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職業ガチャでSSレアを引いたら死神になりました。  作者: 柚木
五章 支配の魔王
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魔王の反撃

「敵が動き出しました」


 流石に今度は単騎で来るほど馬鹿じゃないよな。


「放て!」


 二回目となる一斉掃射が魔王達に着弾するが、一点集中ではない攻撃は魔王に致命傷は与えられない。


「行くぞ! 人間を全員殺せ!」


 複数で行けばダメージがないことに気がついた魔王達は、数に物を言わせ兵士たちの元に向かい、地面を踏み外す。


「えっ?」


 先陣を切り走る数十の魔王達は、突然消えた大地に困惑する。

 何が起ったのか理解する前に天を覆う赤い液体に呑まれてしまう。


 やっぱり魔王も生物だ。

 いくら皮膚が固く、力が強くても熱には勝てない。

 『庭師』に掘らせた落とし穴に土が溶けるほどの火の魔法、嵌れば魔王にも十分に通じる。


「シス、止まっている今が狙い目だ」


「みんな、狙いは目の前の魔王軍だ、放て!」


 号令と共に『狩人』は魔法の矢を放つ。

 『賢者』の編み込んだ特性の魔法の矢は髪の様に細い。

 編み込まれているのは冷気の魔法。

 泉が一瞬で凍るほどの冷気を込めた矢が魔王の目に突き刺さり、一瞬で魔王を氷漬けにする。


 これも十分に通じる。

 実験は十分だな、後は向こうがいつ強いやつを出すかだ。


 そう思った矢先、足を止めた魔王軍の首が一斉に飛んだ。

 病的なまでに青白い体躯、肉などほとんど残っておらず、骨にそのまま人の皮を被せたような存在が一体だけ先行している。


「素晴らしいと我らが王が皆さんを褒めている。この作戦を考えた人間は誰だ?」


 やっぱりこいつ等にもトップはいるよな。

 そいつを打ち取るのが最終目標か。


「答えるまで一人ずつ殺して行けばいいか。お前達を統率しているのは誰だ?」


「撤退だ! 次の場所であいつを討つ!」


「この遺骸の魔王を倒せるつもりでいるのか? やれるものならやってみろ」


 遺骸を冠する魔王が腕を伸ばすとその腕に死体の骨が張り付く。

 大木ほどの太さに変わった腕を振り下ろしただけで、ハイネス軍の前衛が肉塊に変わる。


「さあ、これでも我を倒せるか? 人間共」


 ハイネス軍にさっきまでの余裕は消えていた。

 勝てる戦いだと思っていた自信は、遺骸の魔王の一撃で砕け散った。

 撤退を指示されているのに、恐怖で兵達の足がすくむ。


「逃げて我を倒すのだろう? いいのか、そのままだとお前達を骨まで全てすりつぶすぞ? ん?」


 魔王が振り上げた腕に魔法の矢が刺さる。


「臆するな! 私達は一人で戦っているわけではない! 人間は魔王に負けはしない!」


「見つけたぞ。お前が司令官だな?」


 不気味に笑う魔王は凍った骨を捨て去り、リグレスに狙いを定める。


「第一部隊以外は全力でこの場から離脱!」


 その号令に全員が従う。

 第一部隊と呼ばれた三十人を残し、他の兵士は一斉に魔王に背を向け走り出す。


「この人数で止めるつもりなのか?」


「止めるつもりがないならここにはいないぞ」


「魔王も甘く見られたものだ」


 遺骸の魔王はその手を地面にたたきつける。


 私は今何人に死ねと命じた?

 いや、過去を考えるな今を考えろ。

 最善じゃなくていい最良を考えてウォル達が到着するまでの時間を稼げ。


 リグレスは悔やむ間もなく走る。

 後ろも振り返らずにただただ次の場所へ向かう。


「急げ! 動けない者に手を貸す時間はない! 家族や友人でもその場に置いていけ!」


 非道ともいえる号令に誰も非難を浴びせる者はいない。

 本当はそう号令を出す彼女こそが、一番に手差し伸べたいと思っているのを知っている。

 だからこそ捨てられた兵士は剣を持つ。


 一時間ほど全力で走り、リグレス達は次のポイントにたどり着く。

 そこに在るのは三基のバリスタ。


「準備を整えろ、すぐに奴らは来るぞ!」


 呼吸を整える暇さえなく、準備を終えると地鳴りと共に魔王軍が近づいてくる。

 雄たけびと共に聞こえるのは悲痛の叫び。

 魔王達は襲ってくる兵士達を盾に使い、こちらに全力で向かってくる。


「っ! 構うな三基同時に流星弓を放て!」


 バリスタから放たれるのは、先ほど使った魔法の矢をまとめ巨大化させたもの。

 放たれた矢は流星の様に輝き、一直線に放たれる。

 流星弓は先頭にいた遺骸の魔王を含む多数の魔王を地に返した。


「安心している場合じゃない、急いで次の場所に向かう」


 同じことを幾度か繰り返しながらリグレス達は後退していく。

 各ポイントで兵を補充しながら兵を交代し休まる。

 そこまで全力だったが、一日持たせるのが精一杯だった。

 もうすでに城が見える位置にまで後退させられていた。


「現状報告」


「死者六百二十九人、流星弓は城にあるのを除けば残りはここの三基だけですが、みな疲弊していて最初程の威力は期待できません」


 ここまでか? たった一日の時間稼ぎが人間には限界なのか?

 そんなわけない! 考えるのを止めるな!

 ウォルだって人間なんだ、シャルだって人間だ。

 同じ人間のあいつらに倒せるのに私に倒せないはずはない。


「流星弓の準備をしろ、動けるものは城に走り増援と流星弓を撃つ準備をさせろ!」


「班長、平気?」


「当然だ。こんなところで折れたらあいつらに笑われる。どんな手を使ってでもあの魔王共の足を止めてやる!」


「流星弓の準備を手伝ってくる」


「参謀殿、僕も戦場に行ったほうがいいのでしょうか?」


「『戦士』の系統が出るのはまだ早い。お前達は後で攻撃に回ってもらわないといけないからな。だからお前は後衛で準備を手伝え」


「……わかりました」


「ココナ、死ぬのは兵士の誇りじゃない。生き抜くことが誇りだ。そこを間違えるな」


 返事をしないままココナは後衛と下がって行った。


「城まで最後の防衛線だ、守り切るぞ!」


 覇気の無い雄たけびに、リグレスはもう長く持たないことを悟る。

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