表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/59

おっさん、青春 第4章 第8話 ~予定通り~

会議は、

反対意見も何もなかった。

ただ、

「整理された」という感触だけが残った。


すべてを、高木に任せた。

気づけば最後に見ていたのは、

役所が責任を転嫁させていく様子だった。


廊下に出ると、

さっきまでの重さが嘘みたいに、空気が軽い。

雷は鳴ったはずなのに、

何も起きていない顔をしている。


白丸が、床を歩きながら言った。


『人間にとってはな』

『都合よく“終わったこと”にしただけだ』


『不思議だな』

白丸が言う。

『あれだけ“分からない”話をしてたのに』 


『今は、誰も分からないことを気にしてない』


「説明されたからな」


『違う』

『“説明された気になった”だけだ』


実は帰る前に高木は俺と話した。


「吉田さん」

「現場の様子、どうでした?」


一瞬、迷った。


山のこと。

風のこと。

熊のこと。

雷のこと。


どれも、

ここで使う言葉じゃない気がした。


「……正直、よく分からんわ」


高木は、否定しなかった。


「ええ」

「今は、それで構いません」


「判断するには、まだ情報が足りません」


ほんの一瞬、間が空く。


「三日あれば、整理はできます」


整理。


白丸の尻尾が、わずかに揺れた。


高木は続ける。


「三日後に、暫定計画を出します」

「想定外は、想定内に戻して、計画する」

「それが、仕事ですから」


仕事。


俺は、何も言えなかった。


高木は軽く会釈し、

エレベーターに乗った。


背中に、迷いはない。


「……強いな」


俺が言うと、

白丸は、こちらを見て鼻を鳴らした。


『強いんじゃない』

『折れないだけだ』


「同じじゃないか?」


『違う』

『折れないものはな』

『折れる前提で出来た世界に、向いてない』


外に出た。


空は、曇っている。

だが、雷雲じゃない。


静かすぎる。

風が、ない。


「……予定通り、か」


そのとき、


ゴロ……と、

低い音がした。


雷じゃない。

地面の奥が、鳴ったような音。


佐伯のホログラムが、控えめに言う。


「吉田さん」

「予定に、ない反応です」


「どの予定だ?」


「……すべてです」


白丸が、空を見上げた。


『来ないな』


「雷?」


『ああ』

『“説明が終わるまで”は、来ない』


「じゃあ、安心だな」


白丸は、首を振った。


『違う』

『あいつはな』

『“予定を守らない”ために、待つ』


雲が、逆向きに流れた。


ほんの、わずかに。


誰も気づかない程度に。

だが確かに、

空は、予定を外れ始めていた。


俺は、思った。


――三日目は、もう


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