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52話

 リリスが言葉を発し、千尋さんが構えようとした時……

 既にリリスは千尋さんの目の前まで来ているではないか。


「遅いわ」


 リリスは千尋さんの腹部に手を当てると、バチバチと音を立てた漆黒の球体が千尋さんの腹部を貫く。


「……ッ!!」


「千尋さん!!」


 千尋さんは声も出せず、その場にうずくまってしまった。

 魂の姿の俺達は外傷を負うことはない。

 だが深傷を負えば負うほど、体力の消費も激しい。


 俺は千尋さんに駆け寄り、身体を支えた。


「大丈夫か!?」


「ゲホッゲホッ……!」


 あまりの激痛に咽返ってしまっている。


 俺はリリスの方を向き、怒りを露にした。


「ふふ……人間は脆いモノだな。この程度で動けなくなってしまうなんて」


 ほくそ笑むリリスに、俺は飛び掛かった。


「てめぇぇ!!」


「おっと。随分と威勢がいいな」


 リリスは俺の攻撃を意図も簡単に躱してしまう。

 まるで子供を相手にしているかのように余裕の面持ちで、笑みさえ浮かべている。


 何度斬りつけても、一向に当たらない。

 最早次元が違うと言うべきか。


「そろそろ飽きてきたな」


 リリスはそう言うと、手の平を俺に向けて何やら呪文のようなモノを唱えている。

 人間が聞き取れる用語ではない。

 文字にすれば、ほんの十数文字程度だろうか……。


「ハァッ!!」


 リリスが魔法を解き放つと、闇の霧と共に突風が押し寄せる。


「グッ……!!」


 凄まじい強風……

 目は細め、前乗りめりになり耐え凌ぐ。

 リリスとの距離は開くものの、吹き飛ばされない様にするのがやっとだ。

 ジリジリとエネルギーが吸いとられていく感覚がある。


「なかなかしぶとい奴よ……」


 リリスは鬱陶しそうに言うと、更に魔力を込める為に両手を俺に向けた。


 どうすべきか頭を巡らせていた、その時……!


 突然、熱風と共に凄まじい音が聞こえる。

 すると、リリスの攻撃は止んだではないか。



 ――何が起こったんだ!?


 最早開くことすら出来なくなった目を、恐る恐る開いてみる。


 ゴォォォォッ!! と凄まじい音と共に、リリスのいた場所に火柱が立ち上っている。



「ッ!? 千尋さん!?」


 千尋さんの攻撃によるものだと理解し、慌てて千尋さんの方へと目をやった。


 痛みと莫大なエネルギーの消費により顔を歪め、少しでも長く……少しでも強力な魔法をリリスへと撃ち込んでいたのだ。



 火柱の燃え盛る音が大きすぎて、リリスの悲鳴も聞こえやしない。

 だが、まるで骨まで焼き付くしてしまいそうだ。

 これで生きている訳がない。


「千尋さん……!! もうそれ以上はダメだ!!」


 とっくに限界を迎えているハズなのに、まだ魔法を使い続けている。

 このままではエネルギーが枯渇してしまう。


 俺は千尋さんに駆け寄り、腕を掴んだ。

 すると、千尋さんはそのまま意識を失い、倒れ込んでしまった。


「千尋さん!!」


 俺は千尋さんを支え、火柱の上がっていた方へと目をやった。


 ……火柱は消え去り、中央には黒焦げになった人型がポツンと佇んでいる。


 やった……リリスを倒せたんだ……。


 千尋さんの手を握り、意識のない千尋さんに激励の言葉をかける。


「千尋さん、やったよ。倒したんだ……。さぁ、車に戻ろう」


 千尋さんを抱き抱え、俺はその場を後にしようと立ち上がった。



「……待て。我にこの様な仕打ちをしておいて帰れるとでも思うたか、人間め」


 ――なにッ!?


