43話
その後も魂喰らいを狩り続け、数週間が経っていた。
それなりに魂喰らいを倒したと思うが、俺も千尋さんもベヒーモスの結晶効果と同等……若しくはそれ以上の結晶効果を持つ魂喰らいには出会えていなかった。
これまでに倒した魂喰らいの結晶効果をざっと見直してみる。
“攻撃力 特大 プラス値50” ……小×50と同等
“痛み耐性 特大 プラス値30” ……小×60と同等
“防御力 大 プラス値25” ……小×25と同等
“火魔法軽減 20%軽減”
“雷魔法軽減 10%軽減”
“隠密 中” ……敵に気付かれにくくなる
“斬撃軌道修正 大” ……斬撃での攻撃が当たりやすくなる
“魔法エネルギー消費軽減 中 15%消費軽減” ……小×30と同等
“猛毒・麻痺 半減” ……2分の1で無効化
“不屈の精神” ……精神妨害、操り無効
“悪魔の加護” ……闇属性10%軽減及び5%を防御力に変換 上限10%
“体力・精神力 倍加”
……こんなもんか。
隠密、不屈の精神、悪魔加護、倍加は魂喰らいでしかドロップしないらしい。
他のものは効果が極小~中で出たりもするが。
ミカから貰った液体のおかげで、過去に手に入れた効果も見直しやすくなった。
まだまだ気持ち悪くなるので、徐々に……ではあるが。
さて、今回見直した理由は……
“魂喰らい狩り☆目指せラブラブ旅行”
を計画しているからだ。
ふざけてる?
いやっ!!!!
大真面目もいいとこだ。
千尋さんと付き合って早1ヶ月以上経つが……
千尋さんが仕事を辞めた後も、邪心狩りばかりでデートらしいデートもろくにしておらず、戦友に近い俺らは恋人らしい事は一切してない。
一切!!
いかんせん誰かと付き合うのが初めてであり、どのタイミングでキスをしたりしていいのか全く分からん。
このままでは「友達にしか思えない……」なんて言われて振られてしまうのでは!? とヒヤヒヤしている。
一緒にいる時間が増えた事によって、尚更不安が増したのだ。
一緒に居れば居るほど、恋人らしい雰囲気を作るのが難しくなる。
まぁそもそも俺にそんなテクニックは無いけどな……。
旅行ついでに邪心狩りをしよう、と以前から話していたので、お泊まりと言うスペシャルイベントでどうにかなっちゃおうぜッ! と計画していのだ。
俺はこのチャンスを逃さない!!
「ねぇ、珪太。聞いてる?」
「え? あ、聞いてるよ」
千尋さんの呼び掛けにより、俺の心の叫びは一時中断された。
「で、どっから回るの?」
旅行のパンフレットをテーブルに並べ、どのコースで行くか決めかねている。
「そうだなぁ…… 上から順に行くか?」
流石にずっと旅行しているのではなく、北海道は北海道、東北は東北……といったようにいくつかに分けて、その度に一度帰宅する予定だ。
上から行けば、夏には沖縄にも行けるだろう。
「そうね! そうしようか! もう予約しちゃっていいー?」
「俺はいつでも行けるよ」
無事に免許も取れたし、邪心狩り以外にやることもないからな。
千尋さんはスマホで旅行サイトを見ている。
幸いミカのおかげで金はあるので、グレードの高いホテルを取れる訳だ。
「あ、このホテルどう?」
「どれどれ? おっ、良いじゃん!」
「どうせならスイートホームにしちゃおうよ」
「あぁ、任せるよ!」
このまま一気きにスッ飛ばして2人の仲が進展したらどうしようか……なんてムフフな事を考えてしまう俺は、健全な男子である。
「そう言えば……俺は全国どこでも自由に邪心狩り出来るけど、千尋さんの場合はどうなんだ?」
「あ、確かに。ミカたんに聞いてみようか」
俺達はミカを呼び出した。
弱い風と共に、ミカが現れる。
「は~い、どうしたの?」
不思議な液体とニャーちゃんのおかげで、ミカは呼び掛けに対し随分と早く現れてくれるようになった。
「ミカたん、私達邪心狩りついでに旅行行きたいんだけど……珪太は良しとして、私はどうなるの?」
「どこに行くんだい?」
「一応……全国かな?」
「それはまた凄いね! 分かったよ、ボクから他の地域を担当する天使達に伝えておくから、心置きなく行ってくるといいよ! まずは何処に行く予定?」
「北海道!」
「北海道か~。美味しいスイーツが沢山あるよね~」
チラッと何かを訴える様に俺と千尋さんを見ている。
「勿論お土産は買ってくるよ」
千尋さんは苦笑いし、ミカの頭を撫でる。
「やった~!! 北海道楽しんできてね!!」
「ところで、向こうに強い魂喰らいはいるかな?」
「……どうかなぁ~? 随分前にボクがキミ達に救援要請したでしょ? あんな感じで同じ管轄でなんとかなる事が多いんだよね。それでもどうにもならないときは近くの管轄にお呼びがかかるみたいだけど……」
「そうか……。そんな都合良くはいかないよな」
「魂喰らいを倒すのは構わないけど、他の管轄の人たちと揉めるのだけは避けてね。キミ達に限って無いとは思うけど、他の管轄から来て横取りするような真似をすれば何かと面倒な事になるからね……」
「でもさぁ、もしも私達が倒したヤツの結晶を横取りされたらどうするの? 前に私と珪太が譲り合いしてたら珍しいって言ってなかった?」
確かに。
相手が穏便じゃなければ、あり得る話だ。
「う~ん、共戦すれば有り得るかもしれないね。だから戦う前に共戦しても平気か見極めたらいんじゃないかな?」
「相手が勝手にしゃしゃり出て来たら?」
「わ、分からないよ~。あくまでも相手の管轄であることを尊重してもらえれば、揉めずに済むと思うよ……」
まぁミカの言い分も分かる。
他の管轄から来て、デカイ顔されたら面白くないだろう。
その辺はお互い様と言ったところだ。
「と、とにかく!! 揉め事は起こさないでね!」
ミカはそう言うと、そそくさと行ってしまった。
これ以上千尋さんに突き詰められるのは嫌だったのだろう。
俺達は早速旅行サイトで予約し、3日後……北海道へと旅立つ事になった。




