魔剣「ザ・シード(世界樹の種子)」
勇者の下には続々と幼女が集まってきます。(ただし人外)
「えっと、もえちゃん?」
「あるじさま、もえでよいです。」
「もえ、どうして僕を主と呼ぶの?」
「あるじさまは以前のあるじさまと同じ力を持っています。だからあるじさまです。」
うーん?同じ力か。
「前の持ち主は勇者だったの?」
もえは首を横に振る。
「もえ、君はいったい何者なの?」
「ほかの人は魔剣、聖剣、人食いの剣、伝説の剣「ザ・シード」といろいろな名前で呼びます。」
「あるじさまは「もえ」と呼んでください。」
おかっぱざしきわらしはもじもじしながら言う。
「ザ・シードじゃと!たしか数世紀前の戦災で失われたと聞いている宝剣!」
国王の顔色が変わった。モップの柄が世界に一振りしかないレジェンダリーアイテムだなんて誰も思わないよね。
剣打撃係数というたった今思いついたといわれそうな指標を使って説明します。
標準体型の成人男性が素手で対象を思いっきり殴る力を1として、プロレスラーの加速された水平チョップが8、なまくら刀が16くらい。街のショップに並んでいる高いのが64くらい、宝物庫にある一番いい剣が1024前後。
ザ・シードは測定できないものの1024万といわれているらしい。らしいというのも不完全な状態で一度つかったら鉱山のガラを積み上げたボタ山集団が跡形もなく消し飛んだという伝説を元にした大体の数値。
その破壊力の源は当然魔力。
たとえばダンプカーが模型用のモーターでバンバン走るか?といわれたらかなり厳しいだろう。
この場合ダンプカーがザ・シードであり、数十グラムのモーターと電池が普通の人である。
おそろしく威力があり、おそろしく大喰らいなのである。
過去にまっとうに扱えたのは伝説ではただ一人、ただし、その一人はこの魔剣を捨ててどこかに消えたという。
おそらく魔力どころか命すら削らなければ使いこなせないだろう。
その剣が僕の手に収まり、「本体」のほうはうるうるとした上目遣いで僕を見つめている。
宝物庫の中で式典にいちばんふさわしいといえばこの剣であるのは間違いない。
「しかし、式典でその存在を明かせば厄介なことになるかもしれぬ。」
国王がしぶい顔と声で言う。
世界救済の為に国から勇者に剣を貸し与えたというのであれば問題は無いだろう。
貸し与えるのであれば剣の素性も明かさねばならない。
今まで見つからなかったのにいきなり出てきましたというのは、「預言書」否定派によろしくないエサとなる。
一振りで災害すら起こせそうな国宝を隠蔽していたと、難癖をつけるだけの簡単なお仕事ですといわんばかりに攻撃してくるだろう。
んー。と。
ど れ に し よ う か な 。
駄菓子屋のおもちゃの剣でも選ぶような感覚で。
モップの柄の隣にあった、今では非常に格下のナンバーツーになってしまった「テイルズオブドラグーン」というゲームのような名前の剣を手に取る。
「竜の爪から削りだされたというめずらしい剣」というなんともな説明がついている。
双子に見せたがこれにはなにも「ついていない」らしい。
「国王さま、式典に出る際にこれをお貸しください。」
もえの顔が不安そうになる。
「あるじさま、わたし要らない?」
「もえ、大丈夫。捨てたりしないよ。今日からはうちの子だ。」
いままでモップの柄だったけれど一応国宝級の剣だ。国王さまに了解とってないけど、いいだろうか。
もえがしがみつく。双子もしがみついてくる。姫さまもしがみついてくる。マーガレットさんも!
一応危険な刃物をもっているので自重してください!特におとなのかた!
国王さまはうんうんと頷いている。OKかな。
しかし、もえの刀身部分であるザ・シードはこの上なく目立つ。さっきまでは光を鈍く反射するだけであったが、今はうっすらと自発光しているのだ。
「もえ、剣を目立たないようにできる?」
もえはこくこくと頷くと、剣をモップの柄に変化させた。ちゃんとモップ部分も再現されている。
モップを持つもえは、城内で働くお掃除中の女児にしか見えない。
もえが仲間に加わった!
だれかのおなかから「ぐー」という時報が鳴る。
姫さまか!
