦しいな。と思っていたら兜が後ろに倒れた。
これは慣れが必要だ。直感で感じるまでもない。体の動きと防具の動きがいまいち合わないのだ。
「国王さま、しばらくこのまま着ていてもよろしいですか?慣れるまでに時間がかかりそうなので」
どーん。でしばし放心状態だった国王さまがはっとなる。
「し、城の外に出なければ、明日のお披露目の目玉の一つなのでな。」
背中の物騒なものははずして、防具のおいてあった台に置く。
クリップをはずしたけれど弾は入ってなかった。
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例の合成装置は防具コーナーのそばにあった。
これは双子の管轄とはすこし違うようだ。動かせるけれど細かい部分はわからないという。
このままシルビアさんを呼びに行こう。
マーガレットさんを先頭に姫さまと幼女3人を引き連れて、オリーブカラーの巨大防具がのしのし歩いて行く。
兜は後ろに跳ね上げて、頭だけ出している。密閉される割に空気が循環しないのか息苦しいのだ。
双子に聞いたら、なにか足りないらしい。あとで宝物庫の中を探そう。
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行き先は宮廷魔導士の研究室だ。場所を知らないのでマーガレットさんにおまかせする。
それっぽい雰囲気の場所に着いた。
魔導研究室と書かれている。
ドアが開いているのでそのまま中を覗き込む。
あの後姿は
「シルビアさーん」
ドアいっぱいの緑色の巨人が入ってくればだれでもおどろくだろう。
「きゃーーー」
シルビアさんは振り向いた瞬間持っていた刀を取り落としてしまった。床でバウンドして半回転した刀がシルビアさんのローブだけをうまいこと真っ二つにして。
いい眺めだ。下着姿となったシルビアさんの山がぽいんぽいんしてる。というかローブの下は下着なのか!
ちなみにドアはこの防具がふさぐ格好となり、シルビアさんのあられもない姿は僕だけが拝んだ。
シルビアさんは両手で胸を隠して奥に引っ込んでしまった。
悲鳴を聞きつけてやってきたサバンナさんが、僕を見上げるように話す。
「勇者殿、そのお姿はいったい。」
「悪の手先に改造されました。」
「うそです」
「・・・勇者殿、それは笑えないです」
サバンナさんは手にしていたロッドで防具のわき腹をつつく。コツコツというだけで何も感じない。
部屋の隅に防具を移動し双子にロックを解除してもらい外に出る。
「ほら、なんともない!」
もう一回わき腹をつつかれた。こうかはばつぐんだ!
予備のローブに着替えたシルビアさんが戻ってきた。空になった防具と僕を見比べている。
まだ状況をつかめていないようだ。
サバンナさんとシルビアさんがモップを持ったもえに気がつく。
「あの、こちらのお連れ様はもしかして新たな精霊でしょうか?」
何かしらの力を感じるらしい。魔剣というのはまだ秘密だ。
「ええ、まぁそんなところです。今夜、この子の歓迎会をやるのですが、お二人ともよろしければどうでしょう?」
二人とも快諾してくれた。
「で、サバンナさんとシルビアさんにお願いがあってやってきました。」
双子に聞いたことを話す。
宝物庫にある魔導合成装置で赤竜車(このほうが通じるようだ。)の燃料(食事)を作れるか調べてほしいとお願いした。
「魔導合成装置でしたら、こちらに私たちが改良した新しいものがありますわ」
宝物庫にあるものは古い時代のもので、シルビアさんが試行錯誤の結果、少し前に一回り小さいものを作ったという。
「勇者殿、赤竜車の燃料?とはどのようなものなのでしょう。合成装置ですが元となる物と作り変えるためのお手本がなければ作ることができませんので。」
ガソリンができるまでをかいつまんで説明する。
「それでしたら、こちらのランプの油が近いと思われます。」
机の上にあったランプの油入れのふたを取ると、どろっとした重油に似たものが入っており、独特の刺激臭が立ち上る。
この国で取れたものだという。なんでも温泉を作る際に大量に沸いてしまい、刺激臭はするわ燃えるわで大変だったとか。
ちなみにオイルランプが使われているのは自身の魔力をすこしでも節約して、その分を研究に使うためらしい。夜遅くまで研究しているのはお風呂で鉢合わせして知っている!
合成装置の使い方としては、素材とお手本となるものを用意して、魔力をエネルギー元として触媒を使って変化させて作り変える。2つの性質が似通っていればいるほど効率がいいという。
もともとはポーションなどの効果や持続時間を増すためのものらしい。これも昔の大戦で一度途絶えてしまった技術。
燃料のサンプルを取るために、シルビアさんをつれて車に向かうことにする。一度外に出ることになるので防具は一時置いていく。
双子は魔導研究室の見学をしたいというのでサバンナさんに預けた。すまほーちゃんの魔改造以外に何かするつもりなんだろうか。
ちなみにさっき防具に入る前にぬいだ靴はもえが持っていてくれた。気が利く子だ。
その前にシルビアさんが聞きたいことがあるという。
「あの、勇者殿、この剣なのですが調査依頼があったものの、出所がわからず困っています。何かわかれば教えていただきたいのですが。」
先ほどシルビアさんにぽいんぽいんさせた剣。見覚えがある。
「それは僕がならず者をとっちめたときに偶然できたものですね。武器保管庫にそのまま置いて帰ったのですが、やっぱりまずかったのですか?」
まずかったらしい。そしてさっきのローブがぱっかん事件。
迎賓館の裏手にいくまでずっと問い詰められた。
もーもーの再来である。ぽこぽこと僕をたたくたびに山が動く。
姫さまとマーガレットさん、もえはその剣幕にたじたじになってしまい、僕たちの後方数メートルあたりをとぼとぼと歩いていた。
それを部下の魔導士が見かけて「永久凍土のシルビアが解けて春が来た!」と、うわさしあったという。
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勇者と入れ替わりに大臣の手先が来たようです。
勇者は自分の車を今後の移動手段として使えればいいなと思っています。
城の中にいても世界は救えないですし。
一番最後はシルビアの涙、あとがきのあれです。
勇者のお披露目の前に、もえの歓迎会といつもの。予定です。
7/31 本文の表現をすこし手直ししましま。




