後方勤務①
愉快な国歌と共に朝を迎える。
窓の外から、国を称える歌声が聞こえる。
気分は最悪だ。
2段ベッドから降り、下で寝ているエイを叩き起こす。
...魚介類のような名前だが、神話に出てくる人物から取った名前だそうだ。
その甲斐あってか、本人は信仰心がとても強い人物になっている。
本人曰く、『この戦争もきっと、神からの試練なのだ。』だそうだ。
阿呆臭い事この上ないが、他人の信仰心を貶すほど俺も暇じゃない。適当に聞き流し、口にガムを放り込んだのを覚えている。
「オイ、後15分で点呼だぞ。」
「ああ、朝の祈祷が終わったら行くよ。」
「....何分くらいかかる,」
「10分くらいだな。」
どうやらこいつは、遅刻するつもりらしい。
「点呼終わってからにしろッ!」
「嫌だ。ルーティンを崩すことこそが、最も由々しき事態だ。」
「遅れて上官にシメられることこそが最も恐れるべきことだ。」
「断るッ!!」
「そんなに祈りたいなら、早起きをすればよかろう!!」
「うぐッ!」
こいつは正論に弱いらしい。
グリフォ部隊に任務を引き継いだ後、俺たちは祖国へ戻っていた。
帰還した後は早かった。上官へ報告し、次の仕事についての説明を受け、兵舎に帰り、寝た。
で、今起きたという訳だ。
後方で勤務。なんて甘美な響きだろう。
命の危険はない。滅多なことがない限りは死なない。最高だ。
心のオアシス、エデンである。
「これより朝点呼を開始する。」
上官が宣言すると、一人ひとりの名前が呼び始められた。
名前を呼ばれた兵士は返事をする。返事をした人は前へ出て、自分の身だしなみに異常がないことを見せ、列に戻る。
......転んだら町内を倒れるまで走らされる。半死半生になるまで走らされる。
12人目がそうだった。
この作業の繰り返しだ。
「ウィラス上等兵!」
呼ばれた。
「ハッ!」
列から出て、上官の前へと歩く。
足裏が地面をたたき、ザッザッと乾いた音が鳴る。
上官に体を見せる。もちろん服装に不備はない。
「以上なしッ!」
「ご確認ありがとうございますッ!!」
「以上ッ!!これで朝点呼を終了する!朝食をとった後、それぞれの個別の部屋に指示を書いた用紙を配布する!」
この、安全とも、楽園とも思えたこの任務で、あんな量の人が死ぬとは思っていなかった。




