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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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宝物庫で会いましょう!

近所のスーパーに行くような感じで宝物庫に着いた勇者ご一行。

いろいろと見てはいけない陳列物が!

時間はすこしさかのぼり、明け方のこと。


ほんわかメイドさんと呼ばれる女性は、人目を避けるように迎賓館の寝室から出ると、自室へ向かう。

ネグリジェのような夜着を脱いで丁寧にたたむと、いつものメイド服に着替える。

そして城の控え室に移動し、ドアを内側から施錠すると、壁に飾られたオブジェに触れる。

3x4マスのそれには古代文字があしらわれ、とある規則に基づいて触れるとカチリと音がした。

何も無かった壁にドアが現れ、音もなく開いた。


ドアの向こうには隠し部屋があり、既に誰かが待機していた。

異様に肩幅の広い、筋肉の塊。


「ご苦労様。そなたにメイドをさせるのはやや心苦しいものがある。なにしろ」

ほんわかメイドさんは人差し指で自分の唇を押さえ「しーっ!」と小さく答える。


「そうでしたな。」


「前置きはこれくらいにして、勇者エイト殿の調査報告を。」


「身体能力については触診の結果、普通以下と判断します、ただし、姫さまの精霊の力によりおそらく何十倍かに。」


「ふむ。」


「魔力については、測定不能でした。無いのではなく、魔力深度が深すぎて測れません。」


筋肉の塊は黙って聞いている。


「魔力深度を測るため勇者殿のお体に触れ、ピンを何度か打ちましたが、戻ってきませんでした。」

「何かの間違いかと思い、昨晩は数時間にわたり試しましたが結果は同じでした。」


ほんわかメイドさんの表情が暗くなる。


「これ以上は勇者殿にお断りをして、正式に調べるのが筋かと思います。私はこのようなだまし討ちのようなことは好きではありません。」


マッスルキングはやや険しい表情で答える。


「公の場でそのようなことをして、万が一にでも平凡な結果に終われば、あるいは世界を滅ぼしかねない突出した力があることがわかれば、「預言書」を快く思わぬ連中に何をされるかわからぬ。」

「あのラクーンが義賊の討伐と称して勇者に近づいているのも何かの探りであろう。」


「一度お披露目をして認めさせれば、しばらくは口出しできぬはず。そなたには引き続き周辺の警護を頼む。今日、勇者殿にはアレを見てもらうことにする。」


「かしこまりました。」


ほんわかメイドさんは筋肉主にひとつ伝えなかったことがある。


勇者の魔力傾向だ。

人体から放出される魔力には系統色は無い。しかし、魔力の「傾向」には多少なりとも色や濁りが生じる。

魔導具に魔力を注げるかどうかの「適正」といわれるものである。


色については本人の本質が影響を及ぼす。

人間多少なりとも欲望や嫉妬といったマイナスのエネルギーを持ち、それが魔力傾向の濁りとして現れる。


勇者のそれは無色透明だった。透明な水が満たされた底なしの湖。勇者の魔力は純粋だ。その純粋さが仇となることもある。

きれいなものほどあくにそまりやすい。

免疫が無いからだ。



---



異世界にきて4日目の朝である。たぶん。いろいろありすぎて体感日時は1ヶ月くらいである。


アイリスたちを見送ってから、簡単な朝食を取る。


午前中の早いうちから城に行くことになり、例の窮屈な貴族服に着替える。

最初のうちはメイドさんにぐいぐいとやってもらっていたが、どうにか一人で着れるもん!状態になった。

おそらく式典でも双子はくっついているだろうということで、打ち合わせにも同行させることに。

無難な白いドレスを着せてもらい、下にはかぼぱんを装備させた。フラワーガールみたいだ。

姫さまはいつものドレスにめずらしくティアラを装着した。こちらの世界に来て最初に出会ったときにつけていたものだ。


着替え終わるとマーガレットさんが迎えに来てくれた。


迎賓館から城へは外に出なくても地下の通路がある。

そこをマーガレットさんの先導でてくてくと進んでいく。

万が一の敵襲に備え、迎賓館と城の間の通路は堅牢なドアにより隔離することができるという。

敵を閉じ込めるもよし、シェルターにするもよし。


いつものように城の控え室に行く途中、例の大臣が待ち構えていた。

どうやら式典の打ち合わせに混ざるつもりだったようだが、門前払いを食らったようだ。

勇者の出現を出世のネタか金ヅルくらいにしか思っていない輩対策として、国王と一部の側近以外締め出したと後から聞いた。

乱世の世ならともかく、平時の今では名を上げることは容易ではなく、虎視眈々と機会をうかがう魑魅魍魎が跋扈しているのだ!


大臣は何か言いたそうだったが、マーガレットさんと途中から合流したバラの騎士団による完璧なブロックで事なきを得た。きれいなバラにはとげがある!


国王と打ち合わせをする。国王が国民に向けてメッセージを発した後、勇者がテラスで手を振り、城の前を赤竜車で一周という前回と同じ説明を受けた。


問題は、僕が帯刀していないことだった。


国王から剣はどうなされた?と聞かれたので、自分の居た世界では数センチのナイフでも所持していればつかまるという話をしたら、どうやって身を守るのだ!という話になったので。今夜お酒でも飲みながら話しましょうということになった。

こうやって前フリを入れておけば国王さまが連日迎賓館にやってきても怪しまれにくいだろう。

そういえば車の中に非常灯がわりのニンジンを入れてあった気がする。(交通整理のアレ)


勇者に似合うお仕着せの剣を探すために宝物庫に向かう。

武器保管庫にある剣は実用一点張りで見栄えがしないのは前回見学して知っている。

そもそも戦場であまりにもギラギラした剣を振り回していれば格好の的になるし!

