【第五十六話】沈黙の対話
リクは装置に触れたまま、意識を研ぎ澄ませる。
淡い脈動が手のひらから伝わり、心臓の鼓動と同期するように響いてきた。
「……きみたちは、ここで眠っていたのか?」
小さな声で問いかける。
その言葉に反応するかのように、装置から微細な魔素が広がり、リクの感覚に流れ込む。
そこには音も言葉もない。けれど——
(痛み……それに、恐れ……?)
リクは眉をひそめた。その感覚には、まるで閉じ込められてきた長い長い年月の記憶が混ざっていた。
誰からも理解されることなく、ただ存在し続けるだけの孤独。
ミナが後ろからそっと肩に触れる。
「リク……大丈夫?」
「大丈夫。……ただ、この“存在”が、ただの災厄ではないってことがわかった」
メイがじっとリクを見上げる。
「リク……この子たち、さびしいの……?」
その問いに、リクは頷いた。
「うん。言葉じゃないけど、それに近い感情を感じるよ。きっと……誰かに聞いてほしかったんだ」
それはきっと、この装置を残した者たちが知り得なかった真実だったのかもしれない。
リクは目を閉じ、ゆっくりと魔素を巡らせる。
「僕たちは敵じゃない。そして、きみたちがどんな存在かを知りたい——そのために、僕らはここに来た」
その瞬間、魔素が一度、大きく脈打ち、装置からかすかな光が放たれる。
メイが目を見張る。
「応えてる……!」
「ああ。きっと通じたんだ」
リクは手を離し、一息つくとミナに向き直った。
「この先にまだ何かがあるはず。魔源体が目覚めた理由、封じられた理由……その答えを探す必要があると思う」
ミナは真剣な面持ちで頷き、周囲を見渡す。
「……じゃあ、進もうか。この先にきっと手がかりがある」
リクもまた静かに頷き、メイに手を差し伸べた。
「一緒に行こう、メイ。きみの感覚がきっと道標になるから」
メイは少し迷った後に、その手を取る。
「……うん!」
三人は再び通路へと足を踏み出した。その奥に待つものはまだ見えないが、今は恐れではなく、わずかな希望と共鳴する予感が広がっていた。




