39話
今日は千尋さんもお休みということでウチに来てもらい、昼間からミカを呼び出した。
「魔法のバリエーションが欲しいって?」
俺達は少しでもヒントを得ようと、早速ミカに尋ねた。
「あぁ、夢で見たんだ。何度も異世界の夢を見て、俺の視点はどうやら同一人物の視点みたいでさ。多分もう1人の光魔法を使う人だと思うんだが、凄い魔法を使っててさ!」
「それでキミ達も使いたいってこと?」
「そうそう!!」
まだ興奮冷め止まぬ俺は、食い付き気味にミカに話す。
「う~ん、ボクは異世界を実際見てきた訳じゃないから、異世界の魔法システムをよく知らないけど……。多分出来るんじゃないかなぁ~?」
「本当か!?」
「本当ですか!?」
俺とコウが同時に反応する。
「キミ達の魔法は、魂のエネルギーを具現化して放つようなものなんだ。だから基本は1人1つの属性、又は2つの属性しか扱え無いんだけど~。具現化するイメージを明確に出来れば、思った様に魔法を扱えると思う。多分……」
「多分?」
「ボクは人間じゃないから、人間のことは分からないよ~」
少し困った顔をするミカ。
だが、思ったよりも期待は出来そうだ。
「まぁ、どんな魔法にしたいかイメージを明確にするだけなら簡単そうだ。威力の調節は既に出来る訳だし」
「確かに! 早速練習する?」
千尋さんも結構ノリノリだ。
「じゃぁボクは帰るけど、みんな頑張ってね~」
ヒラヒラと手を振り、ミカは帰っていった。
俺達も早速、魂の姿になる。
「一応外でやろうか」
「そうね」
魔法も人や物には干渉しないが、自分の家で魔法を使うのは流石に気が引ける。
――少し開けた場所に行くと、俺達はそれぞれ少し距離を置く。
集中する為もあるが、前日の暴発事件があったので、自分達の魔法が他の人に影響するのを避ける為だ。
俺は夢で見た魔法を試して見たかった。
イメージもしやすいし、何よりカッコ良かったからだ。
とはいえかなりエネルギーを消費しそうなので、槍の様なものよりも更に小さくしないとな。
弓矢よりも更に一回り小さいのをイメージする。
手の平に意識を集中させ、手を掲げると光の玉を細かく分散させるイメージをする……。
イメージ出来たら、手を振り下ろした。
……が、まず1つ目の問題は、光の玉を分散させるのに結構時間が掛かってしまった。
こんな事をやっていたら、間違いなくモンスターに攻撃されてしまうだろう。
そして2つ目の問題は、振り下ろした時に狙った場所に魔法を撃ち込むのがなかなか難しい。
と言うか全く狙い通りにいかない。
上空で分散した物がそのまま真下に落ちるだけ、と言った感じだ。
夢で見たドラゴンはそれなりに大きいとはいえ、全てがドラゴン目掛け降り注ぐ感じだった。
そして3つ目の問題……
大きさも小さくし、数も少なめにしたのにエネルギーの消耗がめちゃくちゃ凄い。
正直3発も撃てばダウンしてしまうだろう。
チラッと横目でコウや千尋さんを見てみる。
各々苦戦しているようにも見えるが……。
様子を見ながら途中経過を聞いてみるか。
俺はもう一度手の平に意識を集中する。
先程よりも少ないエネルギーに調節し、手を掲げる。
分散させるのも針程の大きさにし、塀の一ヶ所を目掛けて振り下ろした。
……やっぱり全然ダメだ。
気付いた事は、大きい程調節しやすいこと。
小さければ小さい程、大きさがバラバラになってしまう。
最大の難点は的に当てる事だ。
的を絞ると、その分意識を集中させないとならない為、更に時間が掛かる。
分散させるのも、的に当てるのも時間が掛かるようでは使い物にならない。
ただ2回目はエネルギーを少なくしたので、これなら練習にはもってこいだ。
……それから俺達は二時間程、各自で練習し続けた。