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国王さまと姫さまが一緒だったせいか、宝物庫からお掃除の女の子が出てきても誰もとがめない。
そもそも周りを固めているのは側近とバラの騎士団だ。
そういえばもえはリーナと同じくらいの背格好だな。
僕の左の腰には「テイルズオブドラ(ry」という剣がぶら下がっている。
右肩と腰に皮製(これも普通のものではないようだ)のベルトを掛けて、そこに軽い金属でできた鞘をぶらさげ、その中に剣がおさまっている。
城の中で帯刀が許されるのは勇者と親衛隊くらいだろう。
ふと見ればさっきまで手ぶらだった国王さまも立派な剣をぶらさげていた。やっぱり元冒険者なんだろうか。
姫さまがそれを見つけ
「お父様!またその剣を出されたのですか!お母様におこられますわよ!」
と釘をさすが国王さまはどこ吹く風だ。お妃さまは明日の式典まではもどらないらしい。それまでは羽を伸ばすつもりだろう。
柱の陰からその様子を伺う人物がいた。僕以外は全員気がついていた。どうも剣の収まりが悪くてずるずる引きずってしまうので位置調整に難航していたからだ。と勇者は言い訳をします。
国王さまとバラの騎士団は城の中に戻り、僕たちは迎賓館へ移動する。
姫さまから柱の陰にラクーンがいたと聞く。障子にメアリー的な。
客間に入ろうと思ったら、ナイスタイミングでほんわかメイドさんが現れる。
「勇者殿、お昼の用意ができて、あの、そちらのかわいらしいお客様は?またナンパされたのですか?」
火にテルミットを注ぐとはこういうのだろうか。
いや、こちらの世界にナンパって言葉があるのだろうか。脳内で勝手に翻訳されているとしか思えない。
アイリスの寝室でどっきり以来、すこし弱まっていたいたずらの度がどんどんエスカレートしてきた気がするので、罰が必要なのだろうか!
とはいえあの山脈に挑めば遭難間違いなしである。命的な意味で。夕べも左腕だけ遭難しかけた。なんとなくだけど、目つきのするどいメイドさんより強いオーラを感じる。
姫様が「また」の部分に反応したらしく、がにまたになって問い詰めモードに入りそうだったのでその前にお昼にしましょうと提案をする。
たぶんおなかがいっぱいになれば忘れるだろう。
小麦粉を練った生地を伸ばしたものにトマトソースを塗って具材を乗せてオーブンでこんがり。
今日のお昼はいろとりどりなピザでした。
貴族の服を脱いでいつものアロハに着替えた。こちらの世界の高い服より、1着1980円のアロハのほうがおちつくのは貧乏性だからなのか。
双子はエプロンつきの部屋着に着替えさせて正解だった。お洗濯魔導士のかた、ごめんなさい。エプロンがもうソースで。食べるのが下手なのは僕に似たのだろうか。
姫さまは口からチーズをうにゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんと伸ばしている。これが一国の王女(ry
隣ではそのチーズをお皿で受け止めようとするマーガレットさん。
モップをもったまま硬直しているもえをいすに座らせて、おしぼりで手をぬぐってあげてからピザを一切れ取り分ける。
もえはみんなの真似をして、ピザの端っこを両手でもつと、おそるおそる口に運ぶ。
「!」
「あるじさま、おいしいです!」
あっという間に1枚を食べ終わり、ごちそうさまをするもえ。
食事自体は初めてではないというけれど、戦時中でおかゆのような味気ないものばかり食べていたという。
それも何百年も前の話だろう。モップの柄になってからの記憶はあまりないという。
流れ的に前の持ち主の話になってしまい、もえは落ち込んでしまった。
前の持ち主は若い女性だったという。
天才的な剣の腕の持ち主で、魔物の討伐では常にトップクラス。
ある日、眠っている自分を置いてどこかに出かけ、それきり帰ってこなかった。
寝泊りしていた兵舎の片隅で彼女を待ち続け、その間、警備の目を盗んで自分を掠め取ろうとする輩が何人も現れたという。
剣に触れる前に魔力を吸い取られた哀れな略奪者の山ができ、もえはたらいまわしにされた挙句、城に預けられることになった。
もえはこの姿だからみんなが襲ってくるのだと思い、悩んだ末に城で見かけたモップの柄になったという。
ただで置いてもらうのも心苦しく城の廊下などを掃除していたが、その時点でかなり魔力を消耗していて他人から姿が見えなくなり、モップだけが動いていると城内が大騒ぎに。
そして宝物庫にしまわれたのだという。
もえは宝物庫でも持ち主を待ちつづけ、床に座り込んでいたところに僕が現れたという。
「そういえばときどき、さっきのおじさんに似た人が来てみんなをきれいにしてくれた。」
ちなみに宝物庫は時々筋肉隆々の人が覗きに来て、モップの柄になった自分も含めた武器の手入れをしていたようだ。ただ、自分の「姿」には気がついていなかったという。
シルフィール姫とマーガレットさんが泣いている。双子はもえをはさんでよしよしをしている。
ほんわかメイドさんの目にも涙が見える。お皿を下げるふりをして配膳室にいってしまった。
もえのあたまをわしわしとなでる。
双子が現れた晩にみんなで集まってご飯を食べたのを思い出す。
ここで一緒に泣くのをぐっとこらえて僕は提案をする。いや決定事項だ。
「今日はもえの歓迎会をしよう!」
明日は基本立っているだけだし!と軽く考え、自分の式典のことなどすっかり忘れている勇者であった。
国王が見せたかったのはオリーブカラーの防具のほうでした。
勇者なら何か知っているかと振ってみたものの、勇者の危機回避能力?によりはぐらかされてしまいました。
せっかく回避したのですがそうは「預言書」(問屋)がおろしません。