シールドの類は磨いて光を反射させ、敵の目をくらませるということもできるようだが、どう考えても限定的な効果しかなさそうだ。


あ、そういえばこの前振り回した剣をどうしたっけ。


そうこうしているうちに宝物庫についた。城の奥のほうにある。


国王は手のひらを扉のくぼみに合わせると、一瞬扉全体が光り、扉が静かに開く。

内部の壁は城の標準的な大理石とは異なる、そう、コンクリートのようなもので覆われていた。

大小さまざまなケースに何に使うのか皆目検討もつかないアイテムが所狭しと並んでいる。


有体に言えば「オーパーツ展示館」


双子はおもちゃコーナーに連れてこられた幼子のような表情で、(実際幼子であるが!)あちこちさわりまくって話しかけている。


いま思えば、この「話しかける」行為にもう少し気を使えばよかった。双子は物に宿る精霊である。


鎧を納めているコーナーに気になるものがあった。


その防具一式の全高は目測で2.5m程度、分厚いサイバネティック防弾プレートがあしらわれた高気密性フルスーツはマットなオリーブカラーとブラックに塗られている。

兜の前面は反射を抑えたオレンジ色の硬質バイザーのようなものでカバーがなされ、背中には剣の代わりにアサルトライフルのようなものがささっている。

見なかったことにしよう。関わったらだめという。


「勇者様、やはりそれに興味をもたれましたか!」

国王が満面の笑みで話しかけてくる。

ああ、やってしまった感。


数千年以上前のものと思われる遺跡から発掘された(正確には持ち出された)物の一部だという。

どんなものか知らないかとたずねられたので、よくわかりませんがかっこいいですねー。とお茶を濁した。


双子がそれにも触っている。バイザーが光ったような気がする。気にしないでおこう。


機会があれば遺跡に案内してくれるというのでお願いしておく。


そして、剣をおさめたコーナーの片隅に気になる物体を見つけた。

モップの柄のような真っ黒な棒である。

ただ、その棒の前にボロをまとった8歳くらいの黒髪の女の子が座り込んで、床にのの字を書いているのが見える。半透明なので人ではないことはわかった。ボロ布の下は全裸のようだ。

(大切なことなので1度しか言わない。)


国王に黒い棒のことを聞いた。


いわゆる魔剣の一種という。言い伝えでは元々は剣の形をしていたが、ようやく見つけた自らの力量に見合う人間に捨てられ、へそをまげてモップの柄になったという。

しばらくは城の掃除にもつかわれていたが、勝手にモップが動くのは心臓に悪いということで、宝物庫入りとなった。


「非常に表現しづらい格好をしているのですが、その魔剣の中身だと思われる子がそこに座り込んでいじけてますよ?」


国王は驚いている!


「勇者様には魔剣の姿が見えるのですか!伝説には聞いていましたが本当にいたとは。」


双子はそのいじけた子に近づいて頭をなでている。

ただし、他人から見ると何も無い空間をなでなでしている霊感の強い幼女2人にしか見えない。


姫さまを始め、マーガレットさんや一緒にいた側近たちも見えないという。

3色団子は何故か反応しない。いつもなら出てくるのに。


ボロ子ちゃん(仮名)は泣きはらした目でこちらを見る。抱き上げてほしいというゼスチャーを待たずに抱っこをする。


「あるじさま」


ボロ子ちゃんが僕の胸に顔をうずめるとまばゆい光に包まれた。


ボロ子ちゃんはかわいこちゃんに変身した!

おかっぱ黒髪に赤い瞳、透き通るような白い肌。赤い着物をまとったその姿は。


「ざしきわらし?」


国王さまを始め、その場に居た全員がぽかーん状態になった。この姿は見えるようだ。


そして、モップの柄はがたがたと震えると不要な部分をパージして剣の柄の部分となった。


「あるじさま、「わたし」をにぎって、ちからを」


ざしきわらしが指差す剣の柄のようなもの握ると、手のひらが熱くなる。何か吸い出されている感じがする。


剣の柄からまばゆい光が放たれ、刃が徐々に形成される。


幅20cm、長さ1.5mほどの半透明の刀身、内部にはプラズマのようなエネルギーのうねりが見える。刀身から放たれる圧倒的なオーラは近づくものをすべて拒絶するがごとく。


半透明の刀身はすぐに輝きを失い、鈍い光を放つ実体剣となった。表面に刻まれたマジックサーキットは宝物庫に陳列されているどの剣よりも緻密で美しい。


「魔剣というより聖剣のようですね?」


僕はざしきわらしを片手で抱き、剣を眺めならが感想を述べる。


その昔、戦乱のさなかに遺失したとされていた伝説の剣「ザ・シード」(世界樹の種子)が見つかった瞬間であった。


シルフィール姫のご機嫌が悪くなる前にざしきわらしを下におろす。ああ見えてシットぶかいのだ。


双子と見詰め合うこと数秒。こちらは意気投合したようだ。


ざしきわらしは「もえ」と名乗った。

メイドさん達が名乗らないのには理由がありそうです。

そして、もえと名乗る魔剣は敵か味方か。


7/29

誤字修正しましま。

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