「珪太……ごめん……。私もう限界……」
まず先に千尋さんがエネルギー切れになってしまった。
その後、コウもダウンしてしまった。
俺はあと数回出来そうだったが、一旦肉体に戻り休憩を録ることにした。
家に帰り肉体に戻ると、千尋さんとコウはぐったりとしていた。
動ける俺が2人にコーヒーを淹れ、練習の成果はどうだったのか聞くことにした。
「それで、2人はどうだったんだ?」
「私は全然ダメ……。火ってさぁ……そもそもイメージ出来るものが少ないよねぇ。私の頭が固いのかなぁ」
「俺は……ボチボチかな」
コウほ順調なようだが、千尋さんは少々悪戦苦闘していたようだ。
「珪太はどうなのよ」
「俺も微妙かな。なかなか思ったようにはいかないよなぁ」
想像よりも難しく、出鼻を挫かれてしまった。
「ねぇ、火の魔法ってなに? 私ゲームとか漫画とか全然触れてこなかったから、そもそもイメージが出来ないのよ」
「逆に俺らみたいに固定観念がない方がイメージ出来そうなもんだけどな。コウ、良いのあるか?」
「……なんで俺?」
「この中で一番若いから柔軟だろ? それにお前はセンスもある」
俺の言葉に、コウは満更でもない感じで話し始めた。
「火なら、玉だけじゃなく火柱とか……。千尋さん、爆発ってさせられるの? それが出来れば幅はグッと広がると思うけど」
「爆発かぁ……。やってみないと分からないなぁ」
「もし出来るなら、エネルギー次第で単体や部分的な小さいのから広範囲の大爆発まで調節出来るようになったら尚更良いよね」
「おぉー! 確かにぃ!!」
千尋さんのテンションが上がってくる。
流石コウだ。
俺はどうしても某有名RPGの技しか出てこない。
「あとは、やり方によっては炎の壁を作って邪心の動きを制限したりも良いんじゃない? 火炎放射みたいなのもあるし、高温にするだけでもダメージ大きいんじゃない? 基本的に火は種類も豊富だと思うよ」
「ちょっと待って、メモる!」
千尋さんはスマホを開き、コウの言ったものをメモしている。
ついでに俺も聞いてみるかな……。
「なぁ、コウ君よ。俺の光魔法はどうだ?」
「……ごめん、光はよく分からない」
「えーー!? も、もう少し考えてくれよ!!」
俺の無茶振りに、暫くコウは頭を抱えていた。
確かに光ってイメージしにくいんだよなぁ……。
俺も夢で見なけりゃ全く分からなかった。
「……可能か分からないけど」
考え込んでいたコウがやっと口を開いた。
「なんだ!?」
「邪心が闇で、光が弱点なら……邪心の攻撃を無効化出来ないかな」
「……と言うと!?」
「要はバリアみたいなモノを張るんだよ。ヤバそうな攻撃を防げるのはかなり大きいよね」
確かに!
それなら自分だけじゃなく、仲間も守れるじゃないか!
「ただずっと張る訳にも、エネルギーの消耗問題があるから……自分で即座に出せるようにしないと」
「おぉー! 流石コウ!」
コウは少し照れくさそうに目を伏せた。
「あとは……これはどの属性でも言えることだけど、自分の武器に属性を付与出来たら良いと思う。特に珪太さんは光だし、敵へのダメージは大きいんじゃない」
「「なるほど!!」」
俺と千尋さんは思わずハモってしまった。
「ところでコウはどんな魔法を練習してたんだ?」
「俺はさっき言った武器に付与するのと、今までは広範囲に撃つ代わりに威力が弱かったから、範囲を狭めて威力を上げる練習してた」
「2つ!? てことはどっちかを扱えるようになったってことか!?」
「うん。まだまだ調節も練習も必要だけど、両方とも」
「両方!?」
「うん」
やっぱり若さなのだろうか……。
十代の飲み込みの早さに驚かされるばっかりだ。
その後……
俺達は昼寝をし、体力を回復させてから再び練習へと出た。