 リリスの声が聞こえ、俺は思わずリリスの方を見た。


 すると、焼け焦げた部分がボロボロと剥がれていってるではないか。

 一歩一歩進む毎に、剥がれ……綺麗な肌が露見する。


 悪魔って不死身かよ……。


 リリスはまるで魔法を練り、そこに生み出すかのように、手首をゆっくりと回している。

 リリスの手に闇の霧が纏わりつき、どんどん増幅していくのが分かる。


 リリスの速さは知っている……。

 いくら全速力で逃げたとしても、千尋さんを抱えてリリスから逃げる事は不可能だ。

 いや……そもそも素早さは俺よりも千尋さんの方が高い。

 その千尋さんがリリスの動きに対応出来なかったのに、俺が例え1人だとしても逃げられる訳がない。



 リリスの魔法は、増幅を続けた。

 そしてそれが一気に小さな球体になってしまったのだ。

 大きさは野球ボール程だが、凝縮されはそれは威力も強いことを容易に想像させる。



「消し飛べ、虫ケラめ」


 リリスはそう言い放つと、闇の球体を撃ち放った。


 ――ッ!! 早い!!


 俺は咄嗟に千尋さんを庇うようにキツく抱き締めた。

 身体中に激痛が走り、無意識に悲痛の叫びをあげる。



「グッ……うわぁぁぁッ!!」


 球体は俺の身体を貫き、更には庇っていた千尋さんの身体まで貫いてしまった。

 まるで何かに操られているかのように、何度も何度も俺達の身体を貫く。


「ほう、これでも死なぬのか」


 球体はリリスの元に戻ると、跡形もなく消えてしまった。

 先程まで不機嫌だったリリスは、打って変わって上機嫌になっている。


「興味が湧いた。我と共に来るがいい」


「ハァ……ハァ……だ……れが……行くかよ……」


 俺は肩で息をし、リリスを睨み付けた。

 千尋さんを早く肉体に連れ戻したかった俺は、やっとの思いで立ち上がる。



「……んっ?」


 抱き上げた感覚があまりにも軽くて、思わず千尋さんの方へと視線を落とす。


「そッ……そんなッ……!! 何が起こってるんだよ!?」


 千尋さんの姿がボンヤリと透けているではないか。


「おヌシ……まさか、その娘が死んだ事に気付いていないのか……? フハハハッ!! これは滑稽だ! まさか死んでいるとも気付かずに大事そうに抱きしめていたとでも言うのか」


 リリスの笑い声など既に耳に入っておらず、俺は千尋さんの名前を呼び続けた。


「千尋さん……千尋さん!! あぁ、そんなっ……!! ダメだ! 消えるな……!! 消えるなよ!!」



 俺の叫びなど虚しく、千尋さんは俺の腕から完全に消えてしまった。


「そんな……なんで……くそッ!! くそッ!! くそッ!! くそーーッ!!」


「諦めろ、人間など脆いものだ。おヌシが我と共に来れば悪魔にしてやらんこともないぞ」


 リリスの手が俺の肩に触れた瞬間、何かが弾けた。


「なっ!! これは光魔法!?」


 俺の体から湯気の様に魔法エネルギーが放出する。


「まさかおヌシが……!! ルシファー様に報告せねば……!!」


 リリスはそう言うと、その場を立ち去ろうと翼を広げる。

 俺は感情のコントロールが完全に出来なくなっていた。


「うわぁぁぁぁ!!」


 俺の雄叫びと共に、身体中から一気に魔力が放出される。


 ゴォォォッ!! と……まるで滝のような音と共に放出された魔力は、辺り一体を飲み込んだ。


「なっ……!? そ、んなッ!! ギャァァァ!!」


 その場を去ろうとしていたリリスさえも飲み込み、跡形もなく消滅してしまったのだ。


「ミカ……。そうだ……ミカ!! ミカー!!」


 止まることなく放出し続ける魔力など気にも止めず、俺はミカの名前を叫んだ……。


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